インプラントは絶対だめと聞いたことがあるけれど、本当にそうなのかな?
絶対にだめと言われると、不安になりますよね。しかし実際のところはどうなのか、疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれません。
インプラント治療は外科手術を含む、非常に高度な治療になります。患者さんの口の中の状態や、全身の健康状態、生活スタイル、経済状況によっては、インプラント治療が適切ではない場合があり、インプラント治療が絶対にだめだと言われることがあります。
しかし、全ての人に対してインプラント治療が絶対にだめというわけではありません。大切なことは、インプラント治療の欠点や注意点をしっかりと理解したうえで、自分に最適な治療法を選ぶことです。
本記事では、インプラント治療が絶対にだめだと言われる理由と、自分でできる対処法について紹介します。インプラント治療に対して不安がある方は、ぜひ参考にしてください。
インプラントが絶対だめだと言われる理由10個
なぜインプラントが絶対だめと言われるのか、その理由を10個紹介します。
- 外科手術によるリスクがあるから
- 全身状態によっては治療ができない場合があるから
- インプラント周囲炎のリスクがあるから
- メインテナンスが必須で大変だから
- 治療期間が長期にわたるから
- 老後にトラブルが起こるかもしれないから
- 歯科医師の知識や技術に差があるから
- 失敗した時の再治療が困難であるから
- 喫煙者にはおすすめできないから
- 治療費用が高額だから
外科手術によるリスクがあるから
インプラントは外科手術を含む治療であるため、手術によるリスクがあります。
インプラント治療では、歯茎を切開し、骨の中に金属の土台を埋め込む外科治療が含まれます。この外科手術によって以下のような事柄が起こる可能性があります。
- 神経麻痺
- 上顎洞炎
- 上顎洞などの組織の隙間への異物迷入
- 血管を傷つけることによる異常出血
- 細菌感染
当然ですが、歯科医師もこういった偶発症が起こらないよう、細心の注意を払って治療を行いますが、人間が治療を行う以上、100%絶対に起こらないとは言い切れません。
このような手術による一定のリスクがあるため、インプラント治療が絶対にだめだと言われることがあります。
全身状態によっては治療ができない場合があるから
全身の状態によっては、インプラント治療を避けたほうがよい場合があります。中には、絶対にインプラント治療ができない場合もあります。
具体的に次のような病気をお持ちの方は、担当歯科医師と主治医とよく相談したうえでインプラント治療を受けるかどうか決めましょう4。
高血圧
高血圧の方は、インプラント手術の際に注意が必要です。降圧薬を飲んでいて血圧がコントロールされていても、手術の痛みや恐怖、不安といったストレスが原因で、手術中に血圧が上昇し止血困難となる場合や、手術後に出血が起こることがあります。
また、手術のストレスで血圧が上がることによって、脳や心臓への負担が増加することがあります。高血圧の合併症である、脳梗塞や脳出血、心不全を引き起こさないためにも、重度の高血圧の方はインプラントを避けたほうがよいです。
心臓の病気
代表的な心臓の病気として、狭心症、心筋梗塞、心筋症、不整脈、心不全、心臓弁膜症が挙げられます。
重症心臓病の方は、インプラント治療が禁忌なため行えません。心筋梗塞の発作が起こってから6か月以上経過しており、病状が良好にコントロールされていて後遺症がなければ、医師の判断によってはインプラント治療が可能です。
狭心症の場合、投薬により良好なコントロールが得られていれば、医師の判断によっては手術が可能です。心臓の病気がある人は、血液をサラサラにするお薬を飲んでいることが多いため、血が止まりにくくなることがあります。
また、歯科の外科処置によって一過性の菌血症が生じることがありますが、この時に細菌が弁膜や心内膜などに付着すると感染性心内膜炎を発症することがあります。
このように心臓の病気がある方にとってインプラント治療はリスクがあるため、歯科医師と主治医に相談して連携をとってもらい、治療が可能かどうか判断してもらう必要があります。
脳血管障害
