総入れ歯を作ろうかと思っているけれど、ちゃんと噛めるのだろうか?見た目が不自然にならないかな?
総入れ歯にすることで起こりうるデメリットがあるなら、前もって知っておきたいですよね。
歯をすべて失ったときに選ばれる治療法のひとつが「総入れ歯」です。保険が適用されることも多く、比較的安価に作ることができるため、多くの人が利用しています。
実は、総入れ歯には噛みにくい、外れやすい、話しにくいなど、見落とされがちなデメリットがいくつか存在します。違和感や痛みでなかなか慣れないケースや、人前での会話や食事に支障を感じるという声も少なくありません。
本記事では、総入れ歯を検討する前に知っておきたいデメリットについて詳しく解説していきます。「知らなかった…」と後悔しないためにも、総入れ歯の現実をしっかりと理解したうえで、自分にとって最適な治療法を選びましょう。
ぜひこの記事を参考に、治療の選択肢についてじっくり考えてみてください。
総入れ歯のデメリット6つ
総入れ歯は多くの患者から選ばれる治療の一つですが、大きく6つのデメリットがあります。
- 噛む力が低下し固いものが食べづらくなる
- 安定しづらい
- 装着時に違和感が出やすい
- あごの骨がやせてしまう
- こまめな調整や修理が必要になる
- お手入れが必要になる
治療で後悔しないためにも、それぞれのデメリットについて把握しておきましょう。
噛む力が低下し固いものが食べづらくなる
総入れ歯を使用すると、噛む力が低下します。入れ歯を使用した場合、噛む力は自分の歯と比べて大幅に下がることがわかっており1、自分の歯の噛む力を100%とすると、総入れ歯では10~25%程度まで下がるとされています。
これは、総入れ歯が骨や歯に固定されておらず、歯ぐきの上に乗っているだけの構造であるためです。その結果、以下のようなことが起こります。
- しっかりとした支えがないため、入れ歯が動きやすい
- 入れ歯が動くことで噛む力が逃げてしまうため、固いものや弾力のある食べ物が噛み切れない
- 噛む力が歯ぐきに直接かかるため、痛みが出やすく強く噛むことができない
こういった要因が重なることで、自分の歯と比べて噛む力が低下し、固いものが食べづらくなります。
安定しづらい
総入れ歯は安定性に欠けるというデメリットがあります。繰り返しになりますが、総入れは固定式ではなく、歯ぐきの上に乗せて使う装置です。そのため、以下のような不安定さやストレスが起こることがあります。
- 食事中に入れ歯がずれたり浮いたりする
- 会話中や笑った時に入れ歯がずれて見た目に影響が出る
- 強くかんだ時に入れ歯がずれてしまいかみ合わせが不安定になる
特に下の総入れ歯は不安定になりやすいです。これは舌の動きや頬の力による影響を受けやすいためで、わずかな動作で簡単に入れ歯が浮いてしまうことがあります。
このような不安定さにより「話してる時に外れてしまったらどうしよう」「食事に集中できない」といった心理的ストレスにつながることもあります。
入れ歯安定剤の使用や吸着の良い設計によって、ある程度の安定性は確保できますが、根本的に粘膜支持という構造的限界があるため、インプラントによる固定式義歯と比べて安定性は劣ります。
装着時に違和感が出やすい
総入れ歯は装着時に違和感が出ることがあります。特に保険適用の総入れ歯は約2〜3mm程度の厚みがあり、この厚みによって、以下のようなデメリットを引き起こします
- 口の中に大きなものが入るため、異物感や違和感が出ることがある
- 上あごを総入れ歯が大きく覆っていると、食べ物の温かさや冷たさといった温度が伝わりにく、食事を楽しめなくなる場合がある
- 厚みのある入れ歯を使用することで舌の動かせる範囲が狭くなり、発音がしづらくなる場合がある
口の中の感覚は非常に繊細なため、1mmよりも細い髪の毛が入っただけでも異物感を感じます。入れ歯を使用していくうちに慣れていく人もいますが、装着時に異物感や違和感が出やすいことはデメリットの1つです。
あごの骨がやせてしまう
総入れ歯を長期に渡り使っていると、顎の骨がやせていきます。総入れ歯を使用し続けることで、顎の骨の吸収が進むことがわかっています2。
総入れ歯で骨吸収が起こる理由には、以下のようなものがあります。
- 骨に刺激が伝わらなくなるから
