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インプラントのやり直しはできる?再治療できるケースと費用を紹介

最近インプラントの調子が悪い気がするのだけど、インプラント治療のやり直しってできるのだろうか?

せっかく高いお金と時間をかけて治療したインプラントの調子が悪いと不安になりますよね。「インプラント治療のやり直しが必要な状態なのか」「そしてやり直し治療が可能なのか」疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれません。

インプラント治療の成功率は、一般的に90%以上と報告されています。しかし、中にはインプラント治療がうまくいかず、やり直しが必要になるケースもあります。

インプラント治療のやり直しが必要になるケースは、大きく分けて「インプラント埋入手術をしてからすぐ」と「インプラント治療が終わってからしばらく時間が経ったとき」に分けられます。

やり直しと聞くと不安や疑問が尽きないかもしれませんが、まずは原因と治療の選択肢について正しく知ることが大切です。

本記事では、インプラント治療のやり直しが必要になるケース具体的な治療方法やり直しを考えたときにするべきことやり直しを防ぐためにはどうしたら良いのかについて詳しく解説します。

すでにお悩みの方も、これからインプラント治療を考えている方も、ぜひ参考にしてみてください。

インプラントのやり直しが必要なケース

インプラントのやり直しが必要なケースはさまざまですが、時期によって分けると以下の2つに分けられます。

  1. インプラント埋入手術をしてからすぐ
  2. インプラント治療が終わってからしばらく時間が経ったとき

順番に見ていきましょう。

インプラント埋入手術をしてからすぐ

まず、インプラント埋入手術をしてからすぐに判明する、やり直しが必要なケースを紹介します。

  1. インプラントが骨とくっつかない
  2. 手術に関連したトラブルが起きている

2つのケースについて、以降でそれぞれ詳しく解説します。

インプラントが骨とくっつかない

インプラント埋入手術後に、骨とインプラントがうまく定着しない場合、インプラントのやり直し治療が必要になることがあります。

インプラントが手術直後に骨に固定されることを初期固定(又は一次固定)と呼びますが、初期固定の有無がその後の骨結合に大きな影響を与えます。

初期固定がうまくいかなくなる要因は、以下の通りです1

  • 骨がやわらかい
  • 骨密度が低い
  • 骨の量が不十分である
  • 埋入時の摩擦熱によって骨がやけどをしている
  • 細菌感染が起きている
  • インプラントを埋める穴を開けすぎて穴が大きくなっている
  • インプラントの埋め込みの位置・角度が不適切である
  • 糖尿病や貧血、骨粗鬆症といった全身疾患がある
  • 喫煙している

上記のような理由で、骨とインプラントがしっかりと結合しないと次のような症状を引き起こします。

  • 痛みが長期間続く
  • インプラントがぐらぐらと安定せず揺れる
  • インプラントが脱落する

このような場合は、インプラントが骨と結合しなかった原因を明らかにし、やり直し治療を行う必要があります

手術に関連したトラブルが起きている

インプラント埋入手術に関連したトラブルが起きている場合、インプラントの除去などのやり直し治療が必要になることがあります。

インプラント埋入手術で起こりうるトラブルとその原因、それに付随して起こる症状として以下のようなものがあります1

骨のやけど ドリルを使って顎の骨に穴をあける時に、ドリルと骨の摩擦が大きいと発生する熱が高くなり、骨にやけどが生じることがあります2 ・手術部位の痛みが長く続く
・インプラントの周りが腫れている
・歯茎から膿が出てくる
・インプラントが安定しない
細菌感染 手術をした傷口やその周りに細菌が入り込むことで起こる感染症のことです。 ・痛みが強くなる
・歯茎が腫れる
・歯茎が赤く腫れる
・熱を持った感じがする
・膿やにおいの強い液体が出てくる
神経損傷 手術中に神経を傷をつける、切断してしまう、器具で神経を圧迫してしまうことで神経損傷が起こることがあります。 ・麻痺がおこり、唇や顎の感覚がなくなる
・ピリピリとしびれる感じがある
・味がわからない
上顎洞炎 上顎のインプラントや、上顎の顎の骨を足す手術が原因で上顎洞に炎症が起こることがあります3 ・頬や目の奥、奥歯のあたり、顔面に痛みがある
・頭痛がする
・発熱する
・片方の鼻づまり
・においが感じにくくなる
・黄色く、どろどろした鼻水が出る
・鼻や口から臭いがする
上顎洞などの組織の隙間への異物迷入 インプラント手術によって、インプラントの部品が体内の空隙や隙間に入り込んでしまうことがあります。 ・片方の頬の痛みや腫れ
・片方の鼻づまり
・黄色く、どろどろした鼻水が出る
・鼻と口がつながったような感覚(鼻をかむと空気が口に抜ける)
・顔面の腫れや皮膚の変色
・食事時や会話時の痛み
・神経圧迫によるしびれや感覚異常
・のどの奥の異物感
・口が開きづらい
・飲み込み時の痛みや違和感
異常出血 インプラント手術によって動脈を傷つけると出血が多くなり、場合によっては止血が困難になり大量出血を引き起こします。 ・ガーゼを噛んでも血が止まらない
・数時間~数日たってから急に出血し始める
・出血とともに腫れや強い痛みを伴う
・内出血により顔面や口腔内が急激に腫れる