脳血管障害には、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血などがあります。脳血管障害は、高血圧症、糖尿病、心疾患などの合併症として起こることが多いので、他の病気が隠れていないか確認が大切です。
また、脳梗塞の患者さんは血液をサラサラにするお薬を飲んでいることが多いため、血が止まりにくくなるケースがあります。
脳血管障害の後遺症で手や指に麻痺が残ってしまっている場合は、口腔清掃ができないことがあるため、このような場合はインプラント治療を行わないほうがよいでしょう。
糖尿病
主治医の指示通りに治療を行っていない人や、血糖値のコントロールができていない人は、インプラント治療を避けた方がよいでしょう。インプラント体埋入手術に対する糖尿病のコントロールは、空腹時血糖140g/dL 以下、ケトン体(-)、HbA1c:6.9%未満であることが基準となります。
血糖値がコントロールされていないままインプラント治療を行うと、以下のような状態を引き起こし、インプラント治療の失敗やトラブルを招くことがあります。
- 治療中のストレスによって血糖値に変化が生じやすく、高血糖や低血糖状態になる可能性が高まる
- 傷口の治りが遅くなる
- 細菌感染しやすくなる
- インプラントと骨が結合しにくくなる
- インプラント周囲炎のリスクが高まる
消化器系の病気
胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がん、肝機能障害、膵臓の病気などがあげられます。
胃・十二指腸潰瘍がある方は、手術後の痛み止めなどの処方に注意してもらう必要があります。
また、肝機能障害を引き起こす病気はウイルス性肝炎、肝硬変、肝臓癌などが挙げられますが、急性期や末期でなければインプラント手術に直接の影響はないことが多いです。
しかし、肝機能障害があると出血傾向があるため、手術前後の出血が問題になることあります。
腎臓病
腎不全、重度の腎障害、透析を受けている方は、インプラント治療が禁忌なため行えません。
また、腎機能の障害により、細菌感染しやすくなったり、口腔乾燥症等を認める場合があります。
血液の病気
血液の病気には、血友病、血小板減少性紫斑病、白血病、貧血などがあります。
血友病などで出血のコントロールができない場合や、治療による免疫抑制が強い場合は、インプラント手術を行うことができません。
重度の貧血の場合、酸素の運搬機能低下により傷の治りが悪くなったり、術後感染を生じる可能性があります。
がん
末期の悪性腫瘍患者は、インプラント治療を行うことが禁忌です。
また、がん治療を行っている、またはかつて行っていた方がインプラント治療を行うときは注意が必要です。
がんの薬剤療法で、骨吸収阻害薬などを投与されている場合、インプラント治療によって薬剤関連顎骨壊死を引き起こす可能性があります。
また、頭頸部がんなどの悪性腫瘍の治療で顎の骨に放射線照射を受けている場合、口腔乾燥や放射線性骨壊死・骨髄炎などを誘発することがあります。そのため、顎骨に放射線治療を受けた方はインプラント治療を行えません。
骨粗鬆症
骨粗鬆症の治療薬として、骨吸収抑制薬を投与されている骨粗鬆症患者さんは薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)を引き起こすリスクがあります。そのため、処方医師と密接な連携を取り、慎重な手術と厳重なメインテナンスを行うことが重要です。
自己免疫疾患
関節リウマチやシェーグレン症候群、天疱瘡、膠原病などの自己免疫疾患にかかっている方には、免疫反応を抑えるためにステロイド薬や免疫抑制薬が投与されていることがあります。
これらの薬の影響で、手術のストレスによるショックや、手術後の感染が起こる可能性があります。
また、ステロイド性骨粗鬆症や口腔乾燥症もインプラント治療に影響を及ぼす可能性があります。
精神疾患
精神疾患にもいくつか種類があります。順番に見ていきましょう。
精神疾患 | 統合失調症、人格障害、うつ病などが挙げられます。
うつ病における自殺の危険性や統合失調症における幻聴、幻覚、被害妄想などがインプラント治療を機に発現、あるいは悪化する可能性があるため、感情面の長期の安定が得られていなければインプラント治療は避けたほうがよいです。 |
