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10万円以下のインプラントは大丈夫?歯科医師がリスクや実際の費用を解説

「インプラントが1本10万円以下」

そんな言葉を見て、「本当にそんなに安くできるなら検討したい」と思ったことはありませんか?

しかし実は、歯科医院の現場では、“10万円以下と聞いて始めたインプラント治療が結果的に高くついてしまった”というケースが珍しくありません。

“安さだけを基準にインプラント治療を選んだことで、後から困ってしまった”という相談を受けることもよくあるのです。

その理由は大きく分けて2つあります。

ひとつは、治療の質が十分でないケース。もうひとつは、広告に表示されていない追加費用がかかるケースです。インプラント治療は、検査・手術・被せ物・メインテナンスまで含めた長期的な治療計画が必要な高度医療です。

インプラントは、見た目を整えるだけの治療ではなく、長期間にわたって噛む力を支え続ける医療行為です。だからこそ、費用の安さだけで判断する前に、知っておいていただきたい大切なポイントがあります。

この記事では、なぜ「10万円以下のインプラント」には注意が必要なのか、そして安心して治療を受けるために知っておくべきポイントを解説していきます。

目次 非表示

10万円以下のインプラントには注意が必要!結局高くつくことも多い

10万円以下でできると広告で謳っているインプラントには注意が必要です。実際には10万円で済まずに結局高額な費用がかかるケースも多くあるからです。

「10万円以下のインプラント」が結局10万円で済まないパターンには、大きく分けて次の2パターンがあります。

  1. 本当に10万円以下でできるが、質の悪いインプラント治療であるパターン
  2. 10万円以下と謳っていても、実際には諸費用でもっとかかるパターン

それぞれについて説明していきます。

本当に10万円以下なら、質が低いインプラント治療の可能性が高い

もしインプラントが本当に10万円以下でできるとしたら、そのインプラント治療の質が悪いものである可能性があり、注意が必要です。長く安心して使える高品質なインプラントなら、インプラントの部品の原価や人工歯(被せ物)の材料費・製作費だけでも、10万円ほどかかるからです。

信頼できる高品質なインプラントの一例としては、世界的にも長年使用され臨床実績のある三大インプラントメーカー(ストローマン社、ノーベルバイオケア社、デンツプライシロナ社)のインプラントが挙げられます。

これらの信頼性の高いメーカーのインプラントは長持ちする高品質であるため、パーツの原価もそれなりにかかります。そのため、もし「10万円以下」でインプラント治療が可能とされている場合、こうした実績あるメーカーとは異なる、コストを最優先にした材料が使われている可能性があります。

必ずしもすべてが悪いとは限りませんが、長期的な耐久性や将来のトラブルリスクについては慎重に考える必要があります。

また、インプラント治療の費用には、インプラントのパーツや人工歯の材料費や製作費だけでなく、専門スタッフによる診療・管理・技工の人件費や、安全で精密な治療を行うための設備・環境の維持費も含まれます。

インプラント治療を10万円以下でできるとしたら、そうした人件費などの必要経費も考慮されていないため、治療を受ける歯科医院が提供する医療サービスの質も低い可能性が高いでしょう。インプラント治療の処置の技術や環境も良くなく、雑に治療される可能性があります。そして結果として後々インプラントに問題が生じたりするのです。

格安のインプラントで質の悪い治療を受けると、さまざまなトラブルが起き、インプラントが長持ちせず治療のやり直しが必要になったりします。インプラント治療は「入れて終わり」ではなく、長期間にわたって使い続ける医療行為です。費用だけで判断せず、治療内容や使用材料、体制まで含めて慎重に検討することが大切です。

詳しくは「10万円以下の格安で質の低いインプラント治療をするとトラブルの原因に!7つの理由」で解説していきます。

10万円以下と謳っていても、実際には諸費用で高額になることも多い

広告で10万円以下と謳っているインプラントでも、実際には治療に必要な費用をすべて含めると、総額が10万円を超えるケースは少なくありません。

多くの場合、広告で示されている金額は、インプラント本体の一部のみの費用であり、次のような治療に欠かせない費用が含まれていないことがあります。

  • 事前の検査(エックス線検査・歯科用コーンビームCTなど)
  • 手術費用
  • 麻酔やお薬の費用
  • 仮歯の作製
  • 治療後の調整やメインテナンス

そのため、「10万円以下でできる」と思って歯科医院を受診してみると、実際には追加費用が必要になり、結果として10万円以上の治療費になるということも珍しくありません。