- 総入れ歯が合っていないから
骨に刺激が伝わらなくなるから
骨の形や強度は、骨に加わる力によって変化していくという法則があります。歯やインプラントは、噛む力を直接骨に伝えるため、骨が刺激されて維持されます。
しかし、総入れ歯は粘膜の上にのっかっているだけの構造であり、骨に十分な刺激が伝わりません。その結果、骨が「使われていない」と判断され、少しずつ吸収されていきます。
総入れ歯が合っていないから
総入れ歯が合っていないと骨の吸収が進む原因となります。総入れ歯が合っていない状態で使い続けると、噛む力が歯ぐきの一部に集中してしまいます。こうした局所的な圧迫が顎の骨にダメージを与え、骨吸収を促進する可能性があります。
また、骨吸収が進むと、義歯と歯ぐきの間にすき間ができてさらに合わなくなってきます。合わない義歯を使い続けると、義歯のががたつきが強くなり、歯ぐきへの局所的な負担が増えてしまい、ますます骨吸収が進むという悪循環に陥る可能性があります。
こまめな調整や修理が必要になる
総入れ歯は一度作ったら終わりというものではなく、定期的な調整や修理、再製作が前提になってきます。
これは以下のような理由からです。
- 顎の骨が年々やせていくため
- かみ合わせが変わってくるため
- 入れ歯の破損や劣化が起こるから
顎の骨が年々やせていくため
総入れ歯を使用していると、顎の骨が吸収されていきます。これにより時間とともに入れ歯と歯茎の間に隙間ができてしまうため、合わなくなってきます。そのため、入れ歯が緩くなってきた場合は、適切な調整や隙間を埋める処置が必要になってきます。
かみ合わせが変わってくるため
入れ歯の長期使用でかみ合わせの高さや位置が変化し、口全体のバランスが崩れることがあります。これは、骨や粘膜の変化に加え、入れ歯自体の歯がすり減っていくことでも起こります。
こうした場合はかみ合わせの調整や人工歯の交換、場合によっては再製作が必要になることもあります。
入れ歯の破損や劣化が起こるから
入れ歯は衝撃や過度な力によって、破損することがあります。特に保険適応の入れ歯は経年劣化が起きやすく、人工歯がとれてしまったり、入れ歯のひび割れが生じることがあります。修理で対応できるケースもありますが、破損具合によっては再製作が必要になることがあります。
このように、総入れ歯は月日とともに変化する顎や粘膜、素材の経年劣化に合わせてこまめなメンテナンスが必要です。
特に顎の骨の吸収が早い方では、短期間に何度も調整が必要となる場合もあり、通院の頻度が増えてしまい負担が大きくなる可能性もあります。
また、修理や調整では対応できない場合は再製作が必要となります。一般的には数年おきに作り直しが必要となるケースが多いため、患者さんにとって、経済的・心理的な負担になりうる点に注意が必要です。
お手入れが必要になる
総入れ歯は、毎日のお手入れが必要不可欠です。清掃が必要な理由は以下の通りです。
- 細菌の繁殖を防ぐため
- 入れ歯の変色・劣化を予防するため
細菌の繁殖を防ぐため
入れ歯は、その構造や使用環境から細菌や真菌が繁殖しやすい装置です。入れ歯の素材であるレジンは表面に小さな穴が空いており、細菌や汚れが付着しやすく一度付着すると除去しにくいという性質があります。
入れ歯を日常的に適切に清掃しないと、以下のような問題が生じます。
- 細菌の増殖による強い口臭
- 粘膜の炎症(義歯性口内炎)
- 真菌(特にカンジダ菌)による赤いただれや不快感
高齢者や免疫力が低下している方では、カンジダ性口内炎のリスクが高くなり、痛みや食事のしづらさ、義歯の使用困難につながることもあります。
したがって、入れ歯は毎日取り外して洗浄する必要があり、必要に応じて義歯洗浄剤に浸け置くなど、清掃とケアを欠かすことができません。
入れ歯の変色・劣化を予防するため
適切な適切に洗浄しないまま使用を続けると、入れ歯の人工歯や床が変色・着色してしまうことがあります。
特に、以下のようなものが変色の原因となります。
- たばこのヤニ
- コーヒー、お茶、ワインなどの飲み物による着色
- カレー、チョコレートなど食べ物による着色
こうした変色・着色は見た目の清潔感や審美性を損ねる原因になります。