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認知症 | 認知症は記憶を失ってしまうだけでなく、理解力や判断力も低下してしまい、インプラント治療への理解や協力が得られにくくなる可能性があるため、認知症の方へのインプラント治療は避けたほうがよいでしょう。 |
パーキンソン病 | パーキンソン病によって手指がうまく動かせなくなってしまうと、歯みがきなどの口腔清掃が困難となることが予想されます。そのため、インプラント治療は避けたほうがよいでしょう。 |
金属アレルギー
チタンアレルギーをお持ちの方は、チタンインプラントを用いた治療を行えません。チタンアレルギーでない金属アレルギーであれば、インプラント治療を行うことは可能です。
また、ジルコニアなど金属をまったく使用していないセラミックインプラントを検討してもよいでしょう。
金属アレルギーがある方はインプラント治療前に必ず医師に相談し、パッチテストなど必要な検査を受けるようにしましょう.
インプラント周囲炎のリスクがあるから
インプラント治療は、時間が経ってからインプラント周囲炎になるリスクがあります。
インプラント治療が完了した後に、日々の歯みがきが不十分だとインプラントの周りや歯茎の間にプラークと呼ばれる細菌の固まりがたまっていきます。そのままプラークが落とされることがなくたまっていくと、歯茎が炎症を起こし、インプラントを支えている骨を溶かして行きます。
この歯周病に似た病気をインプラント周囲炎と呼びます1,2。インプラント周囲炎の発症に深く関係しているのは以下のようなことです。
- 日々の歯みがきで汚れ(プラーク)が落とせていない
- 定期健診に行っていない
- 糖尿病がある
- 喫煙している
インプラント周囲炎は一度かかってしまうと進行が早く、広範囲にわたって広がりやすいという特徴があります3。
重症化すると、インプラントの脱落の原因にもなるので注意が必要です。そのため、インプラント治療を検討している場合は、インプラント周囲炎を一生涯予防していけるかどうかを考えておくべきです。
メインテナンスが必須で大変だから
インプラントは、治療後のメインテナンスが必要になります。
インプラントは、口の中に設置した瞬間から口腔内の様々な細菌と強力な咬合力にさらされ続けます。そのため、インプラント治療後は一生涯に渡る定期的なメインテナンスが必須です。
インプラントを長持ちさせるためには、治療が終了した後も自宅でしっかりとお手入れを行い、数か月に1度は歯科医院に行って定期健診を受ける必要があります。
インプラント治療を受ける前に、このようなメインテナンスが受け入れられるか、それとも面倒で大変だと負担に感じるかどうか考えてみてください。
治療期間が長期にわたるから
インプラント治療は時間がかかります。インプラントの治療期間は6~12か月ほどかかります。これは、骨の中に埋めた土台と骨がくっつくのに数か月間の時間を要するためです。
ブリッジや入れ歯の治療期間が1~3か月程度であることと比べると、非常に長い治療期間になります。そのため、一刻も早く治療を終わらせたい人には向いていないといえるでしょう。
老後にトラブルが起こるかもしれないから
インプラント治療を行ってから何十年後か経過した老後に、トラブルが起こる可能性があります。
具体的には、以下のようなことがあげられます。
- 認知症や寝たきりになって毎日のお手入れができなくなる
- 通院が困難になり、インプラント周囲炎やインプラントの破損といったトラブルに対応できなくなる
- 除去が必要となった時に除去ができない
老後にはこのようなトラブルが起こるリスクがあるため、絶対にだめだと言われることがあります。
歯科医師の知識や技術に差があるから
歯科医師の知識や技量不足が原因で、インプラント治療がうまくいかないことがあるため、絶対にダメだと言われることがあります。
インプラント治療は、複数の治療法を組み合わせて行う治療です。インプラント治療を適切に行うためには、解剖学をはじめとする基礎医学的知識および生体材料学の知識のみならず、口腔外科学、歯周病といった多くの臨床知識と医療技術が必要不可欠です。
また、安全性を確保し患者に信頼される治療を行うためには、高い倫理性が求められます。
