人と会話していると、相手が口や鼻を手で押さえたり、顔をそむけたり、自分との距離をあけたり、イヤな顔をしていたり…。もしかして自分の口が臭い…?!
そう悩んで自分なりに色々やってきたけど、何をやっても治らない口臭がありませんか。
その口臭が治れば、人との近い距離での会話も怖くないはずです。
あなたが何をやっても口臭が治らないのは、対処法が間違っていたり、実はその口臭の原因が意外なところにあったりするからです。
日本人の約81%が口臭を気にしたことがあるとされていますが、適切に対処できている人は多くありません。
意識して歯を磨いたり、うがいしたり、ガムを噛んだり、あなたなりに一生懸命口臭対策をやってきたはずです。
それでもまだ口臭があると悩まされ続けている場合、そのやり方が不十分であったり、自分では解決できない病気が隠れていたりするのです。
口臭と一言でいっても、その原因や種類はかなり多く複雑です。そこでこの記事では、医学的根拠に基づいて口臭について詳しく解説します。
あなたの口臭の原因が本当は何なのか、それを解決するにはどう対処すべきか、解決するためのヒントにしてください。
口臭が治らない理由は、その口臭の実態と原因を正しく突き止めていないから
あなたが悩んでいる”口臭”の実態が何なのか、原因はどこにあるのかを突き止めなければ、あなたがどんな対処法をいくら頑張って実践しても意味がなく、その口臭は治りません。
具体的には、次のような具体例が挙げられます。
効果が単に低い例 | 歯の磨き残しに原因があるが、歯磨きをきちんとできていない、フロスや歯間ブラシをしていない。または、歯磨きはできていても、ベロの汚れを落としておらずそこから口臭が発生している。 |
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口臭の原因に対策が合っていない例 | 口の中に原因があると思って一生懸命歯磨きやマウスウォッシュをしているが、実は原因が消化器官や鼻やノドの領域にある。医科を受診して、対象疾患の治療が必要である。 |
実は口臭はないのに自分で口臭を気にしすぎてしている例 | 自分では口臭があると気にしすぎているが、会話する相手など他者は全く気にしていない。専門機関での心理的・精神的なサポートが必要である。 |
自分なりの対策だけで専門機関を受診していない例 | 上記の3つに気づくには、専門機関を受診しないといけない場合が多い。また心身の状態によって経時的に原因が変わる場合もあるので、専門機関で口臭の実態と原因を調べる必要がある。 |
あなたが”口臭”だと思っていても、それが口の中が原因で生じる口臭である場合のほか、口の中には原因がなく他の臓器に問題がある場合や、実は口臭が存在していない場合もあるのです。また、一時的な口臭や継続的な口臭などもあります。
口臭を治すために最も必要なことは、「その口臭は真に口臭なのか、その実態と原因が何なのか、きちんと究明して正しい知識を持って対処すること」です。あなたの”口臭”の実態と原因がどういったものなのか突き止めて、その”口臭”に対処していく必要があるのです。
あなたを悩ませている“口臭”を治すには、本当に口からの臭いがあるかどうか、その実態と原因を突き止めて、正しい知識を持って対処していくことが必要です。
本記事では、口臭に関して医学的根拠に基づいて整理しながら詳しく解説していきますので、口臭に関する正しい知識をしっかり理解していきましょう。
口臭が治らないあなたが今後悩まないための4つの行動
口臭が治らないと悩んでいるあなたが、今後もう悩まないためにこれから実践すべきことは、具体的に次の4つです。
- 「口臭」が治らないのか「口臭症」なのかを知る
- 口臭に関する医学的分類を知り、素人判断で対処しない
- 真性口臭症の種類は多岐にわたることを理解する
- あなたがどの口臭症に該当するか、医療機関を受診して調べる
なぜなら、”口臭”と一言でいっても、ただのニオイなのか・病気なのか・病気ならどういった種類があるのか・原因は何なのか・どう対処すべきか…と、非常に細かく複雑になっているからです。
