「歯石がたまっているかもしれない……」
「歯石が原因で口臭も出ていないか気になる……」
そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
歯石は、口臭の原因のひとつです。プラーク(歯垢)が固まってできる歯石は、細菌の温床となり口臭を発生させます。歯石がたまると、さらに歯周病を進行させて強い口臭を発生させてしまいます。そのため、歯石を対策すれば口臭の対策にもつながります。
歯石対策の一つである“歯石除去”は、進め方とやり方が決まっており、特に保険適用で受ける場合には知っておくべきルールがあります。こうした仕組みとその理由を理解して正しく取り組むことが、効果的な歯石対策につながります。
その結果、口臭の改善だけでなく、虫歯や歯周病予防などお口全体の健康にも大きなメリットを得ることができるのです。
この記事では、歯石と口臭の関係、3つの歯石対策、歯石除去の方法や保険適用のルール、そして歯石対策のメリットを詳しく解説します。
歯石が気になっている方、歯石のせいで口臭が気になっている方は、ぜひ参考にしてください。
歯石は口臭の原因になる!3つの理由

口臭の原因にはさまざまなものがあり、歯石も口臭の原因の一つです。
その理由として次の3つがあります。
- 歯石は細菌が繁殖してできるので口臭を発生させる
- 歯石があると汚れがさらに溜まりやすくなって口臭が悪化する
- 歯石があると歯周病を進行させて口臭を発生させる
それぞれ詳しく解説します。
歯石は細菌が繁殖してできるので口臭を発生させる

歯石は、歯の周囲で細菌が繁殖した結果できるものなので、口臭を発生させます。
歯の表面にこびりついたプラーク(歯垢)が、唾液中の成分と反応し石灰化して固まると歯石になります。プラーク(歯垢)は“ただの食べかす”ではなく“細菌の塊(バイオフィルム)”で、それが固まった歯石も、単なる“汚れのかたまり”ではなく、“細菌の死骸の集合体が石のように硬く固まったもの”なのです。歯石は、歯茎よりも上の歯の表面(歯肉縁上)や、歯茎の中に入り込んだ場所(歯肉縁下)で、細菌の死骸や口腔内のタンパク質や唾液成分、食べかすなどを取り込みながら成長していきます1。
このように形成される歯石は細菌の温床となり、揮発性硫黄化合物(VSC)などの臭気物質が発生しやすくなるため、口臭の原因になります。
歯石はなぜできる?2つの理由と放置するリスク・予防方法を歯科医が解説
歯石があると汚れがさらに溜まりやすくなり口臭が悪化する

歯に歯石がつくと、そこから更にプラーク(歯垢)がたまっていき口臭が悪化します。なぜなら、歯石は表面がザラザラしているので、その上にさらなるプラーク(歯垢)がつきやすいからです1。
歯石を顕微鏡レベルで見ると、表面がデコボコしており小さな穴がたくさん開いています。そのため、歯石の表面はプラークがつきやすく、細菌の格好のすみかとなってしまいます。プラークは食後数時間以内からすぐに形成されはじめ、時間の経過とともに細菌の種類が増えていき、厚みが増していきます。そして2日ほどで固まりはじめ、1〜2週間で歯石になることが明らかになっています2。一度ついた歯石は、歯ブラシやデンタルフロスで掃除を頑張っても自分で除去することはできません。
このようにプラーク(歯垢)を溜め込み細菌数が増えるので、ますます口臭がひどくなってしまいます。
歯石があると、その表面のデコボコや小さな穴に新たなプラーク(歯垢)をどんどん呼び込み、口臭を悪化させるのです。
歯石があると歯周病を進行させて口臭を発生させる

歯石は歯周病を進行させるので、歯周病による口臭の引き金にもなります。歯石表面に溜まるプラークの中には、歯周病の原因となる病原性が強い細菌が含まれるからです。
歯周病の原因となる細菌は、歯と歯肉の境目の溝(歯肉溝)に入り込んで毒素を出し続けます。この細菌の活動によって歯肉に炎症が起きて、歯肉が腫れていき「歯周ポケット」が形成されます。この歯肉の炎症が進行すると歯肉が壊され、歯周ポケットはどんどん深くなり、歯周病を悪化させるのです。
歯肉に炎症が起きると、歯肉から出血したり膿が出たりします。この血や膿のニオイも原因となって口臭となります。
歯石は歯周病の大きな原因なので、歯石がついて歯周病が進行することで、歯肉の炎症による出血や膿が出ることで口臭を発生させます。
歯石の対策をすれば口臭の対策につながる!