インプラントを行うにあたり、上記のような専門的な医学知識、治療技術、倫理性が欠けていると、インプラント治療の失敗につながることがあります。そのため、技術力があり治療経験が豊富なドクターを探すことが重要になってきます。
失敗した時の再治療が困難であるから
インプラント治療に失敗した場合、再治療が難しくなるケースが多いです。
インプラントの再治療が必要となるのは、大きく分けて以下2つのケースが当てはまります。
インプラントの手術をしてすぐ
インプラント体の埋入手術をしてすぐに再治療が必要となるケースは、インプラント体が骨と結合していないことによって起こることが多いです。このような場合は、骨と結合しない理由を明らかにし、原因に対処した後で、再治療を行います。
多くの場合、元の状態よりも骨の量が減ってしまっていることが多いので、骨を足す処置が必要となることが多く、治療の難易度が上がります。
インプラント治療が完了してある程度時間が経過した時
インプラント治療が完了してある程度時間が経過してから、再治療が必要になるケースで最も多いのが、インプラント周囲炎です。インプラント周囲炎はインプラントを支える骨を溶かすため、重症化するとインプラントの揺れや脱落を招きます。
こうした場合は、インプラントの除去手術や骨の再生治療といった再治療を行っていきます。骨の吸収量が多く、インプラントを支える十分な量の骨がなくなってしまった場合は、インプラントを再度埋め込むことができなくなることもあります。
他にも、インプラントの破損や破折などでも再治療が必要になることがあります。
インプラント治療に失敗し、再治療が必要となると、治療の難易度が上がるだけでなく、治療期間が長期化し、患者さんの肉体的負担・経済的負担が増えてしまいます。このような背景から、インプラントは絶対にダメだと言われることがあります。
喫煙者にはおすすめできないから
愛煙家で、タバコが何よりも大切な人はインプラント治療をしないほうがよいでしょう。
タバコは、インプラント治療の失敗を招きます。タバコに含まれる有害物質が口腔内に悪影響を及ぼす研究は数多く報告されており、以下のようなことが知られています4,5。
- 手術後の傷の治りが悪くなる
- 免疫力がさがるため、細菌感染のリスクが上がる
- インプラント体と骨の結合を妨げる
- 骨を足す手術の成功率が下がる
また、タバコは歯周病を悪化させる要因であるとともに、インプラント周囲炎を引き起こす可能性が高いため、インプラント治療後の長期予後にも影響してきます。そのため、タバコをやめる予定がない方はインプラント治療をしない方がよいでしょう。
治療費用が高額だから
インプラント治療は費用が高額です。これは、インプラント治療が健康保険適用外であることが原因です。
医院によって価格設定が異なるため、値段に幅がありますが、インプラント治療は、1本あたり総額で約30万〜50万円が相場になります。内訳を見ていきましょう。
検査や診察料 | 1万5千~5万円 |
---|---|
インプラントの手術費用 | 15万~50万円 |
人工歯の費用 | 5万~20万円 |
総額 | 約20万~80万円 |
さらに顎の骨が薄い場合や、歯茎の厚みが不十分な場合は骨を足す手術や歯茎の幅を増やす手術を行う必要があり、こういった場合はさらなる費用がかかります。
このように、インプラントを行うには高額な費用が必要となります。金銭的負担が大きいことがインプラント治療が絶対ダメだと言われる所以でしょう。
本当にインプラントは絶対だめなのか?諦める前にできること
では、インプラントは本当に絶対だめなのでしょうか。結論から言うと、決してそんなことはありません。
インプラント治療を諦める前に、本章で紹介することを試して、最適な治療法を選んでいきましょう。
- 上手な先生を探す
- 治療後もメンテナンスをしっかりとする
- 他の治療法を検討する
- 持病がある場合はかかりつけ医に相談する
- 禁煙する
- 老後に起こるかもしれないトラブルの対策をする
- 金銭的負担を軽減する制度を使う
上手な先生を探して相談する
インプラント治療は、精密な診断と高い技術力が必要とされる治療です。そのため、インプラントを行うときは信頼できる歯科医師が在籍する歯科医院選びをしっかり行いましょう。
気を付けるべきポイントを以下に挙げていきます。