自己流で判断し対処するのではなく、あなたを悩ませている”口臭”の実態と原因が何なのか、きちんと究明して正しい知識を持って対処するためにも、まずはこの4つを実践しましょう。
「口臭」が治らないのか「口臭症」なのかを知る
“口臭”と言っても、まずは、一般的に使う「口臭」と、病気としての「口臭症」の2つの語句を区別しましょう1,2。あなたを悩ませている病気としての「口臭症」の詳しい解説をしていく中で、さまざまな「口臭」の種類が出てくるため、整理して理解する必要があります。
「口臭」が治らないなら、口からのイヤなニオイを本人または他者が感じる
「口臭」とは、本人または第3者が不快に感じる、口からのイヤな匂いの吐息のことを指します。大きく分けて下記の2種類があります。
- 生理的口臭:ライフスタイルが原因で生じる口臭。一時的なものを含む。
- 病的口臭:口腔または全身の病気が原因で生じる口臭。
「口臭症」なら、「口臭」に対して不安を感じている症状だと認識する
「口臭症」とは、上記の「口臭」に対して生理的・身体的・環境的・精神的な原因によって不安を感じる症状のことを言います。「口臭」があるかないかに関わらず、臭いが気になって悩んでしまう精神的な疾患も含みます。大きく分けて下記の3つがあります。
真性口臭症 | 実際に、社会的容認限度を超える口からの悪臭があるもの。 会話時に他者に与える不快な呼吸や口の中の臭い、自覚的な口の中の臭いや不快感のことで、原因がはっきりしている。 |
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仮性口臭症 | 本人は口臭があると思っていても、社会的容認限度を超える口からの悪臭が実際には無い。カウンセリングなどにより精神的な負担を改善できるもの。 |
口臭恐怖症 | 本人は口臭があると思っていても、社会的容認限度を超える口からの悪臭が実際には無い。仮性口臭症より重症で、カウンセリングなどにより精神的な負担を改善できないもの。 |
「口臭」がある人が全て「口臭症」ということではありません。「口臭」があっても、自分も他人も気づいていなければ「口臭症」ではありません。
自覚があって他者にも気づかれていたり指摘されたりしている場合、自覚はあるが他者に気づかれず指摘もされない場合、いずれも「口臭症」といえます。
さまざまな「口臭」が原因となりうる「口臭症」に関して、さらに詳しく医学的な分類があります。この分類を理解することは、あなたの口臭がどれに該当し、どんな原因があってどんな対処ができるかを究明するのに必要なことなので、下記で詳しく解説していきます。
口臭に関する医学的分類を知り、素人判断で対処しない
口臭に関する医学的分類として、次の国際分類があります1,3。原因によって詳しく分かれており、素人が自分でどれに該当するか判断することは困難です。具体的には次のような構造分類になっています。
「口臭症」なら、「口臭」に対して不安を感じている症状だと認識するで説明したように、口臭症は、大きく3つに分かれます。
- 真性口臭症
- 仮性口臭症
- 口臭恐怖症
さらにそれぞれが原因ごとに詳しく分類されます。
真性口臭症:実際に口からの悪臭があるもの
真性口臭症とは、実際に口からの悪臭があり、自覚したり会話時に他者に不快感を与えたりするもので、生理的口臭があるものと、病的口臭があるもの、の2種類があります。
1.誰にでも生じる「生理的口臭」
「口臭」が治らないのか「口臭症」なのかを知るで説明したように、生理的口臭とは、ライフスタイルが原因で生じる口臭で、誰でも生じるものです。口腔や全身の病気とは関係ない健康な人の、1日のライフスタイルにおいて生じるもの、あるいは、一生のライフスタイルにおいて生じるものに分かれます。
1日のライフスタイルに起因する生理的口臭 | 起床時口臭、空腹時口臭、飲食時口臭、喫煙時口臭、緊張時口臭 |
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一生のライフスタイルに起因する生理的口臭 | 思春期口臭、生理時口臭、妊娠時口臭、更年期口臭、老人性口臭 |
2.口腔や全身の病気が原因の「病的口臭」