また、10万円以下で対応できるのがごく限られた部位や、特定の条件を満たす場合のみで、ご自身が治療を希望している場所や状態では対象外だった、というケースもあります。

このように、広告の金額だけを見て判断してしまうと、「思っていた費用と違った」と感じてしまうことがあります。

どのような場合に追加費用が発生するのかについては、「広告では10万円以下でも、インプラント治療が高額になる5つの理由」で具体的なパターンを挙げながら詳しく解説していきます。

10万円以下の格安で質の低いインプラント治療をするとトラブルの原因に!7つの理由

費用だけを重視した格安のインプラント治療では、後になってさまざまなトラブルが起こることがあります。インプラント治療というのは、見た目だけでなく、長期間にわたってお口の中で機能し続ける医療行為であるため、低コストで質の低いインプラントをするといろんな問題を招く可能性があるからです。

その主な理由としては、次の7つが挙げられます。

  1. 術前に必要な検査や治療が十分に行われていないから
  2. 安全性や長期使用の実績が少ないメーカーが使われているから
  3. 治療環境が不十分で感染のリスクが高いから
  4. 人工歯(上部構造)の素材や仕上がりが十分でないから
  5. 歯科医師や歯科技工士の技術が十分でないから
  6. メインテナンスや保証・アフターケア体制が整っていないから
  7. 他院では修理や対応ができず結局治療のやり直しになるから

それぞれ詳しく解説します。

術前に必要な検査や治療が十分に行われていないから

インプラントを10万円以下でできるとしたら、インプラント治療に伴って必要な事前の検査や治療が十分に行われずにインプラントを埋め込まれてしまうかもしれません。

安全なインプラント治療には、歯科用コーンビームCTを用いた事前の検査が欠かせません1。歯科用コーンビームCTを用いて下記のような項目を三次元的に正確に把握し、トラブルなく長持ちするようにインプラントを埋め込まなければならないからです。

  • あごの骨の量や質
  • 神経や血管の位置
  • 歯肉や周囲組織の状態

格安治療の場合、CTを使わず、二次元的にしか分からないエックス線検査だけで大まかに判断して治療を進めていることがあります。

また、インプラントをするのに本来必要な骨造成(骨を増やす処置)や歯肉の形成手術を行わないままインプラント治療が進められたりすることがあります。

その結果、次のようなリスクが高まってしまいます。

  • インプラントが顎の骨にしっかり固定されない
  • 将来的にインプラントがぐらつく
  • インプラント手術によって神経や血管や周囲組織を傷つける
  • お手入れのしにくいインプラントになり周囲組織に炎症が起きる
  • 長期的にインプラント周囲の歯肉が下がって土台の金属が見えてしまう

事前の検査を十分に行い、必要な場合にはインプラントを埋め込む土台の骨を増やす骨造成手術や、歯肉の形を整える歯周形成術を行うことで、トラブルの少ないインプラントを入れられます。

コストを大幅に抑えた格安のインプラントでは、このような必要な検査や治療が十分に行われていない可能性があります。

安全性や長期使用の実績が少ないメーカーが使われているから

10万円以下でインプラント治療を受ける場合、使用されるインプラントは、安全性や長期実績の少ないメーカーのものが使われているかもしれません。なぜなら、長持ちする高品質な大手メーカーのインプラントを使うなら、インプラント治療費を10万円以下に抑えることが難しいことがほとんどだからです。

インプラントは体の中に長期間入る医療機器です。そのため、長年の臨床実績と信頼性がとても重要です。

格安なインプラントを使った治療では、下記のようなインプラントが使われることがあります。

  • 使用実績が少ない
  • 長期データが十分にない
  • コストを最優先したメーカー

そのため、10万円以下でできたとしてもすぐにトラブルが発生して、ぐらついたり、痛みが出たり、うまく噛めなかったり、長く使えなかったりする可能性があります。

適切なお手入れをしていれば、信頼のできる高品質なメーカーのインプラントなら10年単位で長く使えますが、格安の低コストのインプラントを使うと数年後にトラブルが起きる可能性があります。

安全性や長期的な臨床実績が少ないメーカーの低コストのインプラントでは、10万円以下でできたとしても短期的に何かしらの問題が生じてしまう懸念があります。

治療環境が不十分で感染のリスクが高いから

インプラントを10万円以下の低コストで実現するには、十分な環境で治療を提供することは困難なことが多いです。なぜなら、安全で適切なインプラント治療を行うには、治療環境をきちんと整えて感染対策を行う必要があり1、それには一定のコストがどうしてもかかってしまうからです。