上記のような場合は、早急に歯科医院を来院し、適切な処置を受ける必要があります。場合によってはインプラントの除去を行い、やり直し治療が必要になることもあります。

インプラント治療が完了してからしばらく時間が経ったとき

中には、インプラント治療が完了してからしばらく時間が経過したタイミングでやり直しが必要になるケースもあります。

  1. インプラント周囲炎に感染した
  2. インプラント自体が破損した
  3. 噛み合わせが悪くなった
  4. 金属アレルギーを発症した

それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

インプラント周囲炎に感染した

インプラント治療が終わってからしばらく時間が経ってから、インプラント周囲炎を発症した場合、インプラントのやり直しが必要になることがあります

インプラント治療が完了した後に、日々の歯みがきが不十分だとインプラントの周りや歯茎の間にプラークと呼ばれる細菌の固まりがつきます。そのままプラークが落とされることがなくたまっていくと、歯茎が炎症を起こし、インプラントを支えている骨を溶かしていきます。

この歯周病に似た病気をインプラント周囲炎と呼びます4,5

インプラント周囲炎の発症に深く関係しているのは、以下のようなことです。

・日々の歯みがきで汚れ(プラーク)が落とせていない
・定期健診に行っていない
・糖尿病がある
・喫煙している

インプラント周囲炎は一度かかってしまうと進行が早く、広範囲にわたって広がりやすいという特徴があります6

インプラント周囲炎を引き起こすと、以下のような症状を引き起こします。

  • 歯茎から血がでてくる
  • 歯茎から膿が出てくる
  • 歯茎が腫れている
  • 歯茎が赤くなっている
  • インプラントがグラグラと揺れる
  • インプラントが脱落して取れてしまった

インプラント周囲炎が重症化し、インプラントの動揺や脱落を引き起こした場合、インプラント治療のやり直しが必要となることがあります。

インプラント自体が破損した

インプラント治療が完了したのちに、しばらく時間が経ってから人工物の部分が壊れることがあります1。インプラントの構造とともに、起こりうるトラブルについてみていきましょう。

インプラントは、大きく分けて3つの部分に分かれています。

  1. 歯茎の上にある人工の歯の部分(上部構造、人工歯)
  2. 骨に埋まっている根っこの部分(インプラント体、フィクスチャー)
  3. 人工の歯とフィクスチャーを連結する部分(アバットメント)

ここで、人工歯とアバットメントを連結する方法が2種類あります。

  1. アバットメントスクリューと呼ばれるネジを使って固定する方法
  2. セメントを使って固定する方法

インプラントは上記のように、小さな部品が集まって構成されています。これらの各部位に起こりうるトラブルを挙げていきます。

上部構造のトラブル 上部構造の破折 人工歯部分はセラミックやレジンといった材料で作られていることが多いです。こうした材料が欠けてしまったり、ヒビが入る、又は割れてしまうことがあります。
上部構造の脱離 セメント固定の場合、経年劣化や強い力がかかることで、セメントが劣化し、被せ物がまるごと外れることがあります。ネジ式の場合はネジが緩んだり、締め付けが不十分だと起こります。

いずれの場合も修理が可能なケースが多いです。

アバットメントスクリューのトラブル スクリューの破折 インプラントに過剰な力がかかり続けると、スクリューが折れてしまうことがあります。このような場合は専用の器具を用いて折れた部分を撤去することを試みます。

