総入れ歯と聞くと、高齢者に多いと思われるかもしれません。しかし、20代といった若者でも可能性がゼロというわけではないです。
もちろん、割合としては決して多くありません。非常に特殊なケースではあるものの、歯がボロボロ、もしくはなくなってしまった場合にできる施術の一つが総入れ歯です。
本記事では、20代で総入れ歯になる主な原因をはじめ、治療法としてのメリット・デメリット、費用相場までをわかりやすく解説します。
20代で総入れ歯になる7つの原因
総入れ歯=高齢者の治療」というイメージが強いかもしれません。
しかし、厚生労働省の歯科疾患実態調査や各種疫学研究でも、20代で複数歯を喪失するケースは一定数存在し、特殊ではあるものの現実的な選択肢になる場合があります。
ここでは、20代で総入れ歯になる主な原因を7つに分けて解説します。
- 重症化した虫歯を長期間放置している
- 歯周病が悪化した
- 歯磨きの習慣がない
- 歯に強い衝撃を受けた
- 無意識に歯ぎしりの癖がある
- 外胚葉異形成症で生まれつき歯がない方などの先天性疾患がある
- 侵襲性歯周炎などの特殊な歯周炎に罹患している
重症化した虫歯を長期間放置している
虫歯は初期のうちに治療すれば、数回の通院で改善できます。しかし、放置すると歯の神経や根にまでダメージが及び、最終的に抜歯が必要になることがあります。
虫歯は自然に治ることはありません。一度できると治療するまで進行し続けるのが特徴です。
痛みが一時的に引いても、それは歯の神経が死んでしまうことが原因であり、放置すればさらに深刻な状況になる可能性もあります。
特に20代は、仕事や学業の忙しさ、費用面などから歯科受診を先延ばしにしがちです。
その結果、気付かないうちに虫歯が悪化し、複数の歯を抜かざるを得なくなるケースもあります。「そのうち行こう」と思っているうちにも症状は進行するため、違和感を覚えたらできるだけ早く歯科医院に相談しましょう。
歯周病が悪化した
歯周病は、近年では若年層の発症も増加しています。
厚生労働省「歯科疾患実態調査(令和4年)」によれば、20〜24歳で21.2%、25〜29歳で31.6%の人に4mm以上の歯周ポケットが認められました。
これは欧米の若年層データと比較しても高い割合であり、日本の若年層が歯周病リスクを抱えていることを示唆しています。
歯周病は初期の自覚症状がほとんどなく、気付いたときには歯を支える骨が溶けていることも少なくありません。特に、虫歯と同時進行すると、歯の喪失スピードはさらに早まる傾向があります。
歯磨きをしていて出血があったり、口臭が気になったりする方は、すでに歯周病が進行している可能性もあります。早期治療につなげるためにも、定期的な歯科検診を心がけることが大切です。
歯磨きの習慣がない
歯磨きの習慣が身についていないと、歯垢が蓄積しやすくなり、歯肉炎や歯周病の原因になります。
特に、幼少期から正しいケアをしてこなかった場合、20代の時点ですでに歯ぐきの炎症や虫歯のリスクが高まっていることもあります。
たとえば、朝は忙しくて磨かずに外出し、夜も疲れてそのまま寝てしまうような生活を続けていると、歯や歯ぐきへのダメージが蓄積されます。こうした状態が続くと、知らないうちに複数の歯が抜歯対象となり、ブリッジや部分入れ歯では対応できなくなるケースも少なくありません。
日頃の正しい歯磨きの積み重ねが、将来的に自分の歯を守る大切な習慣になります。
歯に強い衝撃を受けた
事故や転倒、スポーツ中の衝突など、外部からの強い衝撃によって歯が折れたり抜けたりすることがあります。こうした外傷は予期せずとも起こり得るため、完全に防ぐことが難しい場合もあるでしょう。
損傷の程度によっては抜歯が必要となり、失った歯の本数が多い場合には総入れ歯を選択せざるを得ないケースもあります。
歯の喪失は、見た目や噛む力など、生活への影響も大きいため、外傷後はできるだけ早く歯科を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
無意識に歯ぎしりの癖がある