- インプラント専門の歯科医師がいるか
- 歯周病専門の歯科医師がいるか
- 症例数が多く治療経験が豊富であるか
- CTや手術室、滅菌機などの院内の設備がしっかりしており、衛生管理されているか
- 保障制度や料金形態が明確であるか
- 通いやすい場所にあるか
- カウンセリングや問診が丁寧か
- 歯科医師の説明が明確かどうか、質問にちゃんと答えてくれるか
- 歯科医師に何でも質問しやすい、話しやすい雰囲気があるか
- スタッフの雰囲気がよく円滑にチームワークしているかどうか
インプラント治療は、長期にわたって歯科医院に通うことになります。安心して治療を受けるために、慎重に病院を選び、気になることがあったら遠慮せずに質問し、不明点がないようにして治療を受けましょう。
治療後もメンテナンスをしっかりとする
インプラント治療が終了したあとは、メインテナンスをしっかりすることが重要です。メインテナンスには自宅でできることと、歯科医院で行うものがあります。
自宅でのメインテナンス
自宅でできるメンテナンスとして、歯みがきをしっかりすることが重要です。これは、インプラント周囲炎を予防するためです。
インプラント周囲炎の発症は、プラークと深い関わりがあり、予防するためには毎日の歯みがきでプラークをしっかりと落とすことが重要です。
インプラント周囲炎を予防するために、毎日、自分で歯ブラシやフロス、歯間ブラシを使って念入りな口腔清掃を行う事が必要になってきます。インプラントを長く使えるようにするためにも、インプラント周囲炎を予防することは非常に重要です。
歯科医院でのメインテナンス
インプラントの異常を早期発見するため、治療がひと段落した後も定期健診に通いましょう。
インプラントは治療が終了したときから、噛む力とプラークの影響を受け続けます。そのため、インプラントを長く安全に使い続けるために、数か月に1回は異常がないか歯科医院で確認する必要があります。
定期健診では、具体的に以下のような項目を確認し、専門器具を用いた口腔清掃やかみ合わせの調整といった治療を行います。
- インプラントの周りについたプラークの量
- インプラント周りの粘膜の状態
- インプラントの歯周ポケット深さ
- インプラント体の動揺検査
- X線写真撮影検査にてインプラント周りの骨の状態の確認
- かみ合わせの検査
- 歯ぎしり・食いしばりの有無の確認
- インプラントを固定する部品に緩みや破損が生じていないか確認
インプラントは、入れたら終わりという治療ではありません。早期に不具合の原因に対処し、より重大な不具合の発生を予防していくことが重要です。
前述のインプラント周囲炎の予防のためにも、自宅でしっかりとしたケアを行い、通院して定期健診を受けることは重要です。
他の治療法を検討する
インプラントの外科手術を受けることが難しい、または抵抗感がある、という方はインプラント以外の治療方法を検討するのも一つの手です。歯を失った部分を補う治療は、インプラントの他にブリッジと入れ歯があります。
ブリッジ、入れ歯の特徴は以下の通りです。
ブリッジ
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入れ歯
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|
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治療法 | 歯がない部分の両隣の歯を削って、かぶせ物を橋渡しのようにする | 歯を失った部分に取り外しができる人工の歯を入れる治療法 |
利点 | 固定式で治療後の違和感が少ない 入れ歯と比べるとしっかり噛める 治療期間が比較的短い |
歯を削る量が少ない 取り外しが可能 治療期間が短い 保険適応なら費用が安い |
欠点 | 健康な歯を削る必要がある 両隣の歯に負担がかかる 保険の素材は汚れがつきやすい |
違和感が生じやすい 噛み心地がよくない 金具をかける歯に負担がかかる 部分入れ歯は金属のバネが見える |
治療費用 | 保険・自費適応 | 保険・自費適応 |
どの治療法にもそれぞれメリット・デメリットがあります。個人の口腔内の状況や、考え方、生活スタイルに合わせて、何を最優先するのかを明確にし、ご自身の納得できる治療法を選んでください。