しかし、アバットメントスクリューが除去できない場合、インプラント体の撤去が必要となることもあります。

アバットメントのトラブル アバットメントの破折 頻度は低いですが、歯ぎしり、食いしばりなどの過大な咬合力によって、アバットメントが折れることがあります。
インプラント体のトラブル インプラント体の破損 歯ぎしり、食いしばりなどの過大な咬合力や繰り返し疲労、アバットメントスクリューの緩み、彎曲、破折などによるアバットメントの持続的な動揺が原因でインプラント体が折れることがあります。

インプラント体が破損した場合はインプラント体の除去が必要になります。

インプラント体の脱落 上部構造装着後のかみ合わせが不適切で、長期間インプラント体に過度な応力がかかると骨とインプラント体の結合が失われる事があります。

また、口腔衛生状態が非常に悪いまま長期間経過した場合にもインプラント体の脱落が起こることがあります。

噛み合わせが悪くなった

治療後時間が経つと、インプラントの周りの歯が動いてしまうことがあります。インプラントは土台と骨が強固に結合して動かないのに対し、天然の歯は動くため、時間とともに歯が移動するという特徴があります。

このように、周りの歯が動くことによって、時間が経つにつれて以下のような事態が起こる可能性があります。

  • 歯と歯の間に隙間ができてしまう
  • 周りの歯との調和が崩れ、見た目が悪くなる
  • 歯並びが悪くなる
  • かみ合わせのバランスが崩れ、一部の歯に負担がかかってしまう

かみ合わせが悪いまま放置しておくと口腔内全体の健康を損なってしまうため、インプラント治療のやり直しが必要になるケースがあります。

金属アレルギーを発症した

インプラント治療を行った後に、金属アレルギーを発症することがあります7

ほとんどのインプラントは、チタンと呼ばれる金属が使われています。インプラントは数多くの会社によって生産されていますが、チタンが99.8%以上である純チタン製インプラントや、ニッケルやパラジウムといった他の金属が含まれるチタン合金でできたインプラントなど、メーカーによって素材が異なります。

チタンは他の金属と比較し、アレルギーを引き起こしづらい金属ではありますが、まれにインプラント治療が完了してからチタンアレルギーを発症することがあります。

また、インプラントにチタン合金が使用されている場合は、インプラントに含まれるニッケル、クロム、パラジウムなどによって金属アレルギーを引き起こすことがあります。

金属アレルギーを発症すると、以下のような症状が出ます。

  • 扁平紅色苔癬:皮膚や口腔粘膜にできものができる難治性の炎症性疾患
  • 掌蹠膿疱症:手のひらや足の裏に膿がたまった小さな水膨れが繰り返しできる皮膚の病気
  • 口内炎
  • 口唇炎
  • 歯肉炎
  • 舌炎
  • 舌の知覚過敏

このような場合は、まずはパッチテストなどの検査でアレルギーの原因となっている金属を特定します。インプラントに含まれる金属が原因となっている場合は、インプラントの除去を行うこともあります。

インプラントの具体的なやり直し治療

インプラントのやり直し治療には、専門的な知識と正確な診断、そして高い技術力が必要とされます。

まずは、歯科医院にて精密検査を行い、インプラントの状態を把握しましょう。そのうえで、担当医と相談して、やり直し治療の方針を決めていくことになります。

インプラント治療をやり直す場合、大きく分けて以下の2通りの方法があります。

  1. インプラントでやり直す治療
  2. インプラント以外でやり直す治療(入れ歯かブリッジ)

順番に見ていきましょう。

インプラントでやり直す治療

歯科医師がインプラントを用いたやり直し治療ができる判断した場合のみ行うことができます。インプラントを用いてやり直す場合は、インプラントの除去が必要な場合と、除去が不要な場合があります。

インプラントの除去が必要な場合

インプラントの除去が必要なケースでは、大きく以下3つの方法でやり直し治療していきます。

  1. インプラントの除去
  2. 骨造成
  3. 再埋入

インプラントの除去を行う場合は、外科手術によって取り除きます。インプラントの周りの骨吸収が進行している場合は、引っ張ることで除去できるケースもあります。

除去手術では、局所麻酔を行ってから歯茎を切り、インプラントを露出させます。そして、専用の器具を用いてインプラントを埋め込むときと反対方向の力をかけて、取り除いていきます。