歯ぎしりは、就寝中をはじめ、無意識のうちに起こることが多く、自分では気付きにくいのが特徴です。長期間にわたって強い力が歯に加わり続けると、歯のすり減り(咬耗)やひび割れ、破折といったダメージが蓄積され、歯の健康を大きく損なう可能性があります。
歯ぎしりが原因で歯にひびが入り、そこから虫歯や歯周病が進行することもあります。朝起きたときにあごの疲労がある、家族から「歯ぎしりしているよ」と指摘された経験があるなら、注意が必要です。
歯ぎしりがある場合は、早めに歯科を受診し、マウスピースの使用などの対策が有効です。
外胚葉異形成症で生まれつき歯がない方などの先天性疾患がある
出生10万人あたり1〜7人という推定の割合で、外胚葉異形成症と呼ばれる症状で先天的な歯の欠如が見られるケースもあります。
外胚葉異形成症(ED)とは、歯や毛髪、爪、汗腺などの外胚葉組織に形成異常を認めるまれな疾患の総称です。最も一般的とされる無汗性外胚葉異形成症は、全体の約85%を占めるとされています。
症例の90%がEDA、EDAR、EDARADD、WNT10Aという遺伝子のいずれかが変異し起こり、下記のような特徴が見られます。
- 歯がほとんど無い(または完全に無い)
- 髪がまばらで細い
- 汗をかきにくい
こうした症状の場合、専門的な歯科医院による診断が非常に重要です。ケアを含めた、慎重かつ綿密な診断と治療計画を立てていく必要があります。
侵襲性歯周炎などの特殊な歯周炎に罹患している
一般的に歯周病は年齢が高くなればなるほど感染しやすくなる傾向にありますが、若年層も罹らないわけではありません。
特に重症化しやすい侵襲性歯周炎は「若年性歯周炎」とも呼ばれるほど、10代や20代でも発症します。発症する主な原因として、特異性のある細菌の存在や遺伝的要因が考えられています。
侵襲性歯周炎の特徴を以下にまとめました。
- 30歳以下の若年層で発症する
- 家族が同様に発症する可能性がある
- 骨吸収のスピードが速い
- 一般的な歯周病治療では治らないケースが多い
- 特定の部位に発症する
- 全身的病歴との関連性が低い
日本人が発症する割合は高くありませんが、こうした歯周病が原因で歯がなくなってしまい、総入れ歯になるケースもあります。
なお、侵襲性歯周炎の場合、専門的かつ高度な治療が可能な歯周病専門の歯科医院に相談しましょう。
20代で総入れ歯にする4つのメリット
総入れ歯というと、マイナスのイメージを持たれやすいものの、メリットもあります。特に、20代のうちに治療に踏み切ることで、身体的・経済的な負担を軽減できる場合も少なくありません。
ここでは、20代で総入れ歯を選ぶことで得られる、4つのメリットを紹介します。
- 費用の負担を小さく抑えられる
- 外科手術が不要になる
- 毎日のお手入れが楽になる
- 治療期間が比較的短い
費用の負担を小さく抑えられる
総入れ歯は、治療法の中でも比較的費用を抑えやすいのが特徴です。
特に、保険が適用される場合、自己負担額は1万〜1万5千円程度とされており、経済的な負担は大きく軽減されます。
一方、インプラント治療では、1本あたり30万〜50万円程度の費用がかかることもあります。複数本の治療が必要になると、総額で100万円を超えることも珍しくありません。
20代はまだ収入が安定していない時期であり、学費や生活費などの出費がかさむことも多いでしょう。そうした状況でも無理なく治療を受けられる手段として、保険適用の総入れ歯は現実的な選択肢ともいえます。
外科手術が不要になる
総入れ歯の治療では、インプラントのような外科手術が必要ありません。そのため、身体への負担が少なく、安心して治療を進めやすいというメリットがあります。
特に、持病がある方や、妊娠中で外科処置が難しい方にとっては、メスを使わずに治療できる点はポイントです。また、術後の腫れや痛みが少ないため、日常生活への影響も抑えられるでしょう。
さらに、外科手術に対して精神的な不安が大きい方や、治療に踏み出せず先延ばしにしてしまう方にとっても、総入れ歯はハードルが低く比較的取り組みやすい治療法といえます。