インプラント手術は、外科処置です。そのため、次のような環境でインプラント手術を行うことがとても重要です。

  • 器具の徹底した滅菌(クラスB滅菌器使用)
  • 単回使用(ディスポーザブル)医療機器の使用
  • 清潔な手術環境や機器
  • 専用のオペ室や清潔区域
  • 手術用の滅菌ガウンや滅菌手袋の使用

しかし、コストを抑えたインプラント治療では、このような十分な滅菌体制や手術環境が整っていない場合もあります。そうした環境で外科処置であるインプラント手術を受けてしまうと、感染リスクが非常に高まります。インプラントした部分に感染が起こると、インプラント周囲炎など次のような深刻な問題につながります。

  • 強い腫れや痛み、血や膿が出る
  • 噛めない、食事できない
  • インプラントがぐらついて抜け落ちる
  • 一度入れたインプラントを除去してやり直す再手術が必要

10万円以下のインプラントだと、適切な滅菌体制と環境が整った治療を受けられず、結果的にインプラントが長持ちしない感染リスクが高まる可能性があります。

人工歯(上部構造)の素材や仕上がりが十分でないから

インプラントのコストを抑えた格安治療では、外から見える歯の部分の被せ物=「上部構造」と呼ばれる人工歯部分が、仕上がりが不十分な場合があります。インプラントを10万円以下にするためには、オーダーメイドでその人に合わせて作る人工歯(上部構造)部分にかけるべき本来必要なコストを、なるべくカットしなければならないからです。

理想的なインプラント治療では、最終的な人工歯(上部構造)が入るまで次のステップがあります。

  1. まずは仮歯で様子を見る期間を設け、歯の形や噛み合わせ、歯肉との適合などを確認
  2. 必要に応じて適宜調整をして、最終的にどんな色や形の人工歯にすべきか決定
  3. 最終的な人工歯(上部構造)を、ジルコニアという高強度のセラミックで自然な見た目に仕上げて完成
  4. 最終的な人工歯(上部構造)で経過を確認し、必要な場合には適宜調整

インプラント治療を格安で行う場合、次の可能性があります。

  • 仮歯で様子を見たりせず、いきなり最終的な被せ物(人工歯)を入れる
  • 歯肉との適合が悪くお手入れしにくい形の人工歯を入れる
  • 噛み合わせの調整が不十分なまま治療終了にする
  • 材料がジルコニアではなく、見えない部分に金属を使い見えるところだけ白くした人工歯を使う

その結果、次のようなトラブルが生じやすくなってしまいます。

  • 人工歯が欠ける、壊れる
  • 人工歯部分の見た目が悪く思い切り笑えない
  • 噛みにくい、噛めない、食べられるものに制限が生じる
  • インプラントだけでなく周囲の歯にも負担がかかり他の歯に痛みなどが出る
  • インプラント周囲の歯肉に汚れが溜まって炎症が起き、血や膿が出る、臭いが出る

インプラントを格安で入れる場合、噛むのに使う人工歯(上部構造)部分の素材や仕上がりが不十分で、さまざまな問題が起きやすいという不安があります。

歯科医師や歯科技工士の技術が十分でないから

インプラント治療を10万円以下でできる場合、治療を担当する歯科医師や、インプラントの人工歯(上部構造)の製作を担当する歯科技工士の技術や経験が十分でない可能性があります。経験や実績のあるベテランの歯科医師や歯科技工士が担当するインプラントなら、その人的コストや時間的コストを考慮すると、格安で提供することが難しいからです。

インプラント治療では、次のような技術が求められます。

  • 正確な診査と診断
  • 高度な外科技術
  • 精密な人工歯(被せ物)の製作

費用を極端に抑えた治療では、経験や専門性が十分でない体制で行われる可能性もあります。治療提供側の技術の差は、治療直後には明らかでなくとも、数年後に差として現れることが多いのが特徴です。

格安のインプラント治療は、技術力が不十分だったり経験や専門性がなかったりする歯科医師や歯科技工士が行う可能性があり、最終的にトラブルを招きかねません。

メインテナンスや保証・アフターケア体制が整っていないから

インプラントは治療が完了したら終わりではなく、長く維持するためにメインテナンスが非常に重要な医療行為です1。コストを抑えた格安のインプラント治療では、メインテナンスや保証といったアフターケア体制が無い場合があります。

インプラントは治療完了後の定期的なメインテナンスで、次のような項目をチェックし、必要に応じた処置や対応をすることで長持ちさせられます。

  • 噛み合わせ
  • 筋肉や顎関節の状態
  • 歯磨きやお手入れができているか
  • 歯肉や骨など、インプラント周囲組織の状態
  • 他の歯にむし歯や歯周病などの問題が起きていないか