前述したように、病的口臭とは、口腔または全身に何らかの病気があって、それが原因で生じている口臭のことです。
口腔由来のもの | 食物由来口臭、歯周病性口臭、食物残渣由来性口臭、口内炎性口臭、義歯性口臭、老人性口臭、齲蝕性口臭、カンジダ症性口臭、妊娠性口臭、出血性口臭、口腔扁平苔癬性口臭、腫瘍性口臭、排卵性口臭、口呼吸性口臭、唾液減少性口臭、舌苔性口臭 |
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全身由来のもの | 耳鼻咽喉領域疾患由来、全身(内科)疾患由来 |
仮性口臭症:実際には口からの悪臭がないもの
仮性口臭症とは、本人は口臭があると思っていても、社会的容認限度を超える口からの悪臭が実際には無いもの、つまり、本人が口臭を悩んでいるのに実際には問題のあるような臭いを他人には感じられないものを言います。
歯や口の清掃状態も良好で、客観的にロ臭はほとんど認められないのに、自分の口臭を強く気にしてしまい、相手の態度や様子などから「自分には口臭があるのではないか」と疑ってしまう心因性の口臭です。
専門機関で客観的な検査を受け、その結果と説明を踏まえてカウンセリングなどの心理的なサポートを受けることによって、精神的負担の改善が期待できます。
口臭恐怖症:実際には口からの悪臭がないもの
口臭恐怖症とは、口臭に対する意識が病的に強いもので、仮性口臭症よりも重症なものを指します。仮性口臭症と同様に、本人が口臭を感じているのに他人には感じられません。
カウンセリングなどの心理的なサポートによっても、精神的な負担の改善ができないほどのものです。
真性口臭症の種類は多岐にわたることを理解する
口臭症の中でも、実際に口臭がある「真性口臭症」には、生理的口臭によるものと病的口臭によるものがありますが、それぞれの種類は多岐にわたります1,4。
あなたが口臭で悩んでいるのなら、あなたの今のライフスタイルや治療中の病気で該当するものがないか、まずは見てみましょう。ただし、正しい診断を下して適切に対処するには、自分だけでは不可能で、必ず医療機関で検査してもらう必要があります。
1日のライフスタイルに起因する「生理的口臭」の種類
1日のライフスタイルにおける生理的口臭は、大きく以下の5つに分類されます。
起床時口臭 | 夜間、口を閉じている間に口腔内で発生している、頻度の高いもの。 起床時には、口腔内の細菌が特に舌苔(ベロの表面に付着する汚れ)で最も増殖しているため生じる。口腔清掃や食事摂取によって減少していく。 |
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空腹時口臭 | 空腹時の唾液性状(ネバネバしている,サラサラしているなどの状態)の変化により起こると言われているが、現在のところ科学的根拠に乏しく、頻繁に起こるという報告はない。 |
飲食時口臭 | 舌表面にニオイ物質が定着することで日常的に起こるもの。生ねぎ、納豆、ニンニクの摂取や、アルコールやコーヒーなどの飲料によるものが代表的である。 |
喫煙時口臭 | タバコから発生する、主にタールやニコチンなどのニオイ物質が原因で生じるもの。喫煙者の場合、本人の嗅覚が鈍感になっていて口臭に気づかなかったり、歯周病になりやすく歯周病も原因で口臭が発生していたりする場合もある。 |
緊張時口臭 | 仮性口臭症や口臭恐怖症とも関係しており、精神不安から口腔内緊張が発生し、口臭を自覚するもの。過去に口臭を指摘された経験や、対人ストレス、孤独感や焦燥感、コミュニケーション障害などから、突然精神的に不安になることから生じる。仮性口臭症や口臭恐怖症と極めて似た症状であることも多い。 |
一生のライフスタイルに起因する「生理的口臭」の種類
一生のライフスタイルにおける生理的口臭は、以下の5つです。
思春期口臭 | エストロゲンといった血中ホルモンや代謝の変化の影響で、唾液の匂いが変化したり歯肉炎が起こることで生じたりすると推測されるもの5。 |
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生理時口臭 | |