「できるだけ早く治療を終えたい」「体に負担をかけずに歯の機能を取り戻したい」と考えている方にとって、総入れ歯は現実的で安心感のある選択肢となるでしょう。
毎日のお手入れが楽になる
総入れ歯は、日々のお手入れが比較的楽なのも魅力です。取り外し式のため、就寝前に外して水洗いや専用の洗浄剤でケアをするだけで、清潔な状態を保ちやすくなります。
インプラントやブリッジは、口の中に固定されているため、細かい部分のブラッシングや定期的なメンテナンスが欠かせません。その点では、総入れ歯は取り外して丸洗いができるため、衛生的な管理もしやすいでしょう。
インプラントよりもケアの負担が少ない点は、メリットの一つといえます。
治療期間が比較的短い
総入れ歯は、他の治療方法に比べて完成までの期間が短いのが特徴です。保険診療の範囲であれば、型取りから装着までおよそ2週間〜1か月程度が一般的な目安とされています。
たとえば、インプラント治療の場合、カウンセリングや手術、治癒期間なども必要になり、治療完了までに半年〜1年ほどかかることもあります。その点、総入れ歯なら比較的早く「噛める状態」に戻すことが可能です。
仕事や学業の都合で長期間の通院が難しい方や、できるだけ早く食事や会話を楽しみたい方にとって、治療期間の短さは大きな利点といえるでしょう。
20代で総入れ歯にするデメリット
総入れ歯には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットもあります。
特に、20代という若さで使用する場合は、見た目や機能性、将来的なメンテナンスの負担なども含めて慎重に検討する必要があるでしょう。
ここでは、20代で総入れ歯にする際の、代表的なデメリットを紹介します。
- 噛む力が弱くなることがある
- 噛み心地が悪くなりやすい
- 審美性に限界がある
- 汚れや臭いの原因になりやすい
噛む力が弱くなることがある
総入れ歯は、天然歯と比べると噛む力が弱くなる傾向があります。一般的には、天然歯の約2割程度の咀嚼力といわれており、固いものや粘着性のある食品が食べにくいと感じる方も少なくありません。
たとえば、煎餅やステーキ、ガムなどを食べる際に「噛みにくい」「外れそうで不安」と感じることもあるでしょう。食事の幅が狭まることで、栄養バランスや生活の質に影響する可能性もあります。
特に噛む力の低下は、保険適用の入れ歯で起こりやすいとされています。対策としては、自費診療でフィット感に優れた素材の選択、歯科での定期的な調整が有効です。
噛み心地が悪くなりやすい
総入れ歯は、歯茎に吸着させて装着する構造のため、噛み心地が天然歯とは異なります。しっかり噛んでいるつもりでも、力がうまく伝わらず、慣れるまで違和感を覚えることもあるでしょう。
特に、保険診療で作る総入れ歯は、使用できる素材や厚みに制限があるため、密着性や安定感に限界があります。食事中にずれたり、会話中に浮いてしまったりするケースもあり、外出先や人前で不安を感じることも。
装着時の違和感が強いと、噛むことを避けるようになり、食事量が減って栄養バランスが崩れる可能性もあります。総入れ歯を快適に使い続けるには、装着後の調整を受けたり、自費診療で精密に作製したりすることも検討するとよいでしょう。
審美性に限界がある
保険適用の総入れ歯は、使える素材や作製工程に制限があるため、見た目の面で満足できないケースもあります。
特に、歯ぐきにあたる部分は厚めに作られることが多く、口元に不自然な膨らみを感じることがあります。
また、人工歯の色や形も画一的になりやすいため、自分の顔立ちや表情に合わないと感じる方もいるでしょう。
「金属床」と呼ばれるタイプでは、歯茎に接する部分を金属で作製しているため、口を開けたときに金属が見える可能性もあります。耐久性や装着感には優れているものの、見た目が気になるという方も多いです。
審美性を重視したい場合は、自費診療による素材選びやデザインの自由度を活かした総入れ歯を検討するのも選択肢の一つでしょう。
汚れや臭いの原因になりやすい