しかし、10万円以下に抑えた格安のインプラント治療だと、メインテナンス体制や何かあったときの保証制度がなく、インプラントが入ったら通院しなくて良いという場合があります。例えば次のようなケースが見られます。

  • 治療完了後の定期管理が行われず、インプラントに問題が生じる
  • 何かあったときの保証制度がない、または不十分で、結局費用がかさむ
  • トラブル時の受け入れ体制がなく、他院に行かざるを得なくなる

アフターケア体制が整っていない格安のインプラント治療を受けると、インプラントにトラブルが生じやすく、いざ何かが起きた時に対応してもらえず、結局再治療の費用が更にかかってしまうことがあります。

他院では修理や対応ができず結局治療のやり直しになるから

インプラント治療を受ける際、あまりに安価な場合には、他の歯科医院では修理や対応ができず、転居先や転院先で結局やり直しになることもあります。格安のインプラントの場合、安全性や長期実績の少ないメジャーではないメーカーのものである可能性があり、特定の医院でしか扱われていなかったり、部品の供給が不安定だったりするからです。

実は、低コストのインプラントのトラブルで多いのがこのケースです。このような場合、引越しなどで別の歯科医院に通うことになった際、そこではそのインプラントの修理や対応ができないことがあります。

すぐにトラブルが起きる可能性もある格安インプラントなので、転院先で次のような対応が必要になってしまうこともあります。

  • 一度入れた格安のインプラントを撤去
  • 再治療としてインプラントの入れ直し
  • 周囲の骨を再建する必要があり、骨造成手術の追加
  • 周囲の歯肉の形を整え直す必要があり、歯周形成術の追加
  • やり直し部位に適応できるインプラントが高額なものになる

このように、最初に安く済ませたつもりが、結果的に大きな経済的負担になることも少なくありません。

格安のインプラント治療を受けた歯科医院にずっと通い続けられて、その歯科医院でも修理の対応が可能なら、この限りではありません。

歯科医院を転院する可能性がある場合、他院では格安インプラントの修理や対応ができず、インプラントにトラブルが生じた際に結局再治療になってしまうので、コストが大幅にかかってしまいます。

広告では「10万円以下」でも、インプラント治療が高額になる5つの理由

広告で「インプラント治療が10万円以下でできる」と見かけて、実際にその歯科医院に行って見積もりをしたり治療を始めたりすると、広告の金額だけでは治療が完結せず、追加費用が必要になるケースも少なくありません。その原因として次のような代表的な理由を5つご紹介します。

  1. 治療したい部位で値段が変わるから
  2. 検査代や手術代、人工歯(上部構造)代、保証代などが含まれていないから
  3. 使用する素材で値段がかかるから
  4. 土台の骨を増やすなど追加治療が必要だから
  5. 治療完了後もメインテナンス代が別途かかるから

それぞれについて詳しく解説していきます。

治療したい部位で値段が変わるから

格安でできると思ったインプラントで追加費用が生じる理由として、自分がインプラントをしたい部位は広告表示の価格ではできないことがあります。「10万円以下」という低価格のインプラントが、限られた部位や条件でのみの価格である可能性があるからです。

インプラントの費用は、治療する部位によって変わることがあります。格安のインプラントの広告が、実は「上の奥歯の見えない部分限定」であったり「色や形を選べない条件付き」であったりと、非常に限定された条件での価格表示であるケースもあります。

しかし実際には、次のような部位では同じ方法や同じ価格でインプラント治療ができないことも多いです。

  • 前歯など見た目が重要な部位
  • 噛む力が強くかかる部位
  • 骨や歯肉の条件が難しい部位

インプラント治療は、その人の歯並びや噛み合わせといったお口の条件に合わせて、見た目や機能が問題ないように歯を補う“オーダーメイドの治療”です。インプラントを入れたい部位の状況はもちろん、他の歯や周囲の組織との調和を考慮しなければなりません。

広告表示通りの値段でインプラントをするために、本来は考慮すべき項目(歯の形・色・歯並び・噛み合わせ・歯肉との適合など)を無視しなければならなくなる可能性もあります。

広告で格安でできると見かけたインプラントでも、「自分が治療したい場所は、広告の条件に当てはまらなかった」というケースは決して珍しくなく、必要な場所にインプラント治療を受けるには追加費用が必要なこともよくあるのです。