必要に応じて、周りの骨やインプラントを削ることもあります。除去が完了したら、歯茎を縫い合わせます。

インプラントの周りの骨吸収が進んでいる場合は、必要に応じて骨を作る手術(骨造成)を行います。骨造成(こつぞうせい)とは、外科手術を行い、さまざまな材料を用いて骨の厚みや量を増やす治療です。

インプラント治療のやり直しが必要になるケースでは、インプラント周りの骨が吸収してしまい元の状態よりも骨の量が減ってしまっていることが多く、骨の量を増やすために骨造成を併用することがよくあります。インプラントの除去と同時に行われることもあります。

代表的な骨移植材には、次のようなものがあります。

自家骨(じかこつ) 自分の骨を取ってきて移植する方法。主に下顎の一部から骨を採取する。
採取した骨はブロックあるいは粒のように細かくして使用する。メリット
自分の骨なので安全性が高い
骨の再生に直接作用する能力(骨再生能)がある
骨ができるための足場を提供する能力(骨伝導能)がある
骨を作る細胞を集めてきて骨の再生を促す能力(骨誘導能)があるデメリット
骨を採取するために手術が増える
大量に骨をとることができない
移植後に吸収され、なくなる量が比較的多い
異種骨(いしゅこつ) タンパク質を除去し、ミネラル成分のみを残した動物の骨。主にウシの骨が使われる。

メリット
骨を取るための身体的負担がない
使用量に制限がない
骨ができるための足場を提供する能力(骨伝導能)がある

デメリット
人体に吸収されにくいため感染のリスクがある

人工骨(じんこうこつ) 人工的に作り出された材料で、これまで臨床で多く用いられているものは、ハイドロキシアパタイト(HA)とβ- リン酸三カルシウム(β-TCP)である

メリット
骨を取るための身体的負担がない
使用量に制限がない
骨ができるための足場を提供する能力(骨伝導能)がある

デメリット
他の材料と比べて、骨を作り出す効果が安定していない

これらの材料を使用目的に合わせて使い分け、安定したインプラント治療が行えるような骨の形にしていきます1。骨が再生するまでには数か月から半年程度の時間がかかります。

精密検査を行い、骨の再生が成功したことが確認でき、準備ができたら再度インプラントを埋入します。

インプラントの除去が不要な場合

インプラントの除去が不要であれば、以下2つの治療でやり直しをしていきます。

かぶせ物のみ作り変える インプラントの人工歯部分の破折や脱離が起きた場合は、かぶせ物部分のみを作り変えることでやり直し治療ができます。
破損した部品を交換する アバットメントスクリューネジの破折など、インプラントを構成する部品が破損した場合、部品を交換することによってやり直し治療ができます。

ただし、部品の交換では対応できないケースもあり、この場合はインプラントの除去が必要になることもあります。

インプラント以外でやり直す治療(ブリッジか入れ歯)

インプラント以外で治療をやり直す場合は、インプラントの除去を行ったうえで、傷の治りを待ち、ブリッジか入れ歯を選択することになります。

インプラント周囲の骨吸収が大きく、骨造成で十分な骨の回復が望めない場合や、患者さんがインプラントを用いた再治療を希望されない場合は、ブリッジや入れ歯といったインプラント以外でのやり直し治療をしていくことになります。

ブリッジと入れ歯の特徴は、以下の通りです。

ブリッジ 入れ歯
治療法 歯がない部分の両隣の歯を削って、かぶせ物を橋渡しのようにする 歯を失った部分に取り外しができる人工の歯を入れる治療法
利点 ・固定式で治療後の違和感が少ない
・入れ歯と比べるとしっかり噛める
・治療期間が比較的短い
・歯を削る量が少ない
・取り外しが可能
・治療期間が短い
・保険適応なら費用が安い
・歯がない部位・本数に関わらず柔軟に設計することができる
欠点 ・健康な歯を削る必要がある
・両隣の歯に負担がかかる
・保険の素材は汚れがつきやすい
・歯がない部位・本数によっては治療ができない
・違和感が生じやすい
・噛み心地がよくない
・金具をかける歯に負担がかかる
・部分入れ歯は金属のバネが見える
費用 保険・自費適応 保険・自費適応