このように、入れ歯は毎日取り外して流水下でブラシ清掃し、さらに専用の義歯洗浄剤に浸け置くといったケアが必要になります。
特に、高齢者や認知機能が低下している方、手の力が弱い方にとっては、こうした毎日のケアが負担となる場合があります。
総入れ歯で失敗したくない人へ!デメリットを回避するためにできること
総入れ歯のデメリットは、事前に回避する方法があります。
- 定期健診に通う
- 正しいお手入れ行う
- 食事を工夫する
- より安定する治療法を検討する
以降で詳細についてみていきましょう。
定期健診に通う
総入れ歯に大きな問題を感じなくても、定期的な歯科健診に通いましょう。痛みや不快感がない場合でも、知らないうちに入れ歯が合わなくなっていたり、かみ合わせがずれていたりすることがあります。
これは先述の通り、骨の吸収や粘膜の変化によって、時間とともに口の中や入れ歯の状態が変わっている場合があります。
健診では、必要に応じて内面の調整や咬合調整を行い、快適な状態を維持することができます。もし調整で対応できないほど不具合が大きい場合は、再製作が必要になることもあります。大きなトラブルを未然に防ぐためにも、症状がなくても半年〜1年に一度は健診を受けるようにしましょう。
正しいお手入れ行う
総入れ歯は、毎日の清掃が必要です。入れ歯のケアを怠ると、口臭や義歯性口内炎などの粘膜トラブルの原因になります。
また、入れ歯自体の劣化・着色にもつながるため、正しいお手入れを行うことで、入れ歯を衛生的に、長持ちさせられます。
お手入れのポイントは、以下の通りです。
- 食事のたびに水またはぬるま湯を使って洗浄する
- やわらかい義歯用ブラシや歯ブラシを用いて、内側のくぼみや歯の周りをしっかりこすり、汚れを取り除く
- 定期的に専用の義歯洗浄液に漬けおきする。漬けおき後は洗浄液をブラシと水でよく落とす
- 就寝中は基本的に外して歯ぐきを休める(医師の指示がある場合を除く)
- 落下による破損を防ぐために、洗面時は水を張るかタオルを敷くなどの工夫をする
また、お手入れの際には以下の点に注意しましょう。
- 入れ歯の材質が劣化するため、熱湯や漂白剤は使用しない
- 入れ歯に傷ができる原因となるため、歯磨き粉で磨く、固い歯ブラシやスポンジを使う、ゴシゴシこすることはしない
毎日の手間にはなりますが、こうした丁寧なケアが入れ歯のトラブル予防につながります。
食事を工夫する
総入れ歯を使うときは、食事の形態を工夫することで食事のストレスを減らすことが可能です。総入れ歯は、天然の歯に比べて噛む力が大きく低下するため、自分の歯と同じレベルで食事することが難しくなります。
特に硬いものや粘り気のある食べ物は、噛みにくかったり、入れ歯がずれたりする原因になることがあります。
食事を快適にするための工夫には、次のようなものがあります。
- 食べ物を小さく切るなどして一口サイズにし、大きすぎないようにする
- 火を通す時間を長くするなどして、柔らかく調理する
- 前歯で食べ物を噛み切らないようにし、左右の奥歯で均等に噛むようにする
- 粘着質なものや、繊維が多い食べ物、硬い食べ物を避ける
慣れてくると、ある程度は様々なものが食べられるようになりますが、工夫と慣れが必要な点もあらかじめ理解しておくと良いでしょう。
さらに安定する治療法を検討する
上記の総入れ歯のデメリットが受け入れられない場合は、さらに安定性の高い治療を検討するのも一つの手です。具体的には、以下のようなインプラントを併用した治療法になります。
インプラントオーバーデンチャー
インプラントオーバーデンチャーは、数本のインプラントを顎の骨に埋入し、それを支えにして着脱式の入れ歯を安定させる治療法です。これにより、入れ歯はインプラントにはめ込むように装着することが可能で、使わないときには自分で取り外せます。
インプラントオーバーデンチャーのメリット・デメリットは、以下の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
総入れ歯よりも動かない・外れにくい 噛む力が格段に向上し、食べられるものが増える 清掃やメンテナンスは、入れ歯を外して行える 骨の吸収をある程度抑制できる |
外科手術が必要で身体への負担が大きい 費用が総入れ歯より高額になる |
オールオン4