妊娠時口臭 | |
更年期口臭 | 加齢によって疲労や緊張や口呼吸の繰り返しにより唾液量が減少し、口の中の自浄作用が弱くなった結果発生する口臭。 |
老人性口臭 |
口腔由来の「病的口臭」の種類
口腔由来の病的口臭は、特に種類が多いです。大きく以下の16種類が挙げられます4。
歯周病性口臭 | 病的口臭で最も多い。歯周病とは、歯垢(歯に付着している磨き残しに細菌が増殖したもの、プラークともいう)や歯垢が固まった歯石によって炎症が起き、歯と歯肉の境目が緩くなって歯周ポケットが生じ、そのポケットがますます歯垢や歯石や細菌の温床となり、歯を支える骨を溶かしてしまい最終的には歯が抜けてしまう病気である。歯肉の炎症や歯周病細菌によって、歯周ポケットから口臭が発生しているもの。 |
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食物由来口臭 | 食品を摂取することで口臭が発生するもの。時間が経過すれば治る一過性であることが特徴。 口の中に残った食べかすが直接の原因である場合と、体内で消化された食品から放出されるニオイ物質が血液中に移行し、肺でのガス交換時に二酸化炭素と共に排出されて臭う場合がある。アルコールは体内で吸収された後、肺から揮発性のアルコール成分が排出され、臭いを感じる。栄養ドリンク剤の中には、ニンニクエキスやビタミンB1誘導体(フルスルチアミン)が含まれており臭いの原因となる。 |
食物残渣由来性口臭 | 虫歯で開いた歯の穴や、合っていない詰め物や被せ物の隙間に、食べかすが挟まって残ってしまい、口腔内の細菌によって食べかすが発酵して生じる口臭。 |
口内炎性口臭 | 口内炎が原因で生じる口臭。アフタ性口内炎などを原因として口臭を認めることがある。 |
義歯性口臭 | 義歯(入れ歯)をつけっぱなしにしていたり、きちんと洗っていなかったりして発生する口臭。義歯に使用される一般的な材料であるレジンは吸水性があり、使用するにつれて唾液成分を吸収したりして、細菌によってニオイ物質が生じる。義歯の清掃不良によって、義歯を装着するときに歯に引っかけるバネの周りが虫歯や歯周病になったり、義歯と歯茎の間に炎症が起きたり、義歯に食べかすが引っかかったりして口臭がさらに強くなる。 |
老人性口臭 | いわゆる加齢臭の一つとして生じる口臭。老化に伴い、あらゆる機能低下が起きて口臭が発生する。 |
齲蝕性口臭 | 虫歯が多数あったり、虫歯が進行して歯の神経が壊死したり、歯の根の先で膿溜まりを作り、歯茎から膿が出てきたりして、口臭が発生する。 |
カンジダ症性口臭 | 口腔カンジダ症を発症して生じる口臭。カンジダ菌とそれによって産生されるニオイ物質によるもの。 |
妊娠性口臭 | 女性ホルモンが上昇することで、歯と歯肉の間の溝の中で、エストロゲンやプロゲステロンが増加し、歯肉のバリア機能が減少したり、つわりによって歯磨きができなくなったりすることで、歯肉炎が起きて発生する口臭。ホルモンの変化だけでも独特な口臭を発生することもある。 |
出血性口臭 | 口の中で出血し、その血液から発生する口臭。ケガをしたり、抜歯をした直後などに多い。白血病などで自然出血している場合もある。 |
口腔扁平苔癬性口臭 | 口腔扁平苔癬という、口の中の粘膜に何らかの原因で異常が起きて白くなったり痛んだりしみるといった症状が出る病気が原因の口臭。この疾患自体も頻度は高くなく、口臭も頻発ない。 |
腫瘍性口臭 | 口の中のがんが原因で生じる口臭。特に悪性腫瘍(癌)は独特な口臭を生じる場合がある。 |
排卵性口臭 | 女性の排卵日前後に発生する口臭で、基本的には妊娠時の口臭と似ている。 |
口呼吸性口臭 | 口呼吸によって口の中が乾燥し、細菌が歯肉表面に付着しやすいだけでなく、唾液による自浄作用や抗菌作用が働かず、歯肉や舌に細菌の塊が形成されることで生じる口臭。 |
唾液減少性口臭 | 唾液が減少することで、唾液の自浄作用、抗菌作用、粘膜の保護作用が働かず、口臭が生じるもの。加齢、口呼吸、薬物の副作用によって唾液の分泌量が減少する。薬剤では、アレルギーの薬、吐き気止め、高血圧の薬、筋弛緩剤や向精神薬などに、唾液を減少させる副作用を持つ場合がある。 |