どの治療法にもそれぞれメリット・デメリットがあります。個人の口腔内の状況や、考え方、生活スタイルに合わせて、ご自身の納得できる治療法を選んでいくことが大切です。

インプラントのやり直しが困難なケース

ただし、いかなるケースでもインプラントのやり直しができるとは限りません。再治療が難しい3つのケースを解説します。

  1. 骨の量が不十分
  2. 喫煙している
  3. 全身状態が悪化している

骨の量が不十分

インプラント周りの骨の量が不十分だと、やり直し治療が困難になります。

先述の通り、インプラントのやり直しが必要となるケースは元の状態よりも骨の量が減ってしまっていることが多いので、骨を足す骨造成が必要となることが多いです。骨造成は高い技術を必要とするため、治療の難易度が上がります。

骨の吸収量が多く、インプラントを支える十分な量の骨がなくなってしまった場合は、インプラントを再度埋め込むことができなくなることもあります。

喫煙している

喫煙を続けている人は、インプラント治療のやり直しがうまくいかなくなります。

タバコはインプラント治療の失敗を招きます。タバコに含まれる有害物質が口腔内に悪影響を及ぼす研究は数多く報告されており、以下のようなことが知られています1,8

・手術後の傷の治りが悪くなる
・免疫力がさがるため、細菌感染のリスクが上がる
・インプラント体と骨の結合を妨げる
・骨を足す手術の成功率が下がる

また、タバコは歯周病を悪化させる要因であるとともに、インプラント周囲炎を引き起こす可能性が高いため、インプラント治療後の長期予後にも影響を及ぼしています。

全身状態が悪化している

全身状態が以前よりも悪化していたり、新たに病気を発症した場合は要注意です。なぜなら、インプラントを用いたやり直し治療は外科手術が含まれ、手術によって持病が悪化したり合併症のリスクが高まる可能性があるからです。

具体的に、次のような病気をお持ちの方は担当歯科医師と主治医とよく相談したうえで、どのやり直し治療を選択するか決めましょう1

高血圧

高血圧の方は、インプラント手術の際に注意が必要です。降圧薬を飲んでいて血圧がコントロールされていても、手術の痛みや恐怖、不安といったストレスが原因で手術中に血圧が上昇し、止血困難となる場合や手術後に出血が起こることがあります。

また、手術のストレスで血圧が上がることによって、脳や心臓への負担が増加することがあります。高血圧の合併症である、脳梗塞や脳出血、心不全を引き起こさないためにも、重度の高血圧の方はインプラントを避けたほうがよいです。

心臓の病気

代表的な心臓の病気として、狭心症や心筋梗塞、心筋症、不整脈、心不全、心臓弁膜症が挙げられます。

重症心臓病の方は、インプラント治療が禁忌なため、行うことができません。心筋梗塞の発作が起こってから6か月以上経過しており、病状が良好にコントロールされていて後遺症がなければ医師の判断によってはインプラント治療が可能です。

狭心症の場合、投薬により良好なコントロールが得られていれば、医師の判断によっては外科手術が可能です。心臓の病気がある人は、血液をサラサラにするお薬を飲んでいる事が多いため、血が止まりにくくなることがあります。

また、歯科の外科処置によって一過性の菌血症が生じることがありますが、この時に細菌が弁膜や心内膜などに付着すると感染性心内膜炎を発症することがあります。

このように心臓の病気がある方にとってインプラント治療はリスクがあるため、歯科医師と主治医に相談して連携をとってもらい治療が可能かどうか判断してもらう必要があります。

脳血管障害

脳血管障害には、脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血などがあります。脳血管障害は、高血圧症や糖尿病、心疾患などの合併症として起こることが多いので、他の病気が隠れていないか確認することが大切です。

また、脳梗塞の患者さんは血液をサラサラにするお薬を飲んでいることが多いため、血が止まりにくくなることがあります。

脳血管障害の後遺症で手や指に麻痺が残ってしまっている場合は、口腔清掃ができないことがあるため、このような場合はインプラントを用いたやり直し治療は行わない方がよいでしょう。