持病がある場合はかかりつけ医に相談する
全身状態が管理された状態であれば、インプラント治療が可能になることがあります。特に糖尿病や高血圧の方はしっかりとコントロールされていればインプラント治療を受けられることがあります。
そのため、インプラントができないとあきらめる前に、かかりつけ医師や担当歯科医師にインプラント治療ができるかどうか相談してください。医師と歯科医師が連携をとり、治療が可能と判断されればインプラント治療を受けられます。
禁煙する
タバコを吸っており、インプラント治療をしたいと考えている人は禁煙しましょう。前述の通り、タバコはインプラント治療の失敗を招きます。
自分ひとりの力で禁煙することが難しいと感じる場合は、禁煙外来を受診してみましょう。医師と一緒に禁煙を行うことで、確実に、あまりお金をかけずに、そして医療の力を借りることで禁断症状を和らげながら禁煙を行うことができます。
タバコに含まれるニコチンには依存性があるため、禁煙を始めて2~3日はニコチン切れのイライラやストレスなどの離脱症状が現れます。しかし、医療用禁煙補助薬を使うことにより、離脱症状を和らげることができ、禁煙を継続させやすくすることができます。
また、医療用禁煙補助薬はなくても、医師や看護師がカウンセリングやアドバイスを行いながら禁煙治療を成功に導きます6。
タバコをやめることで、身体の機能の改善や病気のリスクを下げられます。インプラント治療を考えている喫煙者の方は、これを機に禁煙を検討してみてください。
老後に起こるかもしれないトラブルの対策をする
インプラント治療後の老後に起こりうるさまざまなリスクは、ある程度予防できます。若いうちから、以下のような点に気を付けながら生活していくことが重要です。
- 自分でできるインプラント周囲炎予防を徹底する
- かかりつけ医での定期的なメインテナンスを受ける
- 自分のインプラントの詳しい情報を残しておく
- 日頃から健康に気を使う
- トラブルが起こったら訪問歯科治療を利用する
詳しくは、下記の記事を参考にしてみてください。
金銭的負担を軽減する制度を使う
高額な治療費に対するさまざまな制度を利用することで、金銭的負担を減らすことができます。
具体的には以下の2つがあります。
- 医療費控除を使う
- 分割払いにする
医療費控除を使う
医療費控除を使用することで、金銭的な負担を減らすことができます。医療費控除とは、年間の医療費が10万円を超えた場合、所得税や住民税が控除される所得控除の一つです。
医療費控除を受けるためには、必要書類をそろえて確定申告を行う必要があります。直近1年だけでなく、5年前までさかのぼって申請ができます。
- 医療費控除を受けることができる条件
- 自分または自分と生計を一にする配偶者や子供など親族のために支払った医療費が対象
- その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費の合計が10万円を超える、またはその年の総所得金額の5%を超える場合
美容や予防目的でない歯科治療であれば、医療費控除が適用されます。インプラント治療の場合、美容目的の場合は対象外となってしまいますが、失った歯の機能を補うための治療であれば控除対象となります。
また、医療費だけでなく、医薬品の購入や通院のための交通費も控除対象に含まれているため、記録を残しておくとよいでしょう。
還付される金額は年収によって異なりますが、インプラント治療は10万円を超えるケースがほとんどですので、医療費控除することをおすすめします。医療費控除をするには確定申告の手続きが必要です。
詳しい条件や手続き方法、還付金の計算方法は国税庁のホームページをご覧ください。
分割払いにする
インプラント治療は一括で支払うには高額な場合が多いですが、分割払いにすれば1回の支払い額を減らせます。
以下のように、分割払いにもいくつか種類があります。
クレジットカードの分割払い | 歯科医院がクレジットカード決済に対応している場合は、クレジットカードの分割払いを利用することができます。以下のようなメリット・デメリットがあるため、お手持ちのクレジットカード会社のシステムを調べてみてから検討してみましょう。
メリット デメリット |
