歯の根っこの治療をしたら、治療前より歯が痛くなった……!
根管治療後もズキズキと痛くて寝れない……いつまで続くのだろうか?
今まで何も症状がなかったのに、治療をしてから痛みがでると不安になりますよね。治療に失敗したのではないかと疑心暗鬼になるかもしれません。
歯の根っこの中にある、神経の治療を根管治療と呼びます。実は、この根管治療後に痛みがでることは、珍しいことではなく、実に根管治療を受けた65%の患者に何らかの痛みや不快症状がみられると報告されています。1根管治療のさまざまな刺激によって、炎症が誘発され、痛みを引き起こすことがあるからです。
中には10人に1人の確率で、痛み止めが効かないくらい激しい痛みを引き起こすフレアアップと呼ばれる状態になることがあります。
しかし、ほとんどの場合が一過性の痛みであり、数日で痛みは弱まっていき、1週間以内で収まることが多いです。また、治療後に痛いと感じるからと言って、必ずしも治療に失敗しているというわけではありませんのでご安心ください。
この記事では、根管治療後に起こる痛みの原因や、痛みの経過、痛い時の対処法にできることについて詳しく解説していきます。根管治療期間中を少しでも快適に過ごすために、ぜひとも参考にしてください。
根管治療後に痛いと感じる原因9つ
根管治療は、治療後数時間から数日間にかけて、大なり小なり痛みや違和感が出る可能性が高いです。その発症率は研究によって幅があるものの、根管治療を受けた65%の患者に何らかの痛みや不快症状がみられると報告されています。1
ここで、根管治療後の痛みや違和感を引き起こすと考えられる原因は9つ挙げられます。
- 治療で使われる器具や洗浄針の物理的刺激による炎症
- 根管治療で使用する薬剤の化学的刺激による炎症
- 細菌や細菌の副産物が根っこの外に押し出される
- 根管治療中に再感染している
- 根管内に神経の取り残しがある
- かみ合わせが高い
- 根っこの中に穴が空いた(穿孔)
- 器具が根っこの中に残っている
- 根っこの亀裂や破折が起きている
順番にみていきましょう。
治療で使われる器具や洗浄針の物理的刺激による炎症
根管治療では、ファイルと呼ばれる器具や、強力な消毒液を使って、細菌感染した根っこの中をきれいにします。その時に、器具を奥まで入れすぎてしまうと、器具や洗浄針が根っこの先から外の部分に出てしまうことがあります。
このような物理的刺激が根っこの周りの組織に影響を及ぼすことがあり、治療後に痛いと感じることがあります。
根管治療で使用する薬剤の化学的刺激による炎症
根管治療で用いられるさまざまな薬剤が根っこの先から外に到達すると、根っこの周りの組織に刺激を与え、痛みを引き起こすことがあります。
根管治療では、治療の段階に応じて、以下のような薬剤を使います。
根管洗浄剤(こんかんせんじょうざい) | 強力な殺菌作用を持ち、細菌感染した根っこの中を洗浄するために使われます。根管洗浄剤は主に次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)が使われます。 |
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根管貼薬剤(こんかんちょうやくざい) | 根管治療の途中で中断する際、次回の治療までには時間があるため、根管内を殺菌消毒するために薬剤を入れます。このように、根っこの中に消毒薬剤を置くことを根管貼薬と呼びます。根管貼薬剤は一般的に水酸化カルシウム(Ca(OH)2)が使用されます。 |
根管充填材(こんかんじゅうてんざい) | 根っこの中の洗浄、消毒が終わった後に行われる、根管内に専用の材料を詰める根管治療の最終段階の処置を根管充填と呼びます。この操作では、ガッタパーチャーと呼ばれるゴムのような素材と、シーラーと呼ばれるガッタパーチャの隙間を封鎖するための材料を使用します。 |
これらの根管治療に使用される洗浄液、根管貼薬剤、根管充填剤が根っこの先から出てしまうと、根っこの周りの組織を刺激して炎症を引き起こすため、治療後の痛みを引き起こすことがあります。
細菌や細菌の副産物が根っこの外に押し出される
根管治療中に、根管内の細菌や、感染した歯の削りカスなどが根っこの先端から根っこの外に出ることで痛みが起こることがあります。根管治療では、細菌感染している部分を取り除くためにさまざまな器具を入れますが、これによって根管の先の根尖孔から細菌や感染した歯の破片の押し出しが起こります。
この刺激によって、細菌と身体の免疫バランスが崩れて炎症が起こり、治療後に痛みを引き起こすことがあります。2
治療中に再感染している
治療中の感染対策が不十分だと、根管治療をしている最中に根っこの中が細菌感染することがあります。
再感染を引き起こす要因には、以下のようなものが挙げられます。
- 根管治療が無菌的に行われなかった
- 患者の口腔衛生が不十分である
- 虫歯が取り切れておらず残っている
- ラバーダムを使用しないで根管治療を行う
- 仮蓋が取れかかっている、又は取れてしまった
このような原因によっておこる細菌の二次感染は、治療後の痛みや炎症を引き起こすことがあります。
根管治療中の細菌感染を防ぐためには、ラバーダムの使用が効果的です。
補足:ラバーダムとは?