口臭の原因の一つである歯石を防いだり取り除いたりすることは、そのまま口臭対策につながります。
歯石の対策としては具体的に次の3つが挙げられます。
- 日頃から歯石が溜まらないようセルフケアで予防する
- ついた歯石は自分では取れないので歯科医院で除去してもらう
- セルフケアができているかのチェックや清掃を受けるため歯科医院へ定期検診に行く
それぞれについて解説していきます。
日頃から歯石が溜まらないようセルフケアで予防する
まず歯石が溜まらないように、日頃から自身のブラッシングやフロスなどのセルフケアを徹底して歯石予防することが絶対に必要です。毎日生活する中で飲食物を摂取すると必ず歯にプラーク(歯垢)が付くので、それが歯石にならないようにプラーク(歯垢)を徹底的に除去しなければならないからです。
歯石の元になるプラーク(歯垢)は、飲食後数時間以内ですぐに形成されはじめます。そして2日ほどで固まりはじめ、1〜2週間で歯石になります2。プラーク(歯垢)が歯石として固まってしまうと、自分では歯石を取り除くことができません。そのため、毎日・毎食後にきちんと歯磨きをしてプラーク(歯垢)を溜め込まないよう除去することが必要不可欠なのです。
日頃から歯石が溜まらないようにするためには、まずは自分でのセルフケアが絶対に欠かせないので、歯ブラシやデンタルフロスでの歯磨きを毎食後に行うことが重要です。
歯石はなぜできる?2つの理由と放置するリスク・予防方法を歯科医が解説
ついた歯石は自分では取れないので歯科医院で除去してもらう
口臭の原因になる歯石がついてしまったら、歯科医院で専用の器具を使って掃除してもらう必要があります。柔らかいプラーク(歯石)が歯石として固まってしまったら、自分の歯磨きでは取ることができないからです。
歯石は、詳しく分類すると「歯と歯肉の境目より上についている歯石(歯肉縁上歯石)」と「歯と歯肉の境目の内側にある、歯周ポケットの中でついている歯石(歯肉縁下歯石)」の2つがあります。
「歯肉縁上歯石」は、ついている部分も目で見えて比較的除去しやすい歯石なので、歯科医院では日常的に行われる処置で除去できます(スケーリング)。
「歯肉縁下歯石」は、歯周ポケットの奥深くに強固にこびりついているため、器具を歯肉から奥深くまで入れる必要があり、部分的な麻酔をして痛みがない状態で行うことが多いです(SRP:スケーリングルートプレーニング)。また、あまりにも奥深く通常の方法では取りきれない場所についている歯石は、手術を行うこともあります(歯周外科手術)。
歯科医院での歯石除去の方法については、後述の「歯科医院での歯石除去は回数と期間がかかる!」で解説します。
一度ついてしまった歯石は自分のブラッシングでは取り除くことはできないので、歯科医院で専門的な処置を受けて歯石除去をしてもらいましょう。
セルフケアのチェックや清掃を受けるために歯科医院へ定期検診に行く
口臭の原因になる歯石の対策には自分でのケアが重要ですが、そのセルフケアが適切にできているかのチェックを受けたり、クリーニングしてもらったりするためにも、歯科医院の定期検診へ行くことが大切です。正しいセルフケアができていなければ、歯石がどんどん溜まってしまうからです。
歯石や歯石の元になるプラーク(歯垢)をきちんと除去するための歯磨き方法は、歯科医院で一度指導してもらう必要があります。「自分はかなり時間をかけて磨いているから大丈夫!」と思っていても、歯と歯の間や、歯と歯茎の境目、歯の裏側などは意外と磨けていないことがほとんどです。「磨いている」と「磨けている」のは違います。歯科医療従事者でも、きちんと鏡を見ながら時間をかけて適切に磨いていないと、歯の半分以上に磨き残しがあることは良くあるんです。歯がある程度残っている場合、全体の磨き残しを20%以下にするくらいまできちんと磨くには少なくとも10分はかかります。そのくらい、磨き残しをなくすくらい徹底的に歯磨きをするというのは実は難しいことなのです。
自分の歯並びや口の中の状況に合わせて、歯石が溜まらないようにする歯磨き法の指導を受けたら、その後も定期的に歯磨きの仕方をチェックしてもらうことが望ましいです。治療が完了してしばらく歯医者に通う必要がなくなっても、半年や1年に1回は定期検診を受けましょう。定期検診に行って虫歯ができていないかみてもらうだけでなく、クリーニングや歯磨き指導を定期的にしてもらうことで、日々のお手入れも良いレベルで保つことができます。
口臭対策にもなる歯石対策のため、適切なセルフケアを維持するためにも、歯磨きがきちんとできているかをチェックしてもらったり、歯科医院での清掃を受けたりするための定期検診に行くことが大切です。
歯科医院での歯石除去は回数と期間がかかる!

