歯周病になっていて治療が必要だと言われたけれど、治療期間はどれくらいかかるのだろう?
歯周病治療を受けることになり、具体的な治療期間が気になっている人も多いのではないでしょうか。
歯周病の治療期間は、進行度によって変わります。軽度であれば、数週間から数か月と比較的短期間でひと段落することが多いですが、重症であればあるほど治療期間は年単位になり長期化していきます。
また、患者さんの状態や生活習慣が治療期間の長さに影響を及ぼすこともあります。逆を言えば、生活習慣を正すことで、治療期間を短くすることも可能なのです。
本記事では、進行度別の歯周病治療期間、治療期間に影響する要因、具体的な歯周病治療の流れや治療を短くするためにできることについて詳しく説明していきます。
歯周病治療をこれから受ける方も、受けている方も、ぜひ参考にしてください。
歯周病の進行度によって治療期間は変わる

歯周病の治療期間は、歯周病の進行度によって変わってきます。ここでは進行度別に、治療にどれくらいの時間がかかるのかを説明します。
また、本記事で歯周病と呼んでいる病気は、専門用語では「歯周炎」のことを指します。
なお、現在の国際的な診断基準では「ステージ」「グレード」を用いますが、本記事では分かりやすさのために「軽度・中等度・重度」という表現もあわせてご紹介します1。
歯肉炎(ステージⅠ)の場合|治療期間は数週間~数か月程度
| 治療内容 | 歯周基本治療(ブラッシング指導、歯石除去) |
|---|---|
| 治療費用 | 保険適用(3割負担)で3,000~5,000円 |
歯肉炎と呼ばれる状態で、歯ぐきの腫れや出血が見られます。この段階なら歯周基本治療を中心に進めることで、数週間から数か月ほどで改善が期待できます。早期に治療を始め、歯科医師の指導に沿って取り組めば、短期間で済むケースが多いです。
軽度歯周炎(ステージⅡ)の場合|治療期間は3か月~半年程度
| 治療内容 | 歯周基本治療(ブラッシング指導、スケーリング・ルートプレーニング) |
|---|---|
| 治療費用 | 保険適用(3割負担):5,000円~10,000円 自由診療:10,000~50,000円 |
軽度歯周炎では、歯を支える骨の破壊が始まり、歯と歯茎の間に歯周ポケットと呼ばれる深い溝が作られ始めます。
歯周ポケットの奥についた汚れを取り除くスケーリング・ルートプレーニングと呼ばれる治療が必要になってきます。自宅でのケアと通院を継続することが重要になってきます。
中等度歯周炎(ステージⅢ)の場合|治療期間は半年~1年以上
| 治療内容 | 歯周基本治療+歯周外科手術(フラップ手術など) |
|---|---|
| 治療費用 | 保険適用(3割負担):10,000円~50,000円 自由診療:50,000円~500,000円 |
中等度歯周炎では、歯を支える骨の破壊がさらに進み、歯ぐきの腫れや出血、歯のぐらつきや噛みにくさが出てきます。歯周基本治療を行った後に改善が見られない場合は歯周外科治療を行っていきます。
治療は、数か月ごとに再評価を繰り返しながら進められるため、半年以上かかるケースが多くなります。
重度歯周炎(ステージⅣ)|治療期間は1年以上
| 治療内容 | 歯周基本治療+歯周外科治療(抜歯を含む)+かみ合わせ治療(入れ歯、ブリッジ、インプラントなど) |
|---|---|
| 治療費用 | 保険適用(3割負担):20,000円~100,000円 自由診療:200,000円~ |
重度歯周炎は歯を支える骨が広範囲で破壊されている状態です。そのため、歯ぐきからの出血や排膿、歯の揺れが激しくなり、噛みあわせの異常が起こります。
歯を残すのが難しい場合でも、進行を止めて快適に噛めるようにすることが大きな目的となります。抜歯が選択肢に入ることも多く、より専門的な歯周病治療に加え、入れ歯やインプラントといったかみ合わせを回復する治療も行う場合があるため、治療期間が年単位に及ぶことが多いです。
歯周病の治療期間の長さに影響を及ぼす要因