ラバーダムとは、治療中する歯だけを露出するために、歯に金具を設置し薄いゴムのシートを貼る処置のことです。根管治療や虫歯の詰め物の治療でしばしば用いられます。
ラバーダムをするメリットは、以下の通りです。
- 治療している部分に唾液や細菌が入るのを防ぐことができ、二次感染の予防になる
- 治療中の薬剤の漏れを防止する
- 器具を間違って飲み込むことを防ぐことができる
利点がたくさんあるラバーダムですが、以下のような人は注意が必要です。
- 口呼吸の人:鼻呼吸ができず口呼吸がメインの人は、ゴムで口を覆うため息苦しくなる可能性がある
- ラテックスアレルギーの人:治療前に伝えておくことが大切。ラテックスフリーのラバーダムシートもある
- 残っている歯がほとんどない人:失われた部分が大きい場合は金具をかけるのが困難であり、ラバーダムができないことがある
ラバーダムは非常に効果のある処置であり、海外の先進国では当たり前のように使われておりますが、日本の歯科医院ではあまり普及しておりません。
理由として、以下のような事情があります。
- ラバーダムは手間とコストがかかる
- ラバーダムの保険診療点数が0点のため歯科医院側の利益が出ない
このような理由によって、日本の歯科医院でのラバーダム使用率は低くなっています。
根管内に神経の取り残しがある
根管治療では、細菌に感染した神経を取り除いていきます。ただし、根管の中は複雑な形をしていることが多く、1回の治療で神経を取り切れないことがあります。
この場合、残存した神経によって痛みを引き起こすことがあります。
かみ合わせが高い
根管治療中は歯の高さを落とし、噛む時に過剰な負荷がかかりすぎないようにします。
仮蓋を詰めすぎたり、歯を削る量が不十分だとかみ合わせが高くなってしまい、治療中の歯に負担がかかってしまいます。これによって、歯が痛くなる原因になります。
根っこの中に穴が空いた(穿孔)
根管治療中に、根管ではない部分に穴を開けてしまうことがあります。個人差がありますが、根っこの中は必ずしもまっすぐではなく、さまざまな方向に曲がっていることがあります。根管内の形を見誤り、器具を不適切な方向に進めてしまうと、根っこの中に穴が空いてしまうことがあります。
これをパーフォレーション(穿孔)と呼び、痛みの原因となることがあります。穿孔が起きた場合は、穴を修復する処置を行います。
器具が根っこの中に残っている
まれではありますが、根管治療の際に、器具が根っこの中に残ってしまうことがあります。根管治療はファイルといった針のような器具をはじめ、さまざまな専用機器を用いて中を掘り進めていきますが、細い根管内でこれらの器具が折れてしまうことがあります。
折れこんだファイルを取り除くのは困難なケースが多いです。痛みなどの症状がなく、感染もみられない場合はそのまま治療を進めていき、経過を診ていくこともあります。
中には、この器具の折れこみによって感染や炎症を引き起こし、痛みの原因となることがあります。
根っこの亀裂や破折が起きている
歯の神経の治療をすると、歯がもろくなります。これは虫歯や神経を取り除くために歯の内部を削るため、どうしても歯が薄くなってしまうからです。
また、神経を取り除いてしまうため、噛んでいる力を感じづらくなり、強い力で噛みやすくなってしまいます。このように、根管治療を行っている歯は亀裂や破折が起こりやすく、その症状として痛みが出ることがあります。
亀裂や破折の治療法は確立しておらず、状態によっては、歯を残せることもありますが、抜歯になるケースが多いです。
根管治療後の激しい痛み(フレアアップ)について
フレアアップとは
フレアアップとは、根管治療後数時間から数日間の間に強い痛みを引き起こす現象のことです。フレアアップになると、噛んだ時や何もしていないときに、激しい痛みが生じます。痛み止めがほとんど効かず、歯の周りに腫れを伴うこともあります。3
フレアアップの原因
根管治療後に痛いと感じる原因9つでも述べたように、根管治療後の痛みの原因はさまざまですが、フレアアップの主な原因は以下の3つです。
- 機械的要因:治療器具や洗浄用シリンジの針が根っこの先から外に出てしまうことによる刺激
- 細菌学的要因:根管内の細菌および細菌の副産物が根尖孔外に出た場合
- 化学的要因:洗浄剤、貼薬剤、シーラー等が根尖孔外に出た場合
特に細菌学的要因の細菌による刺激が痛みの原因の多くを占めていると考えられています。
フレアアップの起こりやすさ
フレアアップが起こる確率は、研究によってばらつきがありますが、1.5%〜20%の頻度で起こるとされています。
また、治療前にすでに痛みがある歯や、根っこの先に膿がたまっている歯、根っこの治療を繰り返している歯ではフレアアップになる可能性が高まることがさまざまな研究で報告されています。3,4
フレアアップの治療法
フレアアップになってしまった場合は、歯科医院を受診し、応急処置を受けましょう。