保険診療の総入れ歯で使用されるレジン素材は、吸水性が高く、唾液や食べかすを吸い込みやすい特性があります。そのため、長く使用しているうちに、汚れや臭いが気になりやすくなるのが難点です。
ケアが不十分な状態が続くと、表面に細菌が繁殖しやすくなり、口臭や口内炎の原因になることもあります。
また、表面がきれいに見えても、内側に汚れがたまっていることもあるため、毎日の洗浄やメンテナンスが欠かせません。
汚れや臭いが気になる場合は、必要に応じて、吸水性の低い自費の素材に切り替えるのも有効な対策といえるでしょう。
総入れ歯とインプラントの違い
総入れ歯とインプラントは、どちらも失った歯を補う治療法ですが、構造や治療内容に大きな違いがあります。
総入れ歯は、歯ぐきに吸着させて使用する、取り外し式です。外科手術が不要で費用を抑えやすく、比較的短期間で治療を終えられる点が特徴です。
ただし、噛む力が弱くなったり、慣れるまでは異物感を感じたりすることもあります。保険診療の場合は、審美性に限界がある点も懸念点といえます。
インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を固定する治療法です。見た目や噛み心地は天然歯に近いものの、外科手術が必要で費用や治療期間がかかります。
20代の場合は、将来の再治療の有無やライフスタイルの変化も考慮したうえで、慎重な判断が求められるでしょう。
20代で総入れ歯にするとかかる費用相場
総入れ歯の費用は、保険診療か自費診療かによって大きく異なります。保険が適用される場合、自己負担額はおおよそ1万〜1万5千円前後とされており、経済的な負担は比較的軽く済むのが特徴です。
一方、自費診療では素材や設計の自由度が高く、費用は20万〜100万円前後が相場とされています。審美性や装着感にこだわりたい方に向いていますが、そのぶん費用は高額になりやすいでしょう。
20代で総入れ歯にする際は、長期間使う可能性が高いため、目先の価格だけでなく将来的な使いやすさも含めて検討することが大切です。
20代で総入れ歯にする前に知っておきたい注意点
総入れ歯にしてから後悔しないためには、事前に注意点をしっかり把握しておくことが大切です。
20代で総入れ歯を検討する場合は、残せる歯があるかどうかを正確に診断してもらう必要があります。抜歯の可否は、医師と相談しながら慎重に判断しましょう。
また、保険適用と自費診療では、使用できる素材や見た目、装着感などに大きな違いがあります。費用だけでなく、ライフスタイルや希望に合うかどうかもふまえて、納得して選択することが求められます。
総入れ歯の製作には、咬み合わせや顎の形など、細かいデータの正確な把握が欠かせません。経験豊富な歯科医師が在籍し、丁寧にカウンセリングしている医院を選ぶと安心です。
20代での総入れ歯に関する悩み相談は永田歯科医院へ
「まだ20代なのに、総入れ歯にするのか……」
「総入れ歯以外の選択肢はないのだろうか……?」
こうした不安を抱えている方は、専門的な知識と実績を持つ歯科医院に相談することが大切です。
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「どの治療が自分に合っているかわからない」「20代で最適な治療を選択したい」という方は、ぜひ一度永田歯科医院にご相談ください。
まとめ:20代でも総入れ歯になる原因は多くある
総入れ歯は、高齢者だけが対象の治療ではありません。20代でも虫歯や歯周病、外傷などをきっかけに、総入れ歯を選択せざるを得ないケースもあります。
総入れ歯は、費用を抑えやすく治療期間が比較的短いこと、外科手術が不要なことなど、いくつかのメリットがあります。一方で、噛む力や見た目の自然さといった面においては、注意点や懸念点も少なくありません。
後悔のない治療を選ぶためには、信頼できる歯科医院でしっかりと相談し、自分に合った方法を見極めることが重要です。

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