口臭の原因となる歯石がついてしまったら歯科医院で除去してもらう必要がありますが、歯科医院での歯石除去は1回では終わりません。歯石がついている部分の歯肉の治りや、保険適用のルールに則って処置をする関係で、どうしても回数や期間がかかってしまうのです。
歯石がついている部分の歯肉は、歯石やプラーク(歯垢)の中の細菌の影響で歯肉に炎症が起きており、歯肉が腫れたり、赤くなったり、出血しやすかったり、膿が出たりしています。歯肉の炎症の原因になっている歯石やプラーク(歯垢)を除去し、毎日の適切な歯磨きを続けると、歯肉は次のように良くなっていきます。歯石除去を始めてから1〜4週間ほどで、赤く腫れていた歯肉や、ブラッシングのときに出ていた血はだんだん落ち着いてきます3。
さらに1〜2か月ほど経つと、歯肉の形がより引き締まり、歯を支える組織も安定してきます。慢性的に残っていた炎症も次第に少なくなります4。このように歯肉の炎症がきちんと治るためには、歯科医院で歯石を除去してもらった後もきちんとしたセルフケアを継続する必要があります。歯肉の腫れが引かないと腫れた歯肉に埋もれて隠れている奥深くの歯石が見えずに取れなかったり、歯肉の炎症がある状態だと出血や痛みがあるのでなかなか1回で一気に歯石を取り切るということができなかったりします。
1回目で可能な範囲の歯石を除去できたら、それに応じて歯肉の炎症が改善し、今度は改善した歯肉の状態でまた取り残した歯石を除去するため、2回目以降の来院が必要です。このように、歯石除去に応じて歯肉が治るのに合わせて、また歯石除去を進めていく、という形になるため、歯科医院での歯石除去は回数や期間がかかります。
このように歯科医院での歯石除去は、適切なセルフケアを継続してもらいながら期間と回数をかけて行なっていくことを知っておきましょう。
また、日本の公的医療保険制度においては、保険適用で歯石除去をする場合でも回数や期間がかかります。詳しく解説していきます。
保険適用での歯石除去は「歯周病の治療」の一環で、やり方にルールがある
日本の保険治療では、歯石除去は「歯周病の治療」として保険適用となるため、回数ややり方などには決まりがあります。前述のように、“歯石をとった後の歯肉が治るのには時間がかかる”などの医学的な理由に基づいて、保険適用のためのルールが定められています5。
歯石除去が含まれる「歯周病の治療」について、保険適用で受ける上でのきまりと合わせて詳しく解説していきます。
歯石除去の前に必ず歯周ポケット検査をする必要がある
保険適用で歯周病治療の一環として歯石除去してもらえますが、そのためには必ず「歯周ポケット検査(歯周病検査)」を行わなければなりません。なぜなら、歯石除去が含まれる歯周病治療は、歯肉の状態・歯周ポケットを検査せずに行うことは不可能だからです。
保険適用で歯石を取ってもらいたいなら、歯周病治療として歯石除去を受ける必要があります。保険適用の歯周病治療は、簡単に図にすると次のような流れになっています。
まず歯周病検査を行なって歯肉や歯の状態を確認し、そのほかのレントゲン検査などの結果に基づいて、治療計画を立てます。
それから最初に歯周病の基本治療を行いますが、その中に歯石除去が含まれます。
その後、歯周病の基本治療を終えて歯肉の状態がどれくらい治ったかをまた検査し、まだ歯周病の治療が必要な部位には、更なる治療を行います。
歯石除去や更なる治療としての歯周外科手術についての詳細は、後述します。
歯石除去や歯周外科手術などの各歯周病の治療を行なったあとは、歯肉の治りを待ってから出ないと歯周病検査を行うことができません。治療をしてから歯肉の炎症が治るまでには、最低でも数週間はかかります。そのため、治療後には約3〜4週間の期間をあけてから、治療結果を確認するための歯周病検査を行います。保険治療での歯石除去を受けるには、歯石除去前には歯周病検査が必要で、歯石除去後にも3〜4週間あけてから再度歯周病検査を受けなければなりません。
保険適用で歯石を取るためには、「歯周病の治療」として保険治療のルールを守って進める必要があり、必ず「歯周ポケット検査(歯周病検査)」を必要期間をあけながら行わなければならないのです。