舌苔性口臭 | ベロの表面に付着する汚れである舌苔には、口腔内細菌が繁殖し細菌の塊が形成されている。この細菌がタンパク質を分解してニオイ物質を発生させる。舌苔の溜まりやすさは個人差があり、体調不良や風邪などの発熱後や深酒後に多く見られる。 |
全身由来の「病的口臭」の種類
全身由来の病的口臭には、2種類挙げられます。
耳鼻咽喉領域の疾患由来 | 鼻炎、副鼻腔炎に伴う後鼻漏、口蓋扁桃の炎症性疾患、喉頭疾患、睡眠時無呼吸症候群による胃酸逆流によるアデノイド増殖、耳鼻咽喉領域の悪性腫瘍、嗅覚障害 |
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全身(内科)の疾患由来 | 糖尿病、腎不全、肝疾患、肺癌、上気道・中咽頭癌、トリメチルアミン尿症 |
あなたがどの口臭症に該当するか、医療機関を受診して調べる
あなたの口臭が一体どの口臭症・口臭に該当するかを調べ、その対処法を見つけるためには、専門機関で検査してもらう必要があります2,4,6。あなたの今のライフスタイルや治療中の病気で心当たりのあるものがあっても、本当にそれが原因で口臭が生じているかどうかは、専門的に調べなければわからないからです。
具体的には下記の方法があります。
- 歯科を受診する
- 医科を受診する
- 機器分析による口臭検査:口臭の原因となるニオイ物質を対象とする
- 人による官能検査:複数の検査者が実際に嗅いで検査する
- 口臭のセルフチェック
- 治療前後の問診・アンケート
歯科を受診する
真性口臭症のうち、やはり口の中が原因の口臭である頻度が高いです。真性口臭症の患者のうち全身由来の病的口臭があった患者は1.5%未満だったと報告される調査があり、真性口臭症の大部分は口が原因だと考えられているからです7。
また、口のニオイが気になっても実際に歯科を受診する人はたったの9.4%という調査結果もありますが8、歯科受診することによって口の中の問題を発見してもらえれば、口臭症を解決できる可能性が大きく高まります。
具体的には次のような点を歯科医院で調べてもらい、治療や指導を受けましょう。
- 自分の歯磨きの仕方が適切であるか
- 虫歯や歯周病、合っていない詰め物や被せ物や入れ歯がないか
- 唾液量が減少している、口が渇きやすい状態かどうか
- 口の中に、口内炎や腫瘍がないか
医科を受診する
もしあなたに、口以外の臓器に何らかの疾患や心当たりのある症状が既にあった場合、まずはその領域をみてくれる医療機関を受診しましょう。
例えば、次のような場合が挙げられます。
- 鼻詰まりや副鼻腔炎やノドの症状や嗅覚に異常がある:耳鼻咽喉科
- 血糖値が高いと言われたことがある:内科、糖尿病内科
- 血液検査や尿検査で肝臓に関する数値が悪いと言われたことがある:消化器内科、内科
- 血液検査や尿検査で腎臓に関する数値が悪いと言われたことがある:内科、腎臓内科、泌尿器科
- 健康診断で肺に関する検査で引っかかった:呼吸器科
耳鼻咽喉領域以外の全身に関する疾患については、健康診断や検査を受けなければ自覚できないものが多いので、必ず定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
機器分析による口臭検査:口臭の原因となるニオイ物質を対象とする
歯科や医科を受診して、原因となる病気や症状に適切に対処しても口臭に悩む場合には、口臭に関する専門機関を受診しましょう。
通常の歯科や医科では、口臭の原因となるニオイ物質を検知する検査は行っておらず、実際に自分が口臭症かどうかを知るためには、専門機関で検査をする必要があります。また、においを感じ取る嗅覚は、以下のような理由から、他の視覚などに比べて最も曖昧な感覚であり、客観的な検査が必要だからです。
- においを言葉だけで表現するのは難しいから
- 嗅覚は順応して感覚が鈍くなるものだから
- 嗅覚によるにおいの評価は感情で左右されるから
- におい物質ごとに「クサイ口臭となるレベル」の量や数値が異なるから