糖尿病

主治医の指示通りに治療を行っていない人や、血糖値のコントロールができていない人は、インプラント治療を避けた方がよいでしょう。

インプラント体埋入手術に対する糖尿病のコントロールは、空腹時血糖140g/dL以下、ケトン体(-)、HbA1c:6.9%未満であることが基準となります。

血糖値がコントロールされていないまま治療を行うと、以下のような状態を引き起こし、治療の失敗やトラブルを招くことがあります。

  • 外科手術中のストレスによって血糖値に変化が生じやすく、高血糖や低血糖状態になる可能性が高まる
  • 傷口の治りが遅くなる
  • 細菌感染しやすくなる
  • インプラントと骨が結合しにくくなる
  • インプラント周囲炎のリスクが高まる

消化器系の病気

胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がん、肝機能障害、膵臓の病気などがあげられます。

胃・十二指腸潰瘍がある方は、手術後の痛み止めなどの処方に注意してもらう必要があります。

また、肝機能障害を引き起こす病気はウイルス性肝炎、肝硬変、肝臓癌などが挙げられますが、急性期や末期でなければインプラント手術に直接の影響はないことが多いです。

しかし、肝機能障害があると出血傾向があるため、手術前後の出血が問題になることあります。

腎臓病

腎不全、重度の腎障害、透析を受けている方はインプラント治療が禁忌なため、行うことができません。また、腎機能の障害により、細菌感染しやすくなったり、口腔乾燥症等を認める場合があります。

血液の病気

血液の病気には、血友病、血小板減少性紫斑病、白血病、貧血などがあります。血友病などで出血のコントロールができない場合や、治療による免疫抑制が強い場合は、インプラント手術を行えません。

重度の貧血の場合、酸素の運搬機能低下により傷の治りが悪くなったり、術後感染を生じる可能性があります。

がん

末期の悪性腫瘍患者は、インプラント治療を行うことが禁忌です。

がん治療を行っている、またはかつて行っていた方がインプラント治療を行うときは注意が必要です。がんの薬剤療法で、骨吸収阻害薬などを投与されている場合、インプラント治療によって薬剤関連顎骨壊死を引き起こす可能性があります。

また頭頸部がんなどの悪性腫瘍の治療で顎の骨に放射線照射を受けている場合、口腔乾燥や放射線性骨壊死・骨髄炎などを誘発することがあります。そのため、顎骨に放射線治療を受けた方はインプラント治療を行えません。

骨粗鬆症

骨粗鬆症の治療薬として、骨吸収抑制薬を投与されている骨粗鬆症患者さんは薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)を引き起こすリスクがあります。そのため、処方医師と密接な連携を取り、慎重な手術と厳重なメインテナンスを行うことが重要です。

自己免疫疾患

関節リウマチやシェーグレン症候群、天疱瘡、膠原病などの自己免疫疾患にかかっている方には、免疫反応を抑えるためにステロイド薬や免疫抑制薬が投与されていることがあります。

これらの薬の影響で、手術のストレスによるショックや、手術後の感染が起こる可能性があります。また、ステロイド性骨粗鬆症や口腔乾燥症もインプラント治療に影響を及ぼす可能性があります。

精神疾患

精神疾患にもいくつか種類があります。順番に見ていきましょう。

精神疾患 統合失調症や人格障害、うつ病などが挙げられます。

うつ病における自殺の危険性や統合失調症における幻聴、幻覚、被害妄想などがインプラント治療を機に発現、あるいは悪化する可能性があるため、感情面の長期の安定が得られていなければインプラント治療は避けたほうがよいです。

認知症 認知症は記憶を失ってしまうだけでなく、理解力や判断力も低下してしまい、インプラント治療への理解や協力が得られにくくなる可能性があります。認知症の方へのインプラント治療は避けたほうがよいでしょう。
パーキンソン病 パーキンソン病によって手指がうまく動かせなくなってしまうと、歯みがきなどの口腔清掃が困難となることが予想されます。そのため、インプラント治療は避けたほうがよいでしょう。

金属アレルギー

チタンアレルギーを発症した方は、チタンインプラントを用いた治療を行えません。インプラントに使用されていない金属アレルギーであれば、インプラント治療を行うことは可能です。

または、ジルコニアなど金属をまったく使用していないセラミックインプラントを検討してもよいでしょう。

金属アレルギーがある方はインプラント治療前に必ず医師に相談し、パッチテストなど必要な検査を受けるようにしてください。

インプラントのやり直しを考えたときにするべきこと

インプラントのやり直しを考えるにあたって、まずどのような行動を起こせばよいのでしょうか。そこで、まずやるべき3つのことを紹介します。

  1. 担当医に相談する
  2. 他院などからセカンドオピニオンを受ける
  3. 他の相談機関に相談する

担当医に相談する

インプラント治療後に失敗したと思われる場合は、まずは担当医に相談し、状況を伝えましょう。インプラント治療に失敗した場合の対応は歯科医院によってことなりますが、以下のような対応が考えられます。