また、歯石除去や歯周外科手術といった歯周病の治療は、それぞれ1回で完了しません。
歯科医院での1回の予約で1度にやれる範囲にも限りがあります。歯石を除去したら、歯肉の治りを待ってから次の歯石除去に移る、という風に、すべての歯石除去を完了するのにも期間が必要になります。歯石除去などの歯周病の治療について、具体的に解説していきます。
歯石を取る方法として、まず「スケーリング」を行う
歯石除去の方法として、まずは歯周病の基本治療の中の「スケーリング」を行います。
較的除去しやすい「歯肉縁上歯石」を取り除きます。ほとんどの歯科医院では、「超音波スケーラー」という器具を用いて「スケーリング」を行います。これは、超音波振動と水のスプレーが一緒に出る機械で、先端に細い器具(チップ)をつけてキュルキュル・キーキーと高音を出しながら、歯石や細菌の塊を効率よく除去します。歯と歯肉の境目(歯肉縁)や、歯の裏側についた歯石を、短時間で広範囲に除去できます。
これを受けている間は超音波の細かい振動や高音を感じますが、水で冷やしながら行うので痛みや熱を感じにくく、負担も少ない方法です。この「超音波スケーラー」を用いた「スケーリング」で、全体的な歯石を大まかに除去できます。
また、「エアスケーラー」という器具も用いられることがあります。これは超音波ではなく圧縮した空気で先端を細かく振動させて歯石を取ります。超音波スケーラーと比べると、歯に感じる振動や高音は少しやわらぎます。
効率よく歯石を大まかに除去できる「スケーリング」ですが、一度に口の中の全部位にある歯石は取れません。「スケーリング」で歯石除去をする際、1本の歯の全周を触っていくので、歯の本数が多ければ多いほど時間はかかります。歯石がたくさんついているとさらに時間が必要です。歯科医院で「スケーリング」を行う時には、次のようなブロック分けに基づいて1〜3ブロックずつ進めることが多いです。
- 前歯のブロック:左右の前歯3本ずつの計6本(前から1番目〜3番目の歯)×上下2ブロック
- 奥歯のブロック:小臼歯と大臼歯の計4本(前から4番目〜7番目の歯)×上下左右4ブロック
例えば、前歯の上下2ブロックの歯石を取るとしたら、6本×2ブロックの計12本をスケーリングします。
歯1本1本の全周をスケーリングしていくのが12本分あり、痛みがなく、かつ歯石をしっかり取るよう注意しながら行う必要があることや、水を出しながら行うので溜まった水を途中でバキュームで吸ったりうがいをしたりすることも考慮すると、どうしても時間はかかってしまいます。そのため通常一度の歯科医院での診療予約時間内では、スケーリングをするのは作業時間を考えても3ブロック程度が限界なのです。
さらに、一度スケーリングを行なった部位の歯肉の腫れが引いて痛みが出にくくなってから、再度全体的に順次スケーリングをしていく場合も多々あります。歯肉の状態の改善に合わせてスケーリングを進めていくことで、より歯石除去効果も高まるため、回数が必要です。
こうした背景もあるため保険適用のルールでは、一度の診療予約で行える「スケーリング」の範囲に制限があったり、回数がかかったりします。
もし一度の歯科医院受診で「口の中全体の歯石を今日一回で取ってください」とお願いしたとして、仮に保険適用のルールを無視して一気に口の中全体をやってもらったとしても、それは本当の意味では歯石除去できていない可能性が高いです。短時間でサーっと軽く全体的になぞっただけで、“全体のスケーリングをやった風“に過ぎません。ただし保険適用外の自費診療でのクリーニングであれば、1時間など十分に時間をとって全体のスケーリングをしっかりやってくれます。
このように、歯石取りの方法として代表的な「スケーリング」は、歯周病の基本治療の一環として、すべての歯をブロックごとに小分けにして、回数と期間をかけて行うことが原則です。特に保険適用で歯石除去を受ける場合にはルールもあるため、一度で全部終わることはないので注意してください。
深いところにこびりついた歯石には「スケーリング・ルートプレーニング(SRP)」をする