検査方法の一つとして、機器を使って検査を行い、次のような点を客観的に調べる必要があります。
- 実際に口からニオイ物質が出ているかどうか
- どんな種類のニオイ物質が発生しているか
- それが他人を不快にさせるほどの口臭となるくらいのレベルかどうか
口臭の原因となるニオイ物質には、次のようなものがあります。
揮発性硫黄化合物(Volatile Sulfur Compounds: VSC) | 硫化水素 H2S:温泉地やゆで卵のような臭い メチルメルカプタン CH3SH:野菜の腐敗臭 ジメチルサルファイド (CH3)2S:青海苔のような磯臭さ※VSCは腸内ガスや下水、火山ガス、浄化槽内ガスにも含まれています。 |
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アミン類やインドールなど | 窒素化合物:アンモニアなど |
揮発性脂肪酸 | 酢酸など |
ケトン | アセトン |
その他 | アルコールやアルデヒド |
機器で検査する主なニオイ物質は、口臭の主な原因である生理的口臭の場合、揮発性硫黄化合物(VSC)が対象になっています。口臭のある人と無い人で明らかに濃度に差があることや、超微量でも人の嗅覚を刺激することから、この揮発性硫黄化合物(VSC)が口臭の主な原因物質であると知られているからです9。
そのほかについては、高濃度でなければ口臭とはならず、ニオイの性質を変化させるものだと考えられています4。
検査で用いる機器には次のような種類があります。
- ガスクロマトグラフィーによるもの:VSC測定可能なもの
- ガスセンサーによるもの:サルファイドモニター(硫化水素ガス計測器)が代表的
- ガスセンサー+小型ガスクロマトグラフィーによるもの
- ガス検知管によるもの
人による官能検査:複数の検査者が実際に嗅いで検査する
口臭に関する専門機関では、機器を用いて分析する口臭検査のほか、複数の人によって検査する官能検査というものも実施されています。機器分析による検査法だけでは、人の感じるすべてのにおいを把握できないからです。
人による官能検査は、口臭の検査だけでなく、環境検査においても主に用いられ、国際的にも信頼できる口臭検査法といわれています4。機器による口臭検査と組み合わせて実施されることが多いです。
口臭のセルフチェック
官能検査に含まれますが、口臭で悩む本人が、自分の口臭を自分でチェックする方法もあります。口臭の専門機関でも合わせて行われ、客観的な検査結果と比較してカウンセリングを受けられます。
具体的には次の方法があります。
コップやビニール袋を使ったテスト | 臭いのないコップやビニール袋を1つ用意し、その中に息を吐き出してにおいを嗅ぐ |
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ガーゼを使って舌苔を確認するテスト | 綺麗なガーゼで舌の奥の方を強めに拭き取り、しばらく置いてからにおいを嗅ぐ |
デンタルフロスを使ったテスト | 奥歯にフロス(糸ようじ)を通し、においを嗅ぐ |
マスクを使ったテスト | 口を閉じて3分してからマスクをしで、ゆっくりと口から息を吐き出し、鼻でにおいを嗅ぐ |
歯垢(プラーク)量のテスト | 歯に付着した磨き残しに細菌が増殖したものである歯垢(プラーク)を、専用の染め出し液を使ってどれくらい歯についているかチェックする |
治療前後の問診・アンケート
どの口臭の専門機関においても、初めの受診時、すべての検査の前に問診やアンケート調査を実施しています。あなたの生活習慣、これまでにかかった病気や治療中の病気、飲んでいる薬、口臭や悩みに関して聞き取るものです。
口臭の専門機関では、この聞き取り結果を踏まえて必要な検査を実施し、その検査結果と合わせて総合的に判断して診断を下し治療をしていく必要があります。
実際に検査や治療が始まってからも、随時問診やアンケートをとり、あなたの状況や心理状態の変化も見ていきます。
あなたの口臭の悩みを解決するためにはとても重要なものになるので、口臭の専門機関においては、恥ずかしがらずにきちんと問診やアンケートに答え、あなたの口臭に向き合って検査と治療を行っていきましょう。
