インプラント治療を考えているけれど、高齢になってから困ったことにならないか心配……
インプラント治療をするなら、いつまでも健康な状態で使い続けていきたいですよね。
歯を抜くことになった場合、入れ歯やブリッジ、インプラントのいずれかを選んで治療することになります。インプラント治療は周りの歯を削ることも取り外しの必要もなく、見た目がよく、しっかり噛むことができるという利点があります。
昔と比べて現在の平均寿命は延び、女性は87.14歳、男性は81.09歳と年々長寿になりつつあります。しかし、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を指す健康寿命は、女性は75.38歳、男性は72.68歳と言われています。
将来のことを考えた時、自分の老後は要介護や寝たきりになってしまうのでは?と心配に思っている方も多いのではないでしょうか。寝たきりや要介護になってしまって、インプラント治療を受けた後、老後に悲惨なことになるのでは?と不安に感じている方もいるかもしれません。
この記事では、インプラント治療における老後のデメリットについてご紹介します。どんなデメリットがあるのか、そしてデメリットを予防するにはどのようなことに気をつけたらよいのか、わかりやすくポイントをお伝えしていきますので、インプラント治療を検討する際に参考にしてください。
インプラントの老後は悲惨!?起こりうる4つのデメリット
インプラント治療をすると、老後にはどのようなデメリットが起こりうるのでしょうか。
ここでは、大きく4つの要素に分けて紹介します。
- 念入りなお手入れや定期的な通院ができなくなる可能性がある
- インプラント周囲炎になる可能性がある
- かみ合わせの変化やインプラントの破損が起こる可能性がある
- 除去が必要になった時に除去できないかもしれない
念入りなお手入れや定期的な通院ができなくなる可能性がある
インプラントは、自分の歯と同様、継続的な念入りなお手入れが必要です。しかし、さまざまな事情で老後はお手入れをするのが難しくなるケースがあります。
たとえば、認知症を発症した場合、以下のような可能性があります。
- 歯磨きという行為自体ができなくなる
- 口の中をきれいにするという行動そのものが理解できなくなる
- 決まった時間に歯を磨くといった習慣ができなくなる
- 他の人に歯磨きをしてもらう場合、歯磨きを嫌がるようになる
他にも、老後には以下のようなことが起こることもあります。
- 加齢により手の動きが悪くなり、歯みがきに伴う細かい動作ができなくなる
- 脳梗塞の後遺症などで身体に麻痺が出た場合、歯を磨く、うがいをするといった動作が難しくなる
- 長期にわたり入院することになった
- 寝たきりになってしまった
いずれの場合も、老後に自分自身で口の中の掃除をするのが困難になるというデメリットが起こります1。
また、上記のケースを含め、老後はかかりつけの歯科医院に通院することが困難になることが多く、メインテナンスを受けられなくなってしまうことがあります。
インプラント周囲炎になる可能性がある
老後に十分な口腔清掃ができなくなることで、インプラント周囲炎になる可能性があります。口の中の汚れが落としきれていないと、インプラントの周りに歯垢(プラーク)がついた状態が長く続き、歯垢に含まれるばい菌によってインプラント周囲炎と言って歯周病のような状態になります2。
インプラント周囲炎になると、以下のようなことが起こります。
- 歯茎や骨といったインプラントの周りの組織に炎症がおきる
- 進行とともにインプラントを支えている周りの骨が溶けていく
- 歯茎から血や膿が出る、痛みが出ることもありますが、慢性化すると強い自覚症状はほとんど出ないため、気づいた時には重症になっていることがある
- 進行が進むとインプラントを支える骨が溶けて失われ、インプラントの揺れや脱落を引き起こす
特にインプラントの周りの組織は、自分の歯よりもばい菌と戦う力が弱く、組織が壊されやすいため炎症が広い範囲に広がりやすいという特徴があります3。このため、インプラント周囲炎を予防するために、以下のことが必要です。
- 毎日、自分で歯ブラシやフロスを使って念入りな口腔清掃をおこなうこと
- 定期的にかかりつけ歯科医院に通院して問題がないか調べ、メインテナンスを受けること