検査代や手術代、人工歯(上部構造)代、保証代などが含まれていないから

インプラント治療を10万円以下でできると広告で見かけても、広告に書かれているその値段には、治療に必要なすべての費用を含んでいないことが多くあります。

別途必要になることが多い費用としては次のようなものが挙げられます。

  • CT検査やエックス線画像検査などの検査費用
  • 手術費用
  • 麻酔やお薬の費用
  • 仮歯の作製費
  • 噛み合わせや形の調整費
  • 人工歯(上部構造)の製作費
  • 保証費用(または保証期間が非常に短い場合もあり)
  • 治療完了後のメインテナンス費用

これらを合算すると、治療に必要な最終的な費用の総額が、広告の金額を大きく超えてしまうことがあります。

格安でできるインプラントの表示価格に、治療に必要な諸費用が全て含まれているかどうか注意が必要です。

使用する素材で値段がかかるから

インプラントが格安でできる場合、インプラントの被せ物部分である人工歯の素材が限られたものでしかできない可能性があります。そのため良い素材でできた人工歯にしようとすると追加費用がかかるケースがあります。

インプラントの人工歯(被せ物)には、ほとんどの歯科医院で白いセラミックが使われています。特にセラミックの中でも強度が高いジルコニアという素材が使われることが多いです。

インプラントの格安プランを提供している歯科医院では、次のようなコストを抑えた素材が使われることがあります。

  • 全てレジン(プラスチック系素材)でできた人工歯
  • 噛む面など大部分が金属で、外側の一部分だけレジンやセラミックで白くした人工歯

これらは短期的には問題なく使える場合もありますが、下記のようなデメリットがあり長期的にはあまりおすすめできません。

  • すり減りやすい
  • 変色や着色しやすい
  • 欠けたり割れたりしやすい

格安のインプラントのネジ(人工歯根)部分が問題なく使えても、被せ物(人工歯)部分にトラブルが起きると、再治療が必要になることもあります。

より自然な見た目や耐久性を求める場合は、素材を変更することになり追加費用が発生するなど、広告表示の格安の値段ではインプラントができないことになってしまいます。

土台の骨を増やすなど追加治療が必要だから

10万円以下などの格安でできるインプラント治療には、インプラントをするにあたって必要な場合に行われるべき手術が含まれないことが多いです。そのため、自分がインプラントをしたい部分に追加治療が必要となって費用が余計にかかることもあります。

インプラントは、十分な骨と健康な歯肉があって初めて安全に行えます。インプラントをする前の検査の結果、土台の骨の量が足りなかったり、歯肉の状態が不十分だったりすると、骨を増やす処置「骨造成手術」や歯肉の形を整える「歯周形成術」が必要です1

これらはインプラントの安全性と長期安定のために欠かせない処置であり、多くの場合、広告の金額には含まれていません。

自分がインプラントをしたい部分にこうした追加治療が必要な場合、広告表示の格安プランの値段ではインプラントができず追加で費用がかかってしまいます。

治療完了後もメインテナンス代が別途かかるから

広告で「10万円以下でインプラントができる」と見かけても、実際には治療完了後にメインテナンス代が別途かかるため、結局10万円を超える治療費がかかることになります。インプラントを入れたら、インプラントを良い状態で長く維持するため、その後のメインテナンスは絶対に必要だからです1

インプラント治療は、「入れたら終わり」ではありません。治療完了後も定期的に歯科医院を受診してメインテナンスを受け、次のようなことをやってもらう必要があります。

  • 定期的なクリーニング
  • 自身でのお手入れがきちんとできているかのチェック
  • インプラントに問題が起きていないかの確認
  • 噛み合わせのチェック
  • インプラント周囲の歯肉や骨の状態確認
  • そのほか口腔内で何か問題が起きていないかの確認

インプラント部分はもちろん口腔内全体をしっかりチェックしてもらい、必要に応じて調整や清掃を行なってもらうことで、インプラントを長持ちさせることができます。

しかし、これらのメインテナンス費用が、治療費とは別にかかる歯科医院がほとんどです。

インプラント治療完了後の定期管理を怠ると、インプラント周囲炎などのトラブルにつながってしまい、インプラントを長く使うことができません。

メインテナンス費用は、インプラント治療代とは別途かかってしまいますが、インプラントを長く使うための必要なコストと考えることが大切です。

インプラント治療は1本30万〜80万円くらい!相場の内訳は大きく分けて3つ

インプラント1本の治療費の相場は、おおよそ30〜80万円程度と考えられます。インプラント治療は、検査から手術、被せ物の製作まで、いくつもの工程を経て行われる治療です。そのため、1本あたりの治療費は内容によって幅がありますが、大きく分けて次の3つから成り立っています。