口臭の実態と原因を正しく突き止めたうえでの治療法・治し方を紹介
あなたがどの口臭症に該当するか、医療機関を受診して調べるで説明したように、疾患があれば歯科や医科を受診したり、口臭の専門機関を受診したら、あなたの口臭に関して診断と必要な治療法を提示してもらえます。
口臭症に関しては、前述した医学的分類である「真性口臭症(生理的口臭または病的口臭)」「仮性口臭症」「口臭恐怖症」のいずれかの診断になります。この分類に基づいて、治療の必要性(Treatment needs: TN)や方針が決定されます7。
治療の必要性(Treatment needs: TN)とは、具体的には次のようなものになります。
TN1【生理的口臭に対する対処】説明および口腔清掃指導
おもに生理的口臭があると診断された場合、検査結果の説明に加え、口腔清掃指導を受けることが対処法となります。口腔清掃を適切にできるようになれば、原因となっている口の中のニオイを解消することができるからです。口腔清掃で注意すべき点には具体的に次のような点があります。
- 歯垢(プラーク)は歯の表面にこびりついており、マウスウォッシュやうがい薬などでゆすぐだけでは取れないので、きちんとブラッシングをして擦り落とさなければならない。
- ブラッシングは強く擦れば良いというわけではない。正しい角度や向きで歯に当てて1本1本磨く必要がある。
- 歯と歯の間に溜まった歯垢(プラーク)を取り除くには、歯ブラシだけでは不十分。歯間ブラシやデンタルフロス(糸ようじ)を適切に使って十分な回数こする必要がある。
- 舌についた汚れである舌苔を取り除く必要があり、舌ブラシなどで舌表面を傷つけないよう適切に清掃しなければならない。
生理的口臭がある場合には、自己流のやり方が間違っている可能性もあるので、原因となる口の中のニオイを対処するためにあなたに合った適切な口腔清掃指導を受けましょう。
TN2【口腔由来の病的口臭に対する対処】歯周病の治療などの疾患治療
口腔由来の病的口臭があると診断された場合、検査結果の説明や口腔清掃指導を受けることに加え、さらに口腔内の疾患に対する治療を受けることが対処法となります。
いくら適切に口腔清掃を頑張っていても、口の中に原因となる病気があった場合それを治療しなければ、口臭が改善しないからです。口の中の疾患で病的口臭の原因となる代表的なものが、歯周病です。
歯周病の原因細菌が、ニオイ物質であるVSCのうち、特にニオイの強いメチルメルカプタンの発生比率が高いことがわかっています。ほかにも口腔内の疾患があった場合にはその治療を受けましょう。
口腔内疾患を治療した上で適切な口腔清掃を徹底すれば、口腔由来の病的口臭を解決できます。
TN3【全身由来の病的口臭に対する対処】医科への紹介
全身の病気が原因となって病的口臭があると診断された場合、原因の病気を治療するため、該当の医科専門医へ紹介してもらう必要があります。
口の中だけを対処しても、他の臓器に問題がありそれが口臭の原因となっている場合には、その病的口臭は改善しません。
例えば、耳・鼻・ノドに問題があれば耳鼻咽喉科、糖尿病や肝臓・腎臓に問題があれば、内科・糖尿病内科・消化器内科・腎臓内科・泌尿器科、肺機能に問題があれば呼吸器科、といったように専門機の医科を紹介してもらい、詳しく検査して治療を受けましょう。
このパターンである可能性としては稀ですが、もし原因となる全身の病気があれば治療し、さらに口腔内の清掃も適切に行えば、全身由来の病的口臭の悩みから解放されるでしょう。
TN4【仮性口臭症に対する対処】カウンセリングや教育
専門機関での口臭の検査の結果、実際には問題になるような口臭が存在しないのに、本人では強く口臭があると悩んでいる仮性口臭症と診断された場合、検査結果や口臭に関する正しい情報を教えてもらったり、カウンセリングにより心理面のサポートを受ける必要があります。
もちろん専門家による口腔清掃指導を受けることも役立ちますが、「あなたには悩むほどの口臭は存在しない」ということを客観的に教えてもらい、それでも悩むのはどうしてか、あなたの中でどういった気持ちや背景があるのかを相談しましょう。