スケーリングを行なっても残っている歯石には、「スケーリング・ルートプレーニング(SRP)」を行います。これは、歯と歯肉の境目の歯周ポケットの奥深くに溜まった歯石や細菌の塊を、より時間をかけて丁寧に取り除く治療です。歯石や細菌の塊を取り除く「スケーリング」と、歯根の表面のザラつきをなめらかに仕上げて今後歯石や汚れがつきにくくする「ルートプレーニング」の2つをセットで行うため、「スケーリング・ルートプレーニング(SRP)」と呼びます。
スケーリングで説明した「超音波スケーラー」や、専用の手用器具「手用スケーラー」「ハンドスケーラー」を用います。歯肉の中の奥深くを徹底的に掃除するので、痛みが出る可能性があります。そのため、必要に応じて部分的な麻酔を使って、痛みを感じないようにして行うことも多くあります。
SRPでは、歯周ポケットの奥深くに強固にこびりついた「歯肉縁下歯石」を除去することを目的としています。「歯肉縁下歯石」は、歯と歯肉の境目の内側にある歯周ポケットの中にあるので、外からはほとんど見えない歯石で、歯根表面に強固にこびりついています。そのため、SRPは非常に専門性の高い処置であり、歯科医師の経験と技術力に左右されます。
保険適用でこのSRPによる歯石除去をしてもらう場合、やはり前述のスケーリングと同様に一度にできる範囲に制限があり、必要なすべての歯のSRPを完了するのにはどうしても期間がかかります。一度に歯科医院での診療予約では、SRPは1〜2ブロックが限界です。
特に、大きい奥歯である大臼歯(前から6、7番目の歯)を含む場合は、1ブロックだけしかSRPできないということも多々あります。麻酔をする場合には、麻酔の注射をして麻酔がきちんと効いてきてから始めるので、そうした時間も考慮するとやはり1回あたりにできる歯の本数はそんなに多くありません。
もし仮に保険適用のルールを無視して一度に広範囲の多くの歯を一気にSRPしたとしたら、処置時間も長くなりますし、術後に多少なりとも痛みが出てしまう可能性を考慮すると、患者さん自身もとても疲れてしまいます。
また、SRPで歯石が取れると歯肉の腫れが引き、今まで見えていなかったところの歯石がよく見えたり器具が届きやすくなったりするので、再度SRPをすることもよくあります。
例えば、1〜2ブロックずつSRPを進めると、口の中の全6ブロックをSRPし終えるには、3〜6回の来院が必要です。また、その後に歯肉の状態が改善してから再度SRPを進める場合には、全ブロックに行うならさらに3〜6回の来院が必要となります。歯肉の状態の変化や治りに合わせて順次進めていくことが医学的にも適切なため、回数がかかってしまいます。
よく、「歯医者が儲けるために何回も通わせようと小分けにしている」という患者さんの不満の声も見かけますが、歯医者側も1回で終わるのであれば終わらせたいのが本音です。実際には、SRPの保険診療の点数は歯1本ごとに定められているため6、仮に一度にSRPを全部一気にやったとしても、通常通り小分けに複数回に分けて進めていったとしても、歯医者の儲けが大きく変わることはありません。あくまで医学的に必要であることや保険治療のルールのもと治療を進めていることから、回数や期間がかかってしまうのです。
また、SRPを行う必要のある部位は通常のスケーリングでは取れない奥深くにこびりついた歯石がいるので、歯肉も腫れていたり歯周ポケットが深く歯の周囲の骨が溶けていたりします。このような部位をスケーリング後にSRPを行うと、歯石が取れた後は歯肉の腫れもひいて引き締まるので、逆に“歯肉が下がってしまった”ように見えることがあります。腫れた歯肉に覆われていた歯の部分が、歯肉の腫れがひいて外から見える状態となり、冷たいものがしみるという知覚過敏になる場合があります。
しかし、歯肉が腫れて歯周ポケットが深いぶかぶかの状態のままだと、中にどんどん汚れや細菌が溜まって歯周病が進んでしまい、歯を支える骨が溶かされて歯がぐらついて最終的に抜けてしまいます。そのように歯が抜け落ちてしまうよりは、多少歯肉が下がったりしみたりしたとしても、SRPで歯石を除去して歯を残せる方が望ましいでしょう。