具体的には以下のような処置を行います。
- 根っこの奥で膿がたまり、内圧が高まっている場合は排膿させます
- 根管内を清掃・洗浄し、消毒をした後に仮の蓋で封鎖します
- 抗菌薬および鎮痛薬の投与を行うことが多いです
激しい痛みを引き起こすフレアアップになると不安になるかもしれませんが、適切な処置を行い、根管治療を続けることで問題なく治っていきます。
根管治療後の痛みに対する対処法
根管治療後に痛いと感じる場合、適切な対処法で緩和させられます。痛みがいつまで続くのかも含めて詳しく解説します。
治療後1〜2日以内に痛みは減少し、1週間以内で収まることが多い
根管治療後数日間は痛みや違和感を感じることが多いですが、治療後7日後くらいでほとんど痛みを感じなくなるくらいまで改善します。多くの論文で、このような痛みの変遷が報告されています。5
ここでは、治療後の痛みに対する対処法をご紹介します。
- 痛み止めを飲む
- 強く噛まないようにする
- 痛みが強い、1週間以上痛い場合は歯科医院を受診する
痛み止めを飲む
根管治療後に痛いと感じる場合は、痛み止めの服用が効果的です。根管治療後の痛みは身体の生体防御反応の1つであり、数日で収まることが多いため、痛くてつらいときは我慢せずに痛み止めを飲み、様子をみましょう。
強く噛まないようにする
根管治療をしている歯では強くかまないようにしましょう。
治療中の歯は敏感であり、噛む刺激によって痛みを誘発させるだけでなく、歯の強度も落ちているため、強く噛むことで亀裂や破折のリスクがあります。そのため、治療している歯を避けて噛むようにしましょう。
痛みが強い、1週間以上痛い場合は歯科医院を受診する
根管治療後の痛みが強い場合や、痛みが1週間以上続く場合は歯科医院を受診しましょう。痛みの原因を取り除くために処置が必要な場合があるからです。
痛みを引き起こしている原因を特定し、歯科医師による適切な処置を受けることで、痛みを改善させ、合併症のリスクを減らすことができます。
まとめ:根管治療後も痛いのは期間限定!適切な対処で痛みを緩和できる
本記事では、根管治療後に痛いと感じる原因と、特に痛いフレアアップについて、痛みへの対処法と医学的根拠について詳しく解説してきました。以下にまとめましたので、おさらいしてみましょう。
根管治療後の痛みを引き起こす原因は、以下の9つが考えられます。
- 治療で使われる器具や洗浄針の物理的刺激による炎症
- 根管治療で使用する薬剤の化学的刺激による炎症
- 細菌や細菌の副産物が根っこの外に押し出される
- 根管治療中に再感染している
- 根管内に神経の取り残しがある
- かみ合わせが高い
- 根っこの中に穴が空いた(穿孔)
- 器具が根っこの中に残っている
- 根っこの亀裂や破折が起きている
- 根管治療後に起こる激しい痛みをフレアアップと呼び、10人から1人の割合で起こります。
- フレアアップになった場合は歯科医院を受診しましょう。フレアアップは治療の失敗ではなく、適切な処置で症状は改善します。
- 根管治療後の痛みはほとんどの場合1週間以内に収まります。治療後数日間の痛みがつらい時は、痛み止めを飲んでゆっくり休みましょう。痛みが強い、1週間以上痛い場合は歯科医院を受診しましょう。
根管治療後の痛みについて、不安や疑問を少しでも取り除くことができましたでしょうか。根管治療期間中を少しでも快適に過ごすためにぜひ参考にしてください。
【参考文献】
1.石井宏 世界基準の臨床歯内療法
2.Jose F Siqueira Jr. Microbial causes of endodontic flare-ups. Int Endod J 2003 Jul;36(7):453-63. PMID: 12823700 DOI: 10.1046/j.1365-2591.2003.00671.x
3.I.Tsesis et al, Flare-ups after endodontic treatment: a meta-analysis of literature. J Endod. 2008 Oct;34(10):1177-81. PMID: 18793915 DOI: 10.1016/j.joen.2008.07.016
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5.Jaclyn G Pak et al, Pain prevalence and severity before, during, and after root canal treatment: a systematic review. J Endod. 2011 Apr;37(4):429-38. PMID: 21419285 DOI: 10.1016/j.joen.2010.12.016

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