歯周病の治療は、1回や2回で終わるものではありません。比較的長期にわたることが多いです。
ここで、歯周病の治療期間の長さに影響を及ぼす要因として、以下の4つが挙げられます。
- 患者さん自身の歯みがき習慣
- 定期的な通院の有無
- 生活習慣
- 糖尿病
順番に見ていきましょう。
患者さん自身の歯磨き習慣
患者さん自身の歯みがき習慣が適切でないと、治療期間が長くなってしまう可能性があります。
すべての治療ステージで、治療の効果を最大限発揮するためには、患者さん自身が日々の生活でいかにプラークを落とすことができるかどうかにかかっています。
これは、歯周病はプラークに含まれる細菌が大きな原因であるからです。プラークは歯ブラシやフロスといった清掃道具で落とすことができますが、磨き残しがあるとプラークに含まれる細菌が歯周病を引き起こし、悪化させるのです。
つまり、毎日のセルフケアでプラークをしっかり取り除けないと、十分な治療効果が得られず、結果的に治療が長引くことにつながります。
毎日のセルフケアがしっかりできる人ほど、治療期間は短く済みやすいのです。
定期的な通院の有無
歯周病の治療では、1回の処置だけで改善することは少なく、複数回の通院が必要になります。そのため、途中で通院をやめてしまうと、さらにプラークや歯石がたまったり、治療すべき部位が放置されてしまったりして、炎症が悪化してしまいます。
すると、せっかく始めた治療が無駄になってしまい、結果として治療期間が延びるだけでなく、病状がさらに進行する可能性もあります。歯科医師の指示通りに通院を続けることが、治療期間を短くし、再発を防ぐためにも重要です。
生活習慣
生活習慣の中には、歯周病を悪化させるものがあります。このような生活習慣があると治療効果が出にくくなるため、結果的に治療期間が長引く傾向があります。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 喫煙
- ストレス
- 食生活や運動習慣の乱れによる肥満
順番に見ていきましょう。
喫煙
喫煙は、歯周病の環境因子からみた最大のリスクファクターです。
喫煙者は、歯周病になりやすいことが数多くの研究からわかっており、喫煙者は非喫煙者に比べて2-8倍、歯周病になりやすいことが報告されています1。
タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は歯ぐきの血流を悪くし、免疫力を下げます。そのため、喫煙していると歯周病治療をしても効果が出にくく、傷の治りも遅くなります。その結果、治療期間が長引きやすくなります。
ストレス
ストレスは歯周病の重症化に影響を及ぼすことが知られています2。
強いストレスがかかると唾液の分泌が減り、細菌を洗い流す力や免疫力が低下します。また、ストレスによって生活習慣が乱れ、歯みがきをおろそかにしたり、睡眠不足や食生活の乱れ、歯ぎしり・食いしばりが増えることもあります。
その結果、歯周病原細菌が増えやすくなるため、歯周病の悪化や再発を招き、治療期間が長引くことがあります。
趣味や運動、十分な睡眠など、自分なりのストレス解消法を見つけて取り入れることが、歯周病治療をスムーズに進める助けになります。
肥満(食生活の乱れや運動不足)
肥満があると歯周病が悪化しやすいことがわかっています。
食生活の乱れや運動不足によって肥満になると、体の中で炎症が起きやすい状態になるため、歯周病の炎症も悪化し、歯を支える骨の破壊が進みやすくなります。その結果、治療後も再発リスクが高く、治療期間が長引く可能性があります。
糖尿病
糖尿病があると、歯周病の治療期間が伸びる原因となる可能性があります。
糖尿病は「歯周病の6番目の合併症」と呼ばれるほど歯周病と深い関わりがあります。血糖値が高い状態が続くと免疫力が低下し、歯ぐきの血流も悪くなるため、歯周病が進行しやすく、治療しても治りにくくなります3。その結果、再発リスクも高まり、治療期間が長引く大きな要因となります。
また、研究では歯周病の治療によって血糖値が改善することも報告されています4。そのため、糖尿病と診断されている方は、医師の指導のもとで血糖コントロールを行うことが、歯周病治療をスムーズに進めるためにも重要です。