第一段階として「スケーリング」で「歯肉縁上歯石」を除去し、その次の第二段階として「スケーリング・ルートプレーニング(SRP)」で「歯肉縁下歯石」を根本的にお掃除していくのが、歯周病の基本治療としての歯石取りのやり方です。このようにきちんと歯周病の治療として歯石除去をすることで、口臭対策につながります。
それでも取れない歯石があったり歯周病が重度な部位には「歯周外科手術」が適応となる
スケーリングとSRPを行っても歯周ポケットが治ってこない部位には、更なる治療として「歯周外科手術」が適応となります。歯周病の基本治療を行っても歯周ポケットが治らない部位は、SRPでは取れない歯石や細菌の塊が残っており、外科的に取る処置をしなければならないからです。
「歯周外科手術」には様々な種類のものがありますが、基本治療でも取りきれなかった歯石や汚れを取るための外科手術は「フラップ手術(歯肉剥離掻把術)」といいます7。歯肉に切開して一時的にめくって開き、奥深くの歯石や細菌感染した組織を直接見ながらきれいに掃除する治療です。歯肉に覆われて見えなかった深い場所にある歯石や汚れを取り、最近による炎症でダメージを受けた歯肉や骨の形を整えます。徹底的に掃除を終えたら、歯肉を元の位置に戻して閉じて、縫合します。縫った糸は1〜2週間後に抜糸します。
手術当日は軽い出血や腫れが出ることがありますが、数日で落ち着くことが多いです。通常は1〜2週間ほどで歯肉が回復します。奥まできれいに掃除することで、歯周病の進行を食い止め、歯肉の健康を取り戻すことが期待できます。
「歯肉を切って開いて大がかりに…」と聞くと不安かもしれませんが、部分的な麻酔を使うので痛みはほとんどありません。「フラップ手術(歯肉剥離掻把術)」は保険適用で受けられます。
また、フラップ手術(歯肉剥離掻把術)のように掃除をした後に、歯周病で溶かされて失った骨の代わりになる「再生材料」を入れ、歯肉を閉じて縫う手術もあります。これは「歯周組織再生療法」と言われ、使う再生材料にもいろいろな種類のものがあります。一部は保険適用できるものもありますが、ほとんどは保険適用外の自費診療となり、歯1本あたり10万円〜30万円ほどかかります。
「歯周組織再生療法」は、どんな人のどんな部位でもできるわけではなく、適応があります。歯周病の状態、骨の溶け方や、患者の年齢や全身状態などによって「歯周組織再生療法」ができるかどうか、どの再生材料を使えるか、異なります。
スケーリングとSRPといった歯周病の基本治療でも取れない歯石がある部位には、「フラップ手術(歯肉剥離掻把術)」や「歯周組織再生療法」といった「歯周外科手術」を行って、歯石や汚れや細菌に汚染された組織を徹底的に掃除します。歯石や汚れや細菌感染した悪い組織は、口臭の原因となっているので、こうした歯周病の治療を受けることは口臭の対策につながるのです。
保険適用外の自費診療でのクリーニングをやっている歯科医院もある
自費診療としてクリーニングをやっている歯科医院もあります。保険適用にならない代わりに、一度の受診でしっかり時間を取って全体のクリーニングができます。およそ30分〜1時間の時間を取って、5,000円〜15,000円ほどの料金で行っているところが多いです。
クリーニングの内容としては、スケーリングや手用器具による歯石除去、電動ブラシやエアフローという機械を用いた歯磨き(機械的歯面清掃、PMTC)・着色落としが含まれます。歯科医院の設備・立地・スタッフの熟練度に応じて、実際の内容や時間、料金は異なります。
ただし歯周病が中等度から重度の場合は、この自費診療でのクリーニングでも1回では歯石を取りきれないことに注意してください。中等度から重度の歯周病がある場合には、歯石が大量に奥深くまでついていることがほとんどであり、そのような歯石除去は「クリーニング」の範疇を超えており、「歯周病の治療」としての歯石除去が必要です。
もし、歯科医院で歯周病が深刻であると指摘されたら、自費診療の「クリーニング」の1回だけで終わりにしようとせず、歯周病の治療としての歯石除去を受けましょう。
歯石対策は口臭改善以外のメリットもたくさんある!