特に老後は「念入りなお手入れが自力でできない」または「手入れ自体が困難になる」「通院自体ができない」といったことが起こりやすいため、インプラント周囲炎が進行してしまうケースが多くあります1。
かみ合わせの変化やインプラントの破損が起こる可能性がある
インプラント治療をして時間が経過してから、かみ合わせの変化やインプラントの破損が起こることがあります。
インプラントを入れるときは、口の中の全体のバランスを考えて適切な位置、かみ合わせで入れています。しかし、歯ぎしりや食いしばりといった習癖や、歯周病、歯が抜けた部分を放置することなどが原因でかみ合わせが変化していくことがあります。
特にインプラントは骨と強固にくっついており、クッション作用が乏しいため負荷がかかりやすく、周りの歯とのバランスをよく診査・診断して、定期的なかみ合わせの調整が必要になってきます。
また、老後はかかりつけ歯科医院でのメインテナンスを受けられなくなる可能性があります。
ンプラントに噛む力が集中しているのにも関わらず調整されない状態が続くと、インプラントに過剰な力がかかり続けてしまい、以下のようなトラブルが生じることがあります。
- インプラント周囲炎が急速に進行し、インプラントを支えている骨の吸収が進む
- インプラントの歯の部分が欠ける、壊れる
- インプラント内部の部品が緩む、壊れるなどしてインプラントが揺れるようになる
- インプラントの歯の部分が外れる
- 骨に埋まっているインプラントの土台の部分が折れる
- インプラントと反対側の歯が折れる、かぶせ物が壊れる
こういった場合は、インプラントの修理や調整といった適切な処置が必要になってきます。特にインプラント治療をして時間が経過してから起こるケースが多いため4 、特に老後は注意が必要です。
除去が必要になった時に除去できないかもしれない
インプラントの除去が必要になった時に、老後の身体の状態によっては処置が受けられない可能性があります。
インプラント周囲炎の進行により、周りの骨が溶けてインプラントが揺れるようになった場合や、経年劣化、過剰な力がかかってインプラントが壊れてしまった場合は、除去する必要が出てくるかもしれません。
インプラントを支える骨の吸収が大きい場合は引っ張って取り除くこともできますが、インプラント除去は基本的に局所麻酔を使用した外科手術になります。
そのため、以下のようなケースは除去がしたくてもできない可能性があります。
- 他に深刻な全身疾患がある場合や、年齢、飲んでいる薬の種類によっては除去手術の身体的負担が大きくなる
- インプラントの型番や構造などの詳しい情報が分からないと、除去のための専用の器具が使えず治療が困難になる
- インプラント治療を行ったかかりつけ医から別の歯科医院や訪問歯科診療に変更した場合、インプラントの除去に対応していないことがある
- 認知症になった場合、治療に対する拒否反応が出ることがあり、このような場合は治療を受けること自体が困難になる
インプラントの除去ができない場合は、投薬などの対処療法や経過観察をすることになります。
インプラント治療の老後のデメリットを予防する方法
インプラント治療で老後に起こりうるさまざまなデメリットを紹介しました。とはいえ、こうしたデメリットは、しっかりと予防していけます。
以降では、デメリットを予防する5つの方法を解説します。
- 自分でできるインプラント周囲炎予防を徹底する
- かかりつけ医での定期的なメインテナンスを受ける
- 自分のインプラントの詳しい情報を残しておく
- 日頃から健康に気を使う
- 訪問歯科治療を利用する
自分でできるインプラント周囲炎予防を徹底する
老後に歯を磨けない状態になるかもしれないため、今からしっかりお手入れをして、インプラント周囲炎予防を徹底することが大切です。
「インプラントの老後は悲惨!?起こりうる4つのデメリット」で述べたように、インプラント治療を受けた後はインプラント周囲炎の発症を予防していく必要があります。インプラントは骨に埋めてかぶせ物を作ったら終わり、という治療ではありません。
インプラント周囲炎は、細菌感染に伴う炎症性疾患であるため、歯垢(プラーク)の量を減らすために口腔清掃が必要不可欠となります。歯垢(プラーク)はバイオフィルムといって、多くの種類の細菌同士が集まって薬や免疫反応といった外からの働きから身を守る状態になっています。