  • 検査費用:約1.5万〜5万円
  • 手術費用:約15万〜50万円
  • 補綴費用(上部構造):約10万〜25万円

検査費用は相談で来院し事前検査を行なった時に支払うことがほとんどです。それ以降の手術費用や補綴費用に関しては、インプラント治療を契約して手術を受ける前にまとめて支払うこともあれば、段階ごとに都度支払うこともあります。

それぞれの費用に関してさらに詳しく解説します。

検査費用:約1.5万〜5万円

安全なインプラント治療のためには、次のような項目を事前に検査することが欠かせません。

  • 全身状態の聞き取りや検査(問診、かかりつけ医への対診、血液検査など)
  • 持病(全身疾患)があるか、飲んでいる薬は何か
  • 全身状態に関する他院での検査結果について(特に高血圧や糖尿病など)
  • 喫煙、食生活、歯ぎしりや食いしばりなどの習慣について
  • エックス線診査(デンタルエックス線写真、パノラマエックス線写真)
  • 歯科用コーンビームCT画像による検査、3D診断
  • 残存歯の状況の診査(むし歯、歯周病、詰め物や被せ物の状況)
  • 歯茎の状態の検査(歯周組織検査)
  • 噛み合わせの検査(咬合診査、咬合平面、顎位の診査)
  • 清掃状況の確認(プラーク指数、プラークコントロールレコードなど)
  • 埋まっている親知らずや過剰歯がないか
  • 顎関節や周囲の筋肉に異常がないか
  • インプラントをしたい部分の歯肉の状態、歯肉の厚さや幅はどれくらいか
  • インプラントをしたい部分の周囲や向かい合う歯との位置関係はどうか
  • インプラントをしたい部分の近くに神経や太い血管がないか
  • 上顎でインプラントをしたい場合、副鼻腔(上顎洞)との位置関係はどうか
  • インプラントをしたい部分の骨の質や量、形、厚みや高さはどうなっているか
  • インプラントをしたい部分の顎骨が不足していて骨を足す手術(骨造成)が必要か
  • 笑った時に歯がどれくらい見えるか
  • 今の噛み合わせや歯の見え方が顔に調和しているか

これらの検査や診査をしっかり精密に行うことで、インプラント治療の安全性と成功率が上がります。

手術費用:約15万〜50万円

インプラントの手術費用には、次のような項目が含まれます。

  • インプラント体(スクリュー)の費用
  • 手術そのものの費用
  • 手術中の麻酔代
  • 麻酔中の生体安全管理代
  • 手術後の処方薬剤代(痛み止め、抗生物質、うがい薬など)
  • 手術器具や衛生管理にかかる費用
  • 必要な場合、骨を増やす骨造成手術代
  • 必要な場合、歯肉を整える歯周形成手術代

使用する器材や材料、歯科医院によって値段の幅があります。

補綴費用(上部構造):約10万〜25万円

補綴費用とは、インプラントの上に装着する人工歯(被せ物)の費用です。人工歯(被せ物)は、歯科技工士によってオーダーメイドで製作されます。次のような要素で費用が変わります。

  • 見た目の自然さ
  • 噛み合わせの精度
  • 素材の耐久性
  • 担当歯科技工士の技術

前歯など見た目が重要な部位や、長期間の使用を考えた高品質な素材を選ぶ場合は、この補綴費用が高くなる傾向があります。

安さで選ばない!インプラント治療で重要視すべき選び方のポイント5つ

「インプラントが格安だから」という理由だけで、インプラント治療を受ける歯科医院を選ぶのは危険です。インプラントは長く口の中で使う医療機器であり、インプラント治療は高度な知識と技術が必要な医療行為なので、値段だけでなくさまざまなポイントを考慮する必要があるからです。

具体的には次の5つのポイントを重要視するべきです。

  • 歯科医師のインプラント治療の技術と経験は確かか
  • 歯科医院の設備機器や治療環境が万全か
  • 歯科衛生士や歯科技工士などチーム医療体制が整っているか
  • 治療後のメインテナンス・アフターケア体制が整っているか
  • 信頼できるメーカーのプレミアムインプラントか

それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。

歯科医師のインプラント治療の技術と経験は確かか

インプラント治療を担当する歯科医師が、インプラント治療の技術や経験がきちんとあるかどうかは重要です。なぜなら、歯科医師の資格を持っていればインプラント治療はできますが、その歯科医師がインプラント治療の知識や技術、治療の実績があるかによって、インプラント治療の成功率は左右されるからです。