歯石対策は口臭対策にもつながりますが、歯石の対策をすることで他にも多くのメリットが得られます。なぜなら、歯石対策である「ブラッシングなどの日々のセルフケア」「歯科医院での歯石除去」「歯科医院での定期検診」は、他にもたくさんの良い効果を生むからです。
具体的には次のようなメリットが挙げられます。
- 虫歯の対策にもなる
- 歯周病の対策にもなる
- 歯肉の見た目も改善する
それぞれ解説していきます。
虫歯の対策にもなる
歯石がつかないように対策することは、虫歯の対策にもなります。歯石対策として日々の歯磨きを徹底することは、虫歯の原因にもなるプラーク(歯垢)が溜まらないようにできるからです。
また、どんどんプラーク(歯垢)をさらに呼び込んでしまう歯石を除去することも虫歯予防につながりますし、歯科医院で定期検診を受けることで虫歯の早期発見と早期治療につながります。
口臭の原因にもなる歯石は、虫歯の原因になるプラーク(歯垢)からできており、一度歯石がつくとさらにプラーク(歯垢)が溜まりやすくなります。歯石を対策することは、口臭の対策だけでなく、虫歯の対策にもなるという大きな利点があるのです。
歯周病の対策にもなる
歯石の対策は、口臭対策につながるだけでなく歯周病の対策でもあります。なぜなら歯石は歯周病の主要な原因だからです。
歯石除去は歯周病の治療の一環です。歯石除去だけでなく日々のセルフケアの徹底や、歯科医院への定期検診(歯周病の治療が完了した後のメインテナンス)も、歯周病の治療に含まれています。
歯石の対策をすることは、ただ単に口臭の対策になるというより、歯周病を治すことにつながります。口臭対策だけのつもりで歯石対策をすると、歯周病という病気を治すことができるのです。
歯肉の見た目も改善する
口臭対策として歯石対策をすると、歯肉の見た目の改善にもつながります。なぜなら歯石対策は、歯肉の病気である歯周病の対策にもなるので、歯周病が治ることで病的だった歯肉が健康な歯肉へと変わるからです。
歯周病により病的な状態になっている歯肉は、赤黒く腫れ上がったり、血が出やすかったり、膿が出たりしています。笑った時に歯茎が見えると、赤く腫れた歯茎が悪目立ちしてしまいます。歯石対策をすることで、歯肉の腫れが引いて引き締まり、健康的なピンク色になります。
このように、歯石対策は口臭の対策になるだけでなく歯肉の見た目の改善というメリットもあります。
まとめ:口臭の原因になる歯石はしっかりと掃除をしてケアしよう

口臭の原因となる歯石を対策すれば、口臭の対策にもつながります。具体的には大きく次の3つの方法で対策をしましょう。
- 日頃から歯石が溜まらないようセルフケアでの予防が必要不可欠
- ついた歯石は自分では取れないので歯科医院で除去してもらう
- セルフケアができているかのチェックや清掃を受けるため歯科医院へ定期検診に行く
また、歯石対策は口臭対策になるだけでなく、次のようなメリットもあります。
- 虫歯の対策にもなる
- 歯周病の対策にもなる
- 歯肉の見た目も改善する
歯石の対策をすると、口臭を防ぐだけでなく虫歯や歯周病予防など口の中全体の健康を大きく改善させるので、ぜひ取り組んでみてください。
<引用文献>
1. Akcalı, Aliye, and Niklaus P. Lang. “Dental calculus: the calcified biofilm and its role in disease development.” Periodontology 2000 76.1 (2018): 109-115.
2. Marsh, Philip D., and David J. Bradshaw. “Dental plaque as a biofilm.” Journal of industrial microbiology and biotechnology 15.3 (1995): 169-175.
3. Hughes, Thomas P., and Raul G. Caffesse. “Gingival changes following scaling, root planing and oral hygiene—a biometric evaluation.” (1978).
4. Kwon, TaeHyun, Ira B. Lamster, and Liran Levin. “Current concepts in the management of periodontitis.” International dental journal 71.6 (2021): 462-476.
5. 厚生労働省. 令和6年度診療報酬改定について.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
6. 厚生労働省. 診療報酬の算定方法の一部を改正する告示. 別表第二(歯科点数表). https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001239960.pdf
7. 日本歯周病学会編.歯周治療のガイドライン.東京:医歯薬出版,2022
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