この歯垢(プラーク)は、ねばねばして歯やインプラントの表面にこびりついているため、歯ブラシや歯間ブラシ、フロス、歯間ブラシといったお掃除道具を使ってお掃除する必要があります。
口の中のお掃除を徹底することは、自分の歯のむし歯予防、歯周病予防にもつながります。詳しいお手入れのやり方や、わからないことがあったら歯科医師や歯科衛生士に積極的に質問し、疑問に答えてもらいましょう。
かかりつけ医での定期的なメインテナンスを受ける
インプラント治療を受けてからも、定期的なメインテナンスを受けることは非常に重要です。
主な検査項目は、以下の通りです。
- インプラント周囲の歯周ポケットの検査、歯茎の腫れや出血、排膿の有無
- 歯垢(プラーク)が落としきれているかどうか
- インプラントに揺れがないかどうか
- X線写真撮影
- 食いしばり、かみ合わせの状態の確認
- 他の歯に虫歯や歯周病があるかどうかの診査
これらの検査でインプラント周囲の歯肉、支えている骨の状態に問題がないか確認することができます。また、かみ合わせの状態や、他の歯に虫歯や歯周病がないか検査することで口の中全体の確認もできます。
検査だけでなくインプラントの周りや自分の歯に残った歯垢(プラーク)や歯石を清掃してもらうことで、日々の生活で落としきれない汚れを落とすことができ、インプラント周囲炎、歯周病、虫歯の予防になります。
定期的に美容院に行くように、歯の定期健診も日常の習慣に取り入れると健康な状態を維持することにつながります。
自分のインプラントの詳しい情報を残しておく
老後はいつ何が起こるか予測できないため、万が一のことも考え、インプラントの詳しい情報を家族に伝える、または何らかの形で残しておいたほうが良いです。
インプラントメーカーは世界各国に100社以上、日本国内には30社以上存在し、とても数が多く、専用の器具も多岐にわたっています。そのため、かかりつけ医が変わった時に、インプラントの詳しい情報が残されていないと、どこの会社のインプラントを使ったのかを特定することが非常に難しくなり、治療が困難になってしまいます。
特に、老後は通院が難しくなることが多いため、老後の担当医がインプラント治療を行った歯科医師から変わってしまうケースがよくあります。そのため、いつ、どの部分を何本、どの歯科医院でうけたか、インプラントのメーカー、型式などの情報を残しておくと老後の治療時も安心です。
ここで役に立つのがインプラントカードです。日本口腔インプラント学会のホームページから無料でダウンロードすることができます。
インプラントカードのダウンロードはこちら
こちらのカードでは歯科治療の際に必要なインプラントの詳しい情報を漏れなく記載することが可能ですので、将来の歯科治療の際に歯科医師との連携がスムーズになります5。
日頃から健康に気を使う
老後になっても、健康な状態を保ち、自分の口腔清掃を行うことや歯科医院に通院することができれば、インプラント治療後に老後のデメリットを予防することができます。
したがって、寝たきりや認知症、フレイル(補足)を予防するために、今現在の日々の生活を見直してみることも大切です。令和元年版高齢者白書によると、介護が必要になる主な原因は認知症が最も多く、脳卒中、高齢による衰弱(フレイル)、骨折・転倒と続いています6。
ここで、認知症は生活習慣と深い関係があることがわかっており7、脳卒中を引き起こす主な原因は生活習慣による動脈硬化、高血圧です。そしてフレイルを予防するには栄養、身体活動、社会参加が3つの大きな柱となっています8。
これらの病気を予防するために、以下のような点を意識しながら日頃の生活を見直してみることが重要となってきます。
- 塩分や動物性脂肪を控えたバランスの良い食事を心がける
- タンパク質を意識して摂取する
- 禁煙する
- 多量飲酒を控える
- 歩く、筋トレをするなどの適度な運動をする
- ストレスをため込まないようにする
- 高血圧や糖尿病、肥満などの生活習慣病の予防、早期発見、治療を行う
- 聴力・視力の低下の確認、治療
- 趣味などの社会活動を行い、人と話す機会を増やす
これまで続けてきた生活習慣を大きく変えていくのは容易ではないので、できることから少しづつ始めてみてはいかがでしょうか。
(補足)フレイルとは?