オールオン4とは、片顎に4〜6本のインプラントを埋入し、その上に取り外し不要な固定式の義歯を装着する治療法です。見た目・使用感ともに、天然歯に近い状態が得られます。
オールオン4のメリット・デメリットは、以下の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
取り外しが不要で、ストレスが少ない 食事や会話の際も、非常に高い安定感 天然歯に近い審美性と機能性 適切な力が骨に伝わりやすく骨吸収を抑制できる |
外科手術が必要で、身体への負担がやや大きい 清掃方法がやや複雑で、歯科医院での定期クリーニングが必須 非常に高額(数十万円〜数百万円) すべての患者さんに適応できるわけではない |
オールオン4について詳しく知りたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。
インプラントを併用した治療は外科手術を伴い、また費用も高額になります。そのため、かかりつけの歯科医師とよく相談し、ご自身の口腔内の状態や予算、生活スタイル、希望に合った選択をすることが重要です。
総入れ歯の治療を検討しているなら永田歯科医院へ
永田歯科医院は「入れ歯であっても美しく、しっかり噛める」を叶えるために、患者様に適した治療をご提案します。
当院の総入れ歯治療には、以下の特徴があります。
- 入れ歯の「専門家」による治療
- 基本に忠実な作製工程
- 豊富な種類の入れ歯を提供
- 「歯科技工士」との密な連携
装着感や予算、審美性などの希望から逆算して、最適な提案が可能です。
なお、患者様に必ずしも総入れ歯が適切とは限りません。当院はオールオン4やインプラントなど、幅広い治療を専門医が行います。
無料で相談やカウンセリングが可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
【参考文献】
1.S. Yamashita et al, Relationship between oral function and occlusal support in denture wearers. J Oral Rehabil. 2000 Oct;27(10):881-6. PMID: 11065023 DOI: 10.1046/j.1365-2842.2000.00602.x
2.Arwa Alsaggaf et al, A case control study to investigate the effects of denture wear on residual alveolar ridge resorption in edentulous patients. J Dent. 2020 Jul:98:103373. doi: 10.1016/j.jdent.2020.103373. Epub 2020 May 8. PMID: 32389732 DOI: 10.1016/j.jdent.2020.103373
まとめ:総入れ歯のデメリットは回避できる
総入れ歯は、歯をすべて失った方にとって有効な選択肢のひとつですが、以下のようなデメリットが存在します。
- 噛む力が弱まり噛みにくい
- 安定しずらい
- 違和感が出やすい
- 骨がやせていく
- 調整や修理が必要
- 念入りなお手入れが必要になる
特に、「噛む力の低下」「安定性の不安定さ」「手入れの手間」などは、日々の生活に直結する問題です。こうしたトラブルを回避するには、以下の3つの対策が大切です。
- 定期的な調整・検診を受ける
- 毎日の正しい清掃と管理を欠かさない
- 食事や使い方のちょっとした工夫を取り入れる
それでも総入れ歯が受け入れられない場合は、インプラントオーバーデンチャーやオールオン4といった、インプラントを併用した治療が選択肢に入ります。これらは、費用や外科手術のリスクが伴うものの、快適性や安定性を大幅に高められる治療法です。
重要なことは、歯科医師としっかり相談しながら、ご自身の口腔内の状態や予算、生活スタイル、希望に合った選択をすることです。本記事が治療法を選ぶ際に、ぜひ参考にしてください。

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