あなたが長く苦しんでいる口臭の悩みから少しでも解放され精神的に安心できるように、しっかり相談してサポートを受ける必要があります。
TN5【口臭恐怖症への対処】精神科や心療内科への紹介
上述のTN1〜TN4の治療を受けた後でも、実際には問題になるような口臭が存在しないにも関わらず、本人では強い口臭があるという悩みが変わらない場合、口臭恐怖症と診断され、精神科や心療内科へ紹介されることがあります。
あなたの口臭に対する強い悩みや不安、それに伴う社会生活上の問題や恐怖感に対しては、口臭の専門機関ではなく、精神面や心理面の専門機関でサポートしてもらう必要があるからです。
もちろん、まずは口臭の専門機関を受診して検査や治療を受けてみることが重要です。それでもあなたの口臭に対する強い悩みや問題が変わらない場合には、次のステップとしてこうした対処も選択肢になります。
まとめ:口臭が治らないときは正しい行動で改善を
この記事では、あなたを長く苦しめている何をやっても治らない口臭について、医学的に正しい知識を整理しながら、口臭の分類・原因・解決法について紹介しました。
口臭が治らない理由は、「その口臭の実態や原因を正しく突き止められていないから」です。口臭を治すために必要なのは、その口臭の実態と原因が何なのか、きちんと究明して正しい知識を持って対処することで、具体的には次の4つを実践することが必要です。
- 「口臭」が治らないのか「口臭症」なのかを知る
- 口臭に関する医学的分類を知り、素人判断で対処しない
- 真性口臭症の種類は多岐にわたることを理解する
- あなたがどの口臭症に該当するか、医療機関を受診して調べる
ずっとつきまとってきた口臭についての悩みから解放されるためにも、自分だけで対処するのではなく、医療機関に相談することが重要です。該当する病気があればその専門の医療機関を受診したり、口臭の専門機関を受診して相談しましょう。
<参考文献>
1.音琴淳一. “口臭に関する原因・分析法 ~現在のガイドラインと最新の知見から~ 口臭の分類方法.” 日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学 39.1-2 (2019): 86-92.
2.角田正健, et al. “口臭への対応と口臭症治療.” におい・かおり環境学会誌 44.4 (2013): 230-237.
3.宮崎, et al. “口臭症分類の試みとその治療必要性.” 新潟歯学会雑誌 29.1 (1999): 11-15.
4.音琴淳一. “口臭の分類,原因及び診断方法.” 松本歯学 31.3 (2005): 230-240.
5.Gürsoy, Mervi, et al. “High salivary estrogen and risk of developing pregnancy gingivitis.” Journal of Periodontology 84.9 (2013): 1281-1289.
6.日野出大輔. “口臭の診断と口臭治療.” Journal of Oral Health and Biosciences 27.2 (2015): 107-111.
7.日野出大輔. “口臭症の国際分類” 口臭診療マニュアル -EBMに基づく診断と治療- (宮崎秀夫編). 第一歯科出版 (2007): 14-18.
8.公益社団法人 日本歯科医師会. “8割が口臭を気にするが、歯科医院に行くのは1割未満.” プレスリリース (2016) https://www.jda.or.jp/pdf/DentalMedicalAwarenessSurvey_h28_v3.pdf
9.角田正健. “医療現場でのにおい計測-口臭.” におい・かおり環境学会誌 36.5 (2005): 250-260.

- 手術自体の痛みが不安で、踏み切ることができない
- 治療がうまくいくかどうか、長期的に問題なく使えるかが不安
- どの医師に治療を任せるべきか選ぶのが難しい
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