必要な治療、再治療を行う

必要な検査を行ってもらい、口腔内の状況を把握したうえで必要な治療、または再治療を行ってもらいましょう。重大な失敗が起こっていたり、症状が良くならない場合は口腔外科医や耳鼻咽喉科といった専門医への紹介が必要になることがあります

やり直し治療の費用は無償で行う場合もあれば、追加費用を請求される場合もあります。歯科医院によってシステムが異なりますので、よく確認しましょう。

ただし「定期的なメンテナンスを受けていない」「セルフケアを怠っていた」「禁煙していない」など、失敗の原因が患者様側にあれば、やり直し治療が自己負担となる可能性があります。

返金を依頼する

インプラント治療が失敗していて、原因が歯科医院側にあり、かつその歯科医院で治療のやり直しをしない場合は、インプラント治療費の返金を依頼すると応じてくれる場合があります。

しかし、インプラントの失敗の原因が患者さん側にあり、歯科医院側に責任がない場合は返金が難しい場合もあり、必ずしも返金してもらえるとは限りません。

他院などからセカンドオピニオンを受ける

治療を受けた歯科医院の対応が不十分であり、納得できなかった場合は、他の歯科医院や専門機関でセカンドオピニオンを求めることを検討しましょう。

やり直し治療は難易度が高くなるため、大学病院やインプラント治療の経験が豊富な歯科医院など、技術力が確かな歯科医院を選びましょう。

他の相談機関に相談する

治療を受けた歯科医院の対応に納得できない場合は、他の相談窓口に相談するのも一つの方法です。具体的には以下のような相談先があります。

医療安全支援センター

医療安全センターは、各都道府県や市区町村に設置されており、医療に関するトラブルや疑問を気軽に相談できます。

医療に関する苦情・心配や相談に対応するとともに、医療機関、患者さんに対して、医療安全に関する助言および情報提供等を行っています。

治療内容や医師の対応についての疑問を解消するためのアドバイスを受けられます。

日本歯科医師会

日本歯科医師会は、全国に支部を持ち、各地で相談窓口を設けており、歯科治療に関する幅広い問い合わせを受け付けています。インプラント治療に関しては、専門の口腔インプラント治療相談窓口が設けられています。

消費者センター

消費者センターは、全国各地に配置されています。歯科医院でトラブルが発生し、返金や慰謝料請求を考えている場合は、国民生活センターから住所管轄の消費者センターにて相談するとよいでしょう。

最寄りの消費者センターへは、市外局番なしの188番に電話をかけるとつながります。土日祝日でも利用可能です。

弁護士

歯科医院の対応が不十分であったり、あきらかに歯科医院側の過失がある場合など、訴訟を視野にいれた法的相談が必要な場合は弁護士に相談しましょう。

弁護士費用がかかりますが、歯科医院側が原因でインプラントの失敗が起こったと認められれば慰謝料の請求が可能です。最後の手段として検討するとよいでしょう。

インプラントのやり直しを防ぐために自分でできること

中には、これからインプラント治療を控えていて、やり直しになりたくない……と不安に感じている方がいるかもしれません。

そこで、インプラント治療の失敗でやり直しを防ぐ方法を4つ紹介します。

  1. 歯科医院をしっかりと選ぶ
  2. 禁煙する
  3. 歯みがきを10分以上しっかりする
  4. 定期的にメインテナンスを受ける

歯科医院をしっかりと選ぶ

インプラント治療は精密な診断と高い技術力が必要とされる治療です。そのため、インプラントを行うときは信頼できる歯科医師が在籍する歯科医院選びをしっかり行いましょう

気を付けるべきポイントを以下に挙げていきます。

  • インプラント専門の歯科医院を選ぶ
  • インプラントが専門の歯科医師がいるか
  • 歯周病専門の歯科医師がいるか
  • 症例数が多く、インプラントの実績が豊富な歯科医院を選ぶ
  • CTや手術室、滅菌機などの院内の設備がしっかりしており、衛生管理されているか
  • 保障制度や料金形態が明確であるか
  • 通いやすい場所にあるか
  • カウンセリングや問診が丁寧か
  • 歯科医師の説明が明確かどうか、質問にちゃんと答えてくれるか
  • 歯科医師に何でも質問しやすい、話しやすい雰囲気があるか
  • スタッフの雰囲気がよく円滑にチームワークしているかどうか