インプラント治療を得意とする経験豊富な歯科医師かどうかは、具体的に次のような点を確認することがおすすめです。

  • 歯科医師のインプラントに関する資格の有無
  • インプラント治療の経験年数と埋入本数
  • 難症例の実績(インプラントをする部位の骨や歯肉の手術も併せて行えるか)
  • 歯科医師向けにセミナーや講義を行なっているか
  • インプラントに関する論文や専門書を執筆して発表しているか
  • 学会で発表したり受賞したりしているか

上記の全てを満たさなければならないわけではありませんが、少しでも多く満たしているとより安心できる可能性が高まります。また、インプラント治療を担当する歯科医師が常勤でその歯科医院にいるかどうかも重要です。インプラントに何か問題が生じたり相談したいとき、担当歯科医師がいない日が多いと、スムーズに解決しません。

インプラント治療を専門とする実績豊富なベテランの歯科医師だと、格安でインプラント治療を受けることは難しいことがほとんどです。そのため、値段だけで選ぶと、インプラントが長持ちする良い治療を受けられるかどうかが心配です。

インプラント治療を受ける歯科医院を値段だけで決めずに、治療を担当する歯科医師のインプラント治療の技術と経験が確かかどうかチェックしましょう。

歯科医院の設備機器や治療環境が万全か

インプラント治療を受ける歯科医院の設備機器や治療環境が十分に整っているかも重要です。インプラントは高度な先端治療であり外科手術を伴うため、事前検査から手術時はもちろん、全ての治療期間を通して設備環境がインプラント治療の成功の鍵を握っています。

具体的には、次のようなポイントを確認しておくと良いでしょう。

  • エックス線撮影装置だけでなく歯科用コーンビームCT(3D画像装置)があるか
  • 口腔内スキャナー(デジタル印象)やシミュレーションソフトなどのデジタル機器があるか
  • 外科手術を行うための手術室があるか
  • 滅菌対策が徹底されているか(クラスB滅菌器、口腔外バキューム、滅菌パック・単回使用器具)
  • 手術時に生体管理モニター装置を使って血圧や脈拍などを管理しているか
  • 手術時の静脈内鎮静(IVS)対応設備があるか
  • 歯科医院内に歯科技工所があるか
  • 歯科専用ルーペや歯科用実体顕微鏡があるか

もちろんこれらの全てが揃っていないといけないわけではありませんが、良質な長持ちするインプラント治療を受けるためにはなるべく多く揃っていることが望ましいです。

歯科衛生士や歯科技工士などチーム医療体制が整っているか

インプラント治療では、治療を主に担当する歯科医師だけでなく、歯科衛生士や歯科技工士などの多職種でのチームアプローチが重要です1。そのため、良いインプラント治療を受けるには、その歯科医院の治療体制としてチーム医療が行われているかも確認しておきましょう。

例えば、次のようなスタッフが揃っている歯科医院でのインプラント治療が望ましいです。

  • 歯科医師:インプラント治療の診査、診断、手術、咬合管理などを行う
  • 歯科衛生士:インプラント治療中や治療完了後のメインテナンスで歯磨き指導やクリーニングを行う
  • 歯科技工士:インプラントの被せ物(人工歯)の設計と製作を行う
  • 麻酔科医:インプラント手術中の鎮静や麻酔を担当し安全に手術が行われるよう管理する
  • 物品整備や滅菌担当チーム:治療や手術に必要な機器の準備管理や滅菌を行う

インプラント治療の成功は、歯科医師1人だけでは決まりません。インプラント治療ではさまざまなリスクが伴いますが、このようなチーム体制がある歯科医院ほど高いリスク管理能力があり、インプラントの成功につながるといえます。

インプラントの安さだけで選ぶのではなく、インプラント治療のリスクをきちんと管理して治療を成功につなげてくれる歯科医院を選ぶことがおすすめです。

(参考記事リンク「インプラントのリスクとは?最小限に抑える対策とともに歯科医師が解説」)

治療後のメインテナンス・アフターケア体制が整っているか

インプラント治療が完了した後のメインテナンスや保証制度など、アフターケア体制が整っているかも重要です。インプラントの成功は、治療計画の精度と治療後のメインテナンスの質で大きく左右されるからです。

日本口腔インプラント学会をはじめ、国際的なガイドライン(ITI、EFPなど)でも、“治療前の精密診断に基づく科学的な治療計画”と“治療後の継続的なプロケア(メインテナンス)”が揃うことで、インプラントの成功率が飛躍的に高まることが強調されています1,2,3