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デンタルローン | 金融機関や信販会社が提供している歯科治療専用のローンのことです。 患者と金融機関などがデンタルローンの契約を結び、金融機関などが歯科医院に治療費を立替払いします。患者さんは金融機関などに元金と利息を分割で返済していくシステムです。メリット ・金利がクレジットカードの分割払いよりも低く設定されていることが多い ・毎月一定額を返済するので、支払いの計画を立てやすいデメリット ・デンタルローンの利用には審査がある ・利息の支払いが発生する ・追加の治療費がデンタルローンの対象とならないことがある |
歯科医院独自の分割払い | 歯科医院によっては、歯科医院と患者様の間で分割払いの契約を結ぶ支払い方法を利用することができます。
メリット デメリット |
上記のような制度をうまく使うことで、経済的負担を減らしながらインプラント治療を受けられます。
まとめ:インプラントは絶対だめな治療ではない!医師に相談して最適な治療を見つけよう
インプラント治療特有の特徴や、患者さんの健康状態、生活スタイル、経済状況によっては、インプラント治療が適切ではない場合があり、インプラント治療が絶対にだめだと言われることがあります。
しかし、インプラントが欠点まみれで絶対にだめな治療というわけではありません。材料や技術の進歩もあり、インプラント治療は入れ歯やブリッジにはない魅力的なメリットも多いです。また、ご自身の生活を見直してみたり、対策することでインプラントのデメリットを減らせます。
大切なことは、インプラント治療の欠点や注意点をしっかりと理解したうえで、自分に最適な治療法を選ぶことです。そのため、ご自身が大切にしているポイントを明確にし、歯科医師と相談して納得のいく治療法を選んでください。本記事が治療法を選ぶ際の手助けになれば幸いです。
【参考文献】
1.Frank Schwarz et al, Peri-implantitis. J Clin Periodontol. 2018 Jun:45 Suppl 20:S246-S266. PMID: 29926484 DOI: 10.1111/jcpe.12954
2.Tord Berglundh et al, Peri-implant diseases and conditions: Consensus report of workgroup 4 of the 2017 World Workshop on the Classification of Periodontal and Peri-Implant Diseases and Conditions. J Clin Periodontol. 2018 Jun:45 Suppl 20:S286-S291. PMID: 29926491 DOI: 10.1111/jcpe.12957
3.Lindhe J et al, Experimental breakdown of peri-implant and periodontal tissues : a study in the beagle dog. Clin Oral Implant Res, 3:9-16, 1992. PMID: 1420727
4.日本口腔インプラント学会 口腔インプラント治療指針2024
https://www.shika-implant.org/shika/wp-content/uploads/2024/03/shishin2024.pdf
5.Danae Anastasia Apatzidou. The role of cigarette smoking in periodontal disease and treatment outcomes of dental implant therapy. Periodontol 2000. 2022 Oct;90(1):45-61. PMID: 35950749 DOI: 10.1111/prd.12449
6.日本医師会 さあ禁煙を始めましょう!
https://www.med.or.jp/forest/kinen/start/

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