補足:糖尿病の種類
糖尿病には、1型と2型の2種類があります。
| 1型糖尿病 | 免疫の異常やウィルス感染が原因で、膵臓からインスリンがほとんど出なくなってしまう病気。インスリンの自己注射が必要になる。 |
|---|---|
| 2型糖尿病 | 食べすぎなどの生活習慣や遺伝が原因でインスリンが効きづらくなる、相対的にインスリンが不足することによって血糖値が下げられなくなる病気。生活習慣病としての糖尿病は2型糖尿病のことを指します。 |
歯周病治療の具体的な流れ
歯周病治療の基本的な流れは、以下の通りです。
- 医療面接
- 歯周病検査
- 診断と治療計画立案
- 歯周基本治療
- 再評価検査
- 歯周外科治療
- 歯周組織検査
- 口腔機能回復治療
- 再評価検査
- メインテナンス
医療面接
まずは医療面接を行い、自覚症状の有無、全身疾患の有無、飲んでいる薬の種類、アレルギー、生活習慣を確認します。全身の病気の種類によっては、医師と連携して情報提供や全身の病気の管理を依頼することもあります。
歯周病検査
現在の口の中の状態や、歯周病の進行具合を把握するために、以下のような検査を行います。
| 口腔内検査 | 残っている歯の本数や治療されている歯の場所、歯ぐきの色や腫れ、磨き残しの量や場所など、口の中全体を把握します。 |
|---|---|
| 歯周組織検査 | プローブと呼ばれる専用器具を用いて、歯周ポケットを測定します。他にも、歯ぐきからの出血や歯の揺れ具合を検査し、歯肉の炎症と組織破壊の程度を把握します。 |
| X線撮影検査 | X線撮影検査を行い、歯を支える骨の吸収度合や歯の根っこの長さなどを診査します。 |
| かみ合わせの検査 | 噛んだ時の歯の接触の場所や、歯ぎしりや食いしばりの有無、噛む力の強さなどを診査します。 |
歯周病診断
医療面接と検査の情報をもとに、歯周病のステージとグレードを診断し、治療計画を立案します。患者さんにしっかりと説明し、同意を得てから治療を開始します。
歯周基本治療
歯周基本治療の目的は、歯周病を引き起こした原因を取り除き、歯周病を悪化させる要因を把握し改善させることです。具体的には、以下のような処置が含まれます。
- 正しい歯みがきの方法を身につけるための指導
- 歯石の除去(スケーリング・ルートプレーニング)
- 虫歯の治療
- 不適合なかぶせ物、詰め物のやり直し
- 噛み合わせの調整
- 状態が良くない歯の抜歯
- 禁煙指導
これらの治療によって、歯周病がこれ以上悪化しないための土台を作ります。
再評価検査
歯周基本治療後に、治療の効果を確認するために、再度歯周組織の検査を行います。
炎症が改善し、歯周ポケットが深さ3mm程度に維持されれば、口腔機能回復治療やメインテナンス(定期検診)へと移行します。症状が改善しない場合や、深い歯周ポケットが残った場合は、歯周外科治療を行うことがあります。
歯周外科治療
歯周基本治療終了後に、深い歯周ポケットが残ってしまった場合や、口の粘膜の形が良くない場合は、歯周外科治療を行います。
患者さんの全身状態に配慮したうえで、歯周外科治療の必要性を十分に考慮し、適切な手術を行い、失われた歯周組織の修復や再生をはかります。
歯周組織検査
歯周外科治療後に再評価を行い、治療効果を確認します。この結果に基づき、治癒したと判断したら口腔機能回復治療やメインテナンスへ移行します。不十分な場合は追加の歯周外科治療を検討します。
口腔機能回復治療
歯周基本治療や歯周外科治療の後に、口腔機能(かみ合わせ、咀嚼、見た目、発音機能など)の回復のために行われる治療です。被せ物治療や入れ歯、矯正治療、インプラント治療が含まれます。
安定した咬み合わせを確立し、しっかりと噛めるような状態にしていきます。
再評価検査
再評価を行い、歯周病の再発が起こっていないかどうかを判断します。
メインテナンス
メインテナンスとは歯周病を再発させず、健康な状態を維持していくための定期的な治療のことです。