そのため、インプラント治療を受ける歯科医院を選ぶ上では、次のようなアフターケア体制が整っているか確認しておきましょう。

  • 保証期間や内容(脱落・破損時の対応)が明記されているか
  • 治療後の定期検診やメインテナンスの対応をしているか、その費用はいくらか
  • 自分にとってアクセスや診療時間が通いやすいか
  • 長期的なメンテナンス(10年以上)を考えたときに安心できるか

治療完了後のメインテナンスは、インプラントを良好な状態で長く保たせるため、徹底したセルフケアと合わせて非常に重要です。インプラントの長期的なトラブルの多くは、インプラントの周囲の炎症であり、その最大の予防策は定期メインテナンスだからです。定期メインテナンスでは、次のようなインプラントのチェックと清掃を行います。

  • インプラント周囲の炎症検査(プロービング)
  • 噛み合わせのチェック
  • 患者さんの清掃状態のチェックと指導
  • 専門器具によるバイオフィルム除去
  • エックス線検査による骨の状態の確認
  • 他の歯にむし歯や歯周病などの問題が起きていないかのチェック

これらは患者さん自身では絶対にできないため、歯科医院と患者さんとのチームプレーが大切です。

また、もしも全身の状態や飲んでいるお薬に変化があった時は、必ず申告しましょう。インプラント治療が完了した後も、引き続き全身状態を考慮してインプラントが長持ちするように維持していくことが必要です。

インプラント治療完了後もこのように定期的なメインテナンスを行うことで、インプラント治療の成功につながります。格安のインプラント治療を選んだ場合、このようなアフターケア体制が充実していない可能性もあるため注意してください。

信頼できるメーカーのプレミアムインプラントか

インプラント治療を受ける歯科医院選びでは、使用しているインプラントのメーカーが信頼できるメーカーのものかどうか確認するのが推奨されます。インプラント治療を受けるうえで安さだけで決めてしまうと、そのインプラントは安全性や長期実績の少ないメーカーのものが使われているかもしれないためです。その場合、インプラント治療の失敗やトラブルにつながる可能性があります。

世界的にも信頼できる大手メーカーとして代表的なのが、三大インプラントメーカーと言われるストローマン社、ノーベルバイオケア社、デンツプライシロナ社です。こうした大手メーカーの高品質なインプラントを使うことは、インプラントの長持ちと患者の満足度につながります。

また、各パーツの互換性が確保されているか、万が一他院でメインテナンスが必要になっても対応可能かどうかも治療前に確認しておくと良いでしょう。

インプラントを価格の安さで決めるとトラブルや後悔につながりやすいので、安さだけで決めようとするのは避けたほうが良いです。長持ちする良いインプラント治療を受けるには、使用しているインプラントのメ―カーもチェックして、歯科医院を選ぶことがおすすめです。

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まとめ:10万円以下のインプラント治療は安いが危険

広告で「10万円以下」など格安でできるインプラントを見かけても、実際には結局高くつく可能性が高いです。その理由としては、本記事で解説したように大きく次の2パターンがあります。

  1. 本当に10万円以下なら質の悪いインプラントの可能性が高く、さまざまなトラブルの原因になり、その解決に費用がかかるから
  2. 10万円以下と謳っていても実際には別途諸費用でもっとかかる場合も多いから

インプラントの1本あたりの適正な相場価格としては約30万〜80万円です。適正な価格で適切な治療をしてくれる歯科医院を選ぶうえで、次の5つのポイントを重要視しましょう。

  • 歯科医師のインプラント治療の技術と経験は確かか(ガイドラインに沿った治療含む)
  • 歯科医院の設備機器や治療環境が万全か
  • 歯科衛生士や歯科技工士などチーム医療体制が整っているか
  • 治療後のメインテナンス・アフターケア体制が整っているか
  • 信頼できるメーカーのプレミアムインプラントか

インプラント治療で後悔しないために、料金だけでなく技術や実績などさまざまな観点で検討してみてください。

<引用文献>
1. 日本口腔インプラント学会. “口腔インプラント治療指針 2024.” (2024)
​​2. Proceedings of the Seventh ITI Consensus Conference. Clinical Oral Implants Research, vol. 34, suppl. 26, Wiley (2023) https://onlinelibrary.wiley.com/toc/16000501/2023/34/S26
3. Herrera, David, et al. “Prevention and treatment of peri‐implant diseases—The EFP S3 level clinical practice guideline.” Journal of Clinical Periodontology 50 (2023): 4-76.

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