インプラント治療は長期にわたって歯科医院に通うことになります。安心して治療を受けるために、慎重に病院を選び、気になることがあったら遠慮せずに質問し、不明点がないようにして治療を受けましょう。

アスクラピアは圧倒的な実績と信頼のインプラント治療を行っています。ご気軽にご相談ください。

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禁煙する

タバコを吸っている人は禁煙しましょう。前述の通り、タバコはインプラント治療の失敗を招きます。

自分ひとりの力で禁煙することが難しいと感じる場合は、禁煙外来を受診してみましょう。医師と一緒に禁煙を行うことで、確実に、あまりお金をかけずに、そして医療の力を借りることで禁断症状を和らげながら禁煙を行うことができます

タバコに含まれるニコチンには依存性があるため、禁煙を始めて2~3日はニコチン切れのイライラやストレスなどの離脱症状が現れます。しかし、医療用禁煙補助薬を使うことにより、離脱症状を和らげることができ、禁煙を継続させやすくすることができます。

また、医療用禁煙補助薬はなくても、医師や看護師がカウンセリングやアドバイスを行いながら禁煙治療を成功に導きます9

タバコをやめることで、身体の機能の改善や病気のリスクを下げることができます。インプラント治療を考えている喫煙者の方は、これを機に禁煙してみてはいかがでしょうか。

歯みがきを10分以上しっかりする

インプラント治療のやり直しを防ぐためには、毎日の歯みがきをしっかりすることが重要です。これは、インプラント周囲炎を予防するためです。

インプラント周囲炎の発症は、プラークと深い関わりがあり、予防するためには毎日の歯みがきに時間をかけ、プラークをしっかりと落とすことが重要です。少なくとも10分以上は磨くようにしましょう。インプラント周囲炎を予防するために、毎日、自分で歯ブラシやフロス、歯間ブラシを使って念入りな口腔清掃を行うことが必要になってきます。

インプラントを長く使えるようにするためにも、インプラント周囲炎を予防することは非常に重要です。

定期的にメインテナンスを受ける

インプラントの異常を早期発見するため、治療がひと段落した後も定期健診に通いましょう。

インプラントは治療が終了したときから、噛む力とプラークの影響を受け続けます。そのため、インプラントを長く安全に使い続けるために、数か月に1回は異常がないか歯科医院で確認する必要があります。

定期健診では、具体的に以下のような項目を確認し、専門器具を用いた口腔清掃やかみ合わせの調整といった治療を行います。

  • インプラントの周りについたプラークの量
  • インプラント周りの粘膜の状態
  • インプラントの歯周ポケット深さ
  • インプラント体の動揺検査
  • X線写真撮影検査にてインプラント周りの骨の状態の確認
  • かみ合わせの検査
  • 歯ぎしり・食いしばりの有無の確認
  • インプラントを固定する部品に緩みや破損が生じていないか確認

インプラントは入れたら終わりという治療ではありません。早期に不具合の原因に対処し、より重大な不具合の発生を予防していくことが重要です。前述のインプラント周囲炎の予防のためにも、自宅でしっかりとしたケアを行い、通院して定期健診を受けることが重要です。

まとめ:インプラントのやり直しを防ぐために、正しい知識と選択を!

本記事ではインプラントのやり直し治療が必要になるケースや具体的な方法、やり直しの予防法について詳しく解説してきました。

インプラント治療がうまくいっていない場合、痛みやインプラントの揺れ、膿が出るなど、何らかの症状がでることが多いです。そのため、「何かおかしいな?」と違和感を感じたらすぐに歯科医院を受診しましょう。

インプラント治療のやり直しが必要となると、治療の難易度が上がるだけでなく、治療期間が長期化し、患者さんの肉体的負担・経済的負担が増えてしまいます。そのため、信頼できる歯科医院を選び、自分でできる予防策をしっかりと行い、インプラントを長持ちさせるようにしましょう。

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9.日本医師会 さあ禁煙を始めましょう!https://www.med.or.jp/forest/kinen/start/

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