歯周基本治療や歯周外科治療、口腔機能回復治療によって、歯ぐきの炎症がなくなった状態を「治癒」とし、メインテナンスを開始します。3~6か月に1回の頻度で行っていくことが多いです。
歯周病の治療期間を短くするためにできる3つのこと

歯周病の治療期間を短くするために自分でできることについてご紹介します。歯周病治療を短期間で終えるためには、歯科医師の指示を素直に受け入れ、日常生活で実践することが一番の近道です。
具体的な方法は、以下の3つです。
- 正しい歯みがきを続ける
- 指示通りに通院する
- 生活習慣を改善する
正しい歯みがきを続ける
歯科医師や歯科衛生士に教わったブラッシング方法を継続的に実践しましょう。歯周病治療が成功するかどうかは、患者さん自身がいかに毎日しっかりとプラークを落とすことができるかどうかにかかっています。
また、歯ブラシだけではなく、フロスや歯間ブラシといった補助清掃用具を併用するとなお効果的です。
指示通りに通院する
歯科医師の指示通りに通院を続けることが、治療期間の短縮につながります。途中で通院を中断すると、歯周病が治癒しないままの状態になり、再び炎症が悪化してしまうことがあります。
そうなると、治療をやり直す必要が出てきたり、歯周外科処置が必要になることもあり、結果として治療期間が延びてしまうことにつながります。
定期的な通院は手間に感じるかもしれませんが、実は治療を早く終わらせる一番の近道なのです。
生活習慣を改善する
歯科医師から生活習慣を改善するよう指導があった場合は、生活を見直してみましょう。
特に、喫煙は治りを遅らせる最大の要因なので、禁煙を心がけましょう。また、栄養バランスを整え、睡眠をしっかりとり、ストレスをためないように日々の暮らしを見直すことも大切です。
まとめ:歯周病の治療期間は進行度によって異なる

歯周病の治療期間は、進行度や生活習慣によって数週間から年単位まで大きく異なります。治療を短く済ませる近道は特別なものではなく、歯科医師の指示を守り、次の3つを日常生活で実践することです。
- 毎日の正しい歯みがき
- 指示通りの通院
- 禁煙などの生活習慣の改善
歯周病治療は段階を踏んで進むため、どうしても時間がかかりがちです。しかし、指示に沿って治療を継続すれば効果は高まり、再発を防ぎながら健康な歯ぐきを取り戻せます。
歯周病は一度進行すると元に戻すのが難しい病気ですが、早めの治療と継続的な取り組みで、治療期間を短縮し、歯を長持ちさせることは十分可能です。今日からできることを一歩ずつ始めてみましょう。
【参考文献】
1.日本歯周病学会 歯周治療のガイドライン2022
https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_2022.pdf?20241021
2.J. Coelho et al, Is there association between stress and periodontitis? Clinical Oral Investigation, 2020 Jul;24(7):2285-2294. doi: 10.1007/s00784-019-03083-9. Epub 2019 Oct 25. PMID 31654249
3.P M Preshaw et al, Periodontitis and diabetes: a two-way relationship. Diabetologia. 2012 Jan;55(1):21-31. PMID: 22057194 PMCID: PMC3228943 DOI: 10.1007/s00125-011-2342-y
4.日本歯周病学会 糖尿病患者における歯周治療のガイドライン2023 https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_diabetes_2023.pdf
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