日本老年医学が2014年に提唱した概念で、Frailtyの日本語訳である。加齢に伴うさまざまな機能変化や生理的な予備能力の低下によって健康障害を招きやすい状態のことをいい、健康な状態と要介護状態の中間に位置する9。
フレイルには、大きく3つの種類に分かれている。
- 筋力が衰え運動機能が低下する「身体的フレイル」
- 定年退職や配偶者の死別などで引き起こされるうつ状態や軽度の認知症の「精神的・心理的フレイル」
- 加齢に伴い社会とのつながりが薄れて生じる独居や経済的困窮状態の「社会的フレイル」
適切な治療や予防を行うことで再び健康な状態に戻る可能性がある7。
訪問歯科治療を利用する
もし「老後に要介護状態になってしまった」「施設に入ることになってしまった」場合は、訪問歯科診療の受診を検討してみるのがよいでしょう。
訪問歯科診療を利用する事で、以下のようなメリットがあります。
- 歯科医師や歯科衛生士が自宅や施設まで来てくれるため通院の必要がない
- 口腔清掃のプロである歯科衛生士は、特別なフロスや歯間ブラシ、専用器具を駆使して歯垢(プラーク)を落とすことができるため、自分で落としきれない汚れも綺麗にしてもらえる
- 設備や器具に制約はあるものの、持ち運び式のX線写真撮影機や切削機器を使用し、歯科治療を受けられる
また、老後にインプラントの問題が起きてしまった場合は、訪問対応インプラントマップの出番です。
こちらのサイトでは、訪問診療にてインプラントトラブルに対応可能な歯科医院を全国的に検索することができますので、インプラントに関連した治療の依頼や相談を考えている際に役立てることができます。
普段から健康に気を付けていても、老後に思わぬ病気になってしまったり、認知症を発症してしまったりすることがあるかもしれません。
そんな時でも、訪問歯科診療という形で、施設や自宅でメインテナンスを受けたり、歯のトラブルに対応したりすることができます。
まとめ:老後のインプラント治療はデメリットとメリットを理解して実施しよう
インプラント治療の老後のデメリットが起こるかどうかは、普段からお手入れが徹底できているかどうか、そして老後もお手入れや受診が継続できるかどうかによって大きく左右されます。
逆をいえば、老後も心身ともに健康な状態を維持することができれば、これらのデメリットは起こりづらいといえるでしょう。また、もし要介護状態になってしまっても、訪問歯科診療という選択肢があります。
老後に上記のデメリットが起こる可能性があると踏まえたうえで、かかりつけの歯科医師に相談し、自分が本当にインプラント治療を受けるかどうか考える際にお役立てください。
【参考文献】
1.和田誠大. インプラント治療を行った高齢患者の経過に関するアンケート調査. 日本口腔インプラント学会誌. 2013年26巻4号 p.717-722,
https://doi.org/10.11237/jsoi.26.717
2.Schwarz F et al, Peri‐implantitis. J ClinPeriodontol. 2018;45(Suppl 20):S246–S266, 10.1002/JPER.16-0350
3.Lindhe J et al, Experimental breakdown of peri-implant and periodontal tissues : a study in the beagle dog, Clin Oral Implants Res,3:9-16 1992, 10.1034/j.1600-0501.1992.030102.x
4.Papaspyridakos P et al. A systematic review of biologic and technical complications with fixed implant rehabilitations for edentulous patients. Int J Oral Maxillofac Implant 2012 ; 27 : 102-110
5.大久保力廣. 訪問歯科診療におけるインプラントのトラブル対応. 日本航空インプラント学会誌. 2018年31巻4号 p.259-278, https://doi.org/10.11237/jsoi.31.259
6.内閣府ホームページ 令和元年版高齢社会白書
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/zenbun/01pdf_index.html
7.Wahl D et al, Aging, lifestyle and dementia. Neurobios Dis. 2019 Oct:130: 104481 10.1016/j.nbd.2019.104481
8.厚生労働省 健康長寿に向けて必要な取り組みとは?100歳まで元気、そのカギを握るのはフレイル予防だhttps://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202111_00001.html
9.荒井秀典.フレイルの意義.日本老年医学会雑誌.2014年51巻6号 p.497-50
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_51_